第14話
「ふーーー!癒される!」
「あ!ずるい!ウチも!」
「存分に堪能するが良い!青い空に白い雲、緑の草原に明るい太陽!これ以上ない昼寝日和ではないか!」
「サイコーだね!」
「うむうむ!」
思えば、1か月と聞いていたが、かなり長い間地下迷宮にいた気がする。こうしてゆったりするのは久しぶりだ。こうして俺達は草原昼寝を満喫した。元の世界に帰っても、これをやってみたいものだ!
「さあ、出発しよう!」
「よろしく頼むよメリッサ君。」
「任せたまえマサツカ君。」
昼寝を存分に堪能したら、メリッサの御者で進む。メリッサはあのとおり能天気であるが、御者の腕はいいのか、道中馬車の揺れは少なく快適だった。
メリッサはマケニア育ちで、商会に所属しながら行商の修行中のようだ。行商になったのも、色んな所に行けるから、というもの。
「将来は世界を回る凄腕の行商になるんだ。自分の手腕1つで成り上がるのさ!」
「傭兵にはならないのか?」
「やー、ウチは戦いは苦手、武術も魔術も向いて無くて。本当は今回みたいな時の為に、少しはできたらいいんだけどね。早く優秀な護衛を雇えるようにならないと。」
ほー。このメリッサ、アホなようでいて意外とそうじゃないな。自分をある程度客観的に見て、自分に足りない点も理解しているようだ。
「ねーねーマサツカ君、今何か失礼なこと思ってない?」
「失礼?なんのことだ?」
「べっつにー?」
・・・意外と勘も鋭いようだ。
「マサツカ君は、傭兵なの?」
「ああ、駆け出しで一番下のFランクだがな。」
「そうなの?さっき助けてくれたってことは、あの恐い人達に勝ったんでしょ。めっちゃ強いんだよね?」
あのクソ師匠も、俺のことを強いと言っていたな。んー、多分大したことはない。上には上がいるもんだ。そういえば、昇格試験は棄権扱いにでもなってんのかな?どっちにしても、稼げるならランクは関係ないな。
「俺より強い人なんて、まだまだたくさんいる。せいぜい平均だな。」
特に、あのネイアさんにはまだまだ及ばんな。
「まったまたー!マサツカ君、あなたは強くて、それ以上にとても優しくていい人だね。」
「ふん、それを言うなら、メリッサも大したもんだ。何者かもわからん初対面の俺を護衛なんぞにしてさ。実は俺が盗賊だったらどうするんだ?今この瞬間に殺されるかもしれないぜ?」
「それは無いね!さっきも言ったけど、優しくていい人だから大丈夫!これでも色んな人と会っているから、なんとなくだけど、その人がいい人か嫌な人かはわかるの。」
優しい、か。優しさってのは、なんだろうな?誰かに優しくしようと思ったことなんてないがね。久中さんに対してだって、優しさではなく、俺の下心でしかない。ふん、となるとメリッサ、あんたこそいい人じゃないか。
「フッフッフ、優しさなんて、意識するものじゃないんだよ。ところで、好きな人でもいるのかい?」
「ほう、どうしてそう思う?」
「顔に書いてあるよー。今その人のこと考えてたでしょ。ここにこんなに美人な私がいるのにさ。ぷぷぷ。」
何?思考読んでんの?
