第16話
メリッサに連れてきてもらったのは、いかにも肉!という感じの店だった。なんせ、看板がステーキを模している。ステーキやらハンバーグやらが外のメニュー表に書いてある。
「ふふん!お肉、好きでしょ!ここはマケニアでも有名な肉料理のお店なのだ!お肉以外にも、野菜やパンも勿論あるから、バランスよくしっかり食べよう!」
おお!これは期待できる!ところで、唐揚げはあったりするのかな?
「唐揚げ?」
「いや、何でもない。」
ガランガラン
店に入る。西部劇にでてきそうな店だ。店内は明るくなっており、夕日が差し込んでいる。雰囲気もいいし、肉の焼けるいい匂いがする。
「あら、メリッサじゃない。無事に帰ってきたのね。食べてくの?」
出迎えたのは、美人でおしとやかそうな女性だった。
「もっちろん!」
「丁度よかった、もうすぐ満席になりそうだったから。空いてる席に座ってちょうだい。あら、こちらの方は?」
「紹介するよ!命の恩人のマサツカ君!」
命の恩人?大袈裟な。
「命の恩人って、メリッサ!何があったの!?ああ、マサツカさんというのですね。この度は、娘が大変お世話になりました。本当にありがとうございます。」
娘だと!?
「えっと、娘さん、ですか?」
「はい!お転婆な娘で、じっとしてなくて。もう17歳、自由にするのは構わないのですが、親としては内心ヒヤヒヤしてるんです。」
だろうな。17歳で行商としてあちこち飛び回って、そのうえ盗賊に襲われてたんじゃ、親としてもヒヤヒヤもんだろう。
「その目。マサツカ君、何を考えているのかな?」
「親御さんをあまり心配させるなよ。」
「むー。わかってるよ。でも仕方ないじゃない。安全な道を通ってたら、盗賊なんかでるんだもん。ウチのせいじゃないもん。」
「と、盗賊!?あんた、どこに行ってたの!?」
「王都のフィネアだよ。そこに行く道は安全って言われてるし、別に寄り道なんてしてない、自分から危ないところには行ってないよ。で、盗賊から助けてくれたのが、マサツカ君というわけ。めっちゃ強いんだから。」
「そうなの。でも、盗賊なんて怖いわ。無事でよかったわ。マサツカさん、娘を助けてくださって、本当にありがとうございました。」
「いえ、人として当然のことをしたまでです。」
「なんと謙虚な方で。せめて今日は、こちらでゆっくりご飯を食べて行ってください。お代は勿論いりません。お好きなメニューをおっしゃってください。」
「いえ、流石にそれは。言葉だけでもう充分です。」
「マサツカ君、ご馳走になってよ。親切を受けてくれると、親切をした方も気分がいいんだから。それに、お礼をしたいのは本当。助けてくれて、ありがとう。」
ああ、そういうもんか。それでメリッサは、ここに連れてきてくれたのか。
「是非、お召し上がりくださいな。私どもが言うのもなんですが、このお店、この辺では結構有名でして。味は保証します。」
「わかりました。それでは、ここは甘えさせてもらいます。ありがとうございます。」
そのやりとりの後、俺達は席に着いた。なるほど、ステーキとハンバーグがメインメニューで、パンや蒸し野菜がある。両方食べたいが、ご馳走してくれるから遠慮しておいた方がいいか。
「マサツカ君、遠慮はいらないよ!じゃんじゃん食べるんだ!」
「お、おう。じゃあ遠慮無く。俺はステーキもハンバーグも食べたいから、他よりも高めだが、ステーキとハンバーグのハーフセットでいいか。」
「おお!いいね!ステーキとハンバーグの両方食べられるから、この店の人気メニューなんだよ!勿論、パン、野菜、スープがついて来るよ。で、それだけでいいの?」
「充分だろ。どれだけ食うんだ?」
「男の人だと、ちょっと少ないかもしれないよ。あ、でも、少なかったらお代わりしてね!ウチは特盛ハンバーグセット!グフフフフ、めっちゃ食べるのだ!注文しとくね。」
