第18話
風呂は、神なり。数々の風呂の湯が、俺の体に染み渡った。
正直に言おう。風呂は、満点!元の世界にも負けないすばらしさ。露天風呂もあり、景色もよい。龍の口を模したオブジェからの打たせ湯まである。最高じゃないか。
これ、俺が宣伝する意味あるか?まあ、宿泊代を無料にしてくれるんだから、宣伝しますよ。それにしても、癒された。
・・・欲を言えば、サウナが欲しい。そんでもって水風呂。
「やあ、マサツカ君。お風呂はどうだった?いい湯だったでしょう!」
ロビーでゆったりしていたら、メリッサが現れた。今俺が座っているソファー、これはあれだ、人をダメにするやつだ。
「おー、申し分無い。くるしゅうない。」
「あれ、マサツカ君、バカになった?」
誰がバカだ誰が!?ん、俺か?
「ムフフ。その様子だと、たっぷり堪能したようだね。」
「ああ、本当に素晴らしかった。あれだけ素晴らしいのに、宣伝なんか必要なのかという位素晴らしかった。」
「でしょー!ほんと、あとは集客だけ。この街、ライバルが多いからね。あ、そうだ、明日の情報屋のこと、説明しておくね。」
「ああ、頼む。」
「明日行く人情報屋さんはね、私の知り合いなんだけど、少しクセがあるから、礼儀正しくお願いね。マサツカ君だったら大丈夫だと思うけど、念の為。お金はそんなにとらないと思うけど、マサツカ君、いくら程もってるかな?私の紹介でも関係無く代金がとる人だから、お金は用意しておいてほしいな。」
「金は大丈夫だ。で、いくらかかるんだ?」
「マサツカ君が何を知りたいかによるよ。だけど、ぼったくることは無いと思う。あ、情報屋の人が知らなかったら代金は発生しないから、ご心配なく。」
なるほど。金はまだ大丈夫だろう。久中さんのことをまず知りたい、それから、元の世界戻る方法・・・はまずいな。いきさつを全部説明しなければならない。なんとなくだが、リスクがあるな。まず、久中さんのことだな。
「ああ、ありがとうメリッサ。世話になる。」
「いえいえ、命の恩人ですから、これくらいはね。それじゃ、私は家に帰るから、明日、朝9時に店の前でよろしく!ゆっくり休んでよー!」
そういって、メリッサは帰っていった。慌ただしいが、頼りになるな。感謝する。
それから俺は、宿の中をひととおり見て回ったが、部屋、設備共に豪華、とまではいかないが、派手さを抑え、堅実な印象がある宿だった。豪華なのは、風呂と玄関ロビーだな。
そして値段だが、食事別で銀貨8枚、食事込みなら金貨1枚だそうだ。この内容だと相場より少し安い位のようで、このマケニアだと、同じ内容であれば金貨1枚、食事込みだと金貨1枚に銀貨3枚位が相場だそうだ。値段を抑えているようで何より。
ちなみに、風呂に入るには宿泊する必要があるそうだが、入浴だけOKにすればいいんでないの?加えて、サウナを、水風呂を。サウナ、水風呂、休憩。これは外せない。元の世界の、中学生の修学旅行の宿にあったそれは、常識を変える。それをここの経営者のおじさんに伝えたところ、
「サウナというのは、蒸し風呂のようなイメージかな?なるほど。そんな発想が・・・。にしても、水風呂なんて初めてだ。確かに、差別化できそうだ。あと、マケニアの慣習とは違うが、宿なのに風呂だけ利用可能にする、か。他の、風呂専門の銭湯屋と競合しなければいけるか、後は値段設定を・・・」
とかなんとか言ってた。この業界も、色々しがらみがあるのかね。まあ、一晩の宿の礼に宣伝しとくから。
おはようございます。朝ですよ!
いやー、久しぶりによく眠れた。思い返すは辛く苦しい修行の日々、暗くジメジメした迷宮探索の日々。その苦難を経ての、この目覚めは最高だな!
さぁ。チェックアウトを済ませて、いざいざ情報屋へ。ただいま時刻は8時50分、待ち合わせ場所へ。できる男は集合時間10分前には現地へ。
「お!時間よりも早く来たね!できる男は違うね!おはよう!」
俺よりも早いじゃねぇか。負けた気分だ。
「メリッサ、おはよう。今日はよろしく頼む。」
「オッケーオッケー、任せなさい!ついて来てよ!」
そういうメリッサの後をついて行く。流石は地元民といったところか。大通りからスイスイと狭い路地へ。これは知らないと辿りつけないな。
10分程歩いただろうか。日光がわずかしか差し込まない薄暗い通路の奥に、ひっそりと佇む扉に辿り着いた。いかにも、知る人ぞ知る隠れ家スポットのようだ。
「お疲れ様、ここだよ!」
「ああ、ありがとう。これぞ、という感じだな。」
「まあ、雰囲気はあるよね。ささ、遠慮なくどうぞ~。」
ギギィ・・・
古びた扉を開けた先は、暗めの橙色の照明が灯された部屋があった。上品な応接室といった趣の、意外にも整理整頓されたシンプルな部屋だった。悪の組織の隠れ家や怪しい占い師のおどろおどろしい部屋を想定していたが、なんか拍子抜けした。
「あら、あなたがメリッサからのお客さんかい?」
その部屋の中央に位置するソファーには、パッと見はどこにでもいそうな普通の恰好をした女性が、座っていた。ただし、その眼光は人を射殺さんばかりであり、目つきの鋭すぎるレディであった。どう見ても歓迎モードじゃないよな、これ。おお、怖い怖い、そう睨まんでくださいな。マジで。