「メリッサが美人?まぁ、否定はしない。そうだな、片思いだが、いるにはいる。」
「ちょ、否定しといてよ!照れるよもー!で、その片思いの人はどんな人?」
「明るくて、それでいて落ち着く人だな。居心地は最高だな。」
「キャー!その人は今どこにいるの?まさか、フィネアにいるの?ごめんね。悪いことしちゃったかな?」
「いや、行方不明だ。その人を探す為に旅をしている。」
そう、久中さんが連れ去られて、俺がこの世界に来て、どれくらいが経った?迷宮にいたのが1か月位だから、修行期間は全部で半年弱位か。随分この世界に長居しているな。早く探し出して、元の世界に帰らないと。帰る方法もまだわからないし、正直焦る。
「そうだったんだね。ごめんなさい、訊きすぎたね。」
「別に謝ることじゃないだろう。人それぞれ生き方も違うんだからよ。そういうメリッサ、あんたはどうなんだ?」
「私は、そうだね。気になる人なら、目の前にいるよ。」
ほう。
「目の前とは?すまんが俺は馬鹿でな。景色ばかりでメリッサ以外の人が見えない。俺以外だったら、その誰かが見えるのかもしれんな。」
「ぶー!マサツカがいじめる。」
からかいよったな。フッフッフ、その手にゃのらんよ。
「あー、でも残念。商売で成り上がろうと思ってたからあんまり真剣じゃなかったけど、そろそろ本当に結婚とかも考えないと。助けてくれたし、マサツカ君とはうまくやっていけるかも、と思ったんだけどな。先客がいましたか。無念なり。」
「冗談は程々にしろ。それに、まだ17歳だろ。」
「もう17歳だよ。ウチの周りにもその年で結婚して子供がいる人もいるし。20歳過ぎまでに結婚できなかったら、他の種族はともかく、人間族は行き遅れだよ。」
この世界の結婚適齢期は早いな。にしても、人間族、か。
「他の種族は、具体的にはどんな種族がいるんだ?」
「え!知らないかな?マサツカ君、今までどんな生活してきたの?まるで別の世界から来たみたいだね。」
その通りだよ。種族についてはネイアさんからも詳しく訊いていない。フィネアで色んな人を見た位だ。
「まあ、気にしないで。フフン、ウチが教えてしんぜよう。」
メリッサによると、俺達のような人間族の他に、エルフ、ドワーフ、獣人族、鬼人族、魚人族、魔人族、巨人族、吸血鬼、ゴブリンやラミアにアラクネ等その他の人型種族、竜人族等がいるようだ。妖精は、いるかもしれないが目撃例が少なくあやふやなようだ。
多種多様なのは獣人族で、狼人、コボルト、ケットシー、オーク、ハーピー等、俺がいた世界の動物が擬人化したような種族がいるようだ。
彼らの寿命は、エルフ、ドワーフ、竜人族は200年ほどであり、その他の種族は人間族より少し長い位だ。
俺がいた世界では、エルフは長命種族で、1,000年位生きると思っていたが、そうでもないようだ。意外だったのは、ゴブリンやオーク、魔人等が魔物ではなく種族として確立されていることだ。そういえば、ギルドの魔物の討伐依頼といってもスライムの討伐依頼がほとんどで、後はアンデッドの討伐依頼がちらほらあった位だな。普通の動物も勿論いるから、熊や虎がいる山道の護衛依頼もあった。
ゴブリンは主に農業を生業としており、色んな街に野菜や果物を出荷しているのだとか。オークは普通に街中でもみかける。魔人族は、昔は各種族と敵対していたこともあったようだが、今はそんなことはない。エルフと同じく魔術が得意であり、研究等知識への探求に優れているようで、魔人族が設立した学校もある。ちなみにメリッサは、その学校の、商売を勉強するコースの卒業生だ。
「卒業って言っても、1年だけの詰め込みコースだからね。研究とかしていないし、早く卒業して実践したかったから、実はそんなに真面目に勉強していないの。」
「それでも大したものじゃないか。入学するのも大変だったんだろ?」
「魔人族が作った学校は、身分関係なく入学試験の成績で決まるからね。だから貴族でもないウチでも挑戦できたの。でも、大抵の人は魔術科や武術科に行くから、商業科の、それも1年コースを受ける人は少ないの。だから倍率が低くて楽勝だったのです。はい。」
なんとまぁ。それでも、卒業できたのだから大したものだ。あれ、元の世界じゃ夏休みなんてとうに終わってるんじゃ?俺、高校卒業できんの?
「さ、残念だけど楽しい時間はそろそろ終わりだね。もうすぐマケニアだよ。」
メリッサが指さした方向をみると、いくつかの門があり、積み荷の検査等を受けているようだ。
クソ師匠の修行を終えて、メリッサと会って、マケニアへ到着。もう夕方だな。今日はゆっくり休もう。明日からは・・・そうだな、情報集めと行こうか。