メリッサが注文してくれた。しかしまあ、こういうの、いいねぇ。こういう日常的で平和な会話がいいんだ。あのクソ師匠といた時や迷宮にいた時とは比べものにならんな。うむ、良き良き。
「ね、マサツカ君は、これからどこに行くか予定あるの?」
「前に言った行方不明の人、その人の情報を探したい。この街には色んな人が来るみたいだから、傭兵ギルドや商人達に訊いてまわろうかと思っている。情報を集めたら、フィネア、はもう後回しでいいか。サナカという街に行こうかと思っている。」
「サナカと言えば、ジーン国の食の街だね!美味しい物がたくさん!その街も、美味しい料理を求めて色んな人が来るから、情報集めにはちょうどいいかも。私も、一度は行ってみたいのだ。」
「行ったことはないのか?」
「馬車でも2週間位かかるから、まだ駆け出しのウチではなんともできなくて。乗り合い馬車で客として行ってもいいんだけど、そこそこ値段が高いし、その間は商売できなくなるんよ。ウチが所属している商会、基本は自由で休みもとれるけど、休んだ分は収入がなくなっちゃうから、生活が厳しくなるんよ。だから、いつか大金持ちになったら、サナカで豪遊グルメ旅をするのだ!」
馬車で2週間もかかるのか。なら、サナカへの準備は入念にしておかないとな。この世界、車やバイクは無いから、地上の移動手段は徒歩か馬車しかない。地上なら・・・いや待てよ。魔術で空を飛んで行くのはどうだ?単純に空を飛ぶ魔術、それなら修行で使えるようになった。それに、重力を操る重力魔術で重力を打ち消す方法はどうだ?一度行った場所なら、空間魔術で繋げられないか?いや、まだ行ったことがないからイメージが無い。ゲートとゲートで繋いでワープとか・・・新しい空間魔術、何かできないか・・・
「お待たせしました。ハーフセットと特盛ハンバーグセットです。マサツカさん、足りなければお代わりしてくださいね。」
ありがとうございます。運ばれてきたのは、お、おおう!ハーフセットと言いながら、かなりボリューミーじゃないか!ステーキもハンバーグも、それぞれ200グラム以上はありそうだ。これにパン、野菜、スープもついている。本気でこれで充分だぞ。それに、メリッサの特盛ハンバーグセット、かなりでかいぞ!400グラムはあるんじゃないか。
「どう、マサツカ君。美味しそうでしょ。でも、ちょっと少な目じゃないかな?」
「何を言ってるんだ。これでも充分すぎる位多いぞ。食べきれるかどうかわからん。ああ、失礼。勿論全部食べさせてもらう。」
「またまた。遠慮してるんじゃないの?本当おもしろいね。マサツカ君は、どこの出身なの?これ位、傭兵の男の人ならペロリだよ。」
まあ、食える人は食うだろうよ。俺は少食だからな。どこの出身ときかれれば、うん、敢えて答えはしない。
「そうか。まあ、俺は遠慮なんかしていない。ありがとうよ。味わって食べさせてもらう。メリッサは、その量食べきれるのか?」
「働く乙女はよく食べるのだよ。ウチ、ハンバーグ大好きだし、これ位ならペロリなのさ。」
乙女、ねぇ。
「その目。今さ、乙女ねぇ、とか思ってない?」
「そんなことは無いさ。食おうぜ。いただきます。」
「いっただっきまーす!」
いただきます、ごちそう様の挨拶は、この世界でも共通しているようだ。
さて、味だが、これがとても美味い。ステーキもハンバーグも、旨味が凝縮されていて、肉汁もハンパ無い。それぞれのソースも美味く調和されており、美味さ倍増だ。脇を固めるパン、野菜、スープも主役級の美味さを秘めている。なるほど、有名になるわけだ。
メリッサとの会話を楽しみつつ、食べ終えた。腹9分目位はいったのではないだろうか。少し苦しいくらいだが、満腹感が心地よい。
「ご馳走様でした。」
「ごっちそーさーまでした!」
いただきますも、ご馳走様も、えらく全力なことで。うむ、それも良き良き。




