第13話
大鎌、夜営のセット、着替え、食料、その他旅に必要な物を全てマジックバッグに入れ、マントを着けて、と。これで準備はできたかな。
「ほらよ。これも持っていけ。」
奴が投げてよこしたのは、俺が使っていたギルドのランクカードと、地図、それに金が入った袋だった。ランクカード、燃えずに残っていたんだな。
「師匠、ありがとうございます。ですが、これからは自分で何とかできます。なので、この金は大丈夫です。気持ちだけ受け取っておきます。」
「何いっぱしの口叩いてんだ。あって困るもんじゃねえんだ。もらっとけ。こっちは成り行きとはいえ、お前を使って人体実験まがいのことをしたんだ。とっとけ。」
まがい、ではなく人体実験そのものだろうよ。少しは罪悪感を感じているようだ。だが、まぁ、それがなければ確実に俺は死んでいたわけだ。俺の体のことは、仕方ないだろう。
「なら、ありがたくもらっておきます。」
「おう。それでいい。それと、お前の傭兵ランクはFだったみたいだが、今はAランク位の実力はあるはずだ。」
「そんなにありますかね。」
「間違いない。自分のことは案外わかんねぇもんだ。断言する。お前には間違いなくその実力はある。だが、慢心はするな。お前より強い奴はたくさんいる。死なねぇためには、油断しねぇこと。これに尽きる。」
「ええ、勿論。肝に銘じておきますよ。」
「よし、俺からは以上だ。達者でな。」
「師匠こそ、お元気で。」
奴とも、もう会うことはないだろう。いや、会いたくない。助けてくれたとはいえ、やっぱ素直に恩義を感じることはできねぇな。鬼畜だな、人間じゃあない。人間の皮を被った悪魔だな。一応師匠とは呼んでおいてやるが、再会したくねぇな。
と、俺ももう人間かどうか怪しいな。体の半分以上が機械とか。元の世界に帰ったらどうなるんだ、コレ?
・・・やめよ。考えても詮無い。戻れたらその時考えたらいいや。
さてさて、一滴の涙もなくバイバイし、奴から解放された俺は森を抜け、平原を歩いているわけだ。サナカへ行こうと思ったが、フィネアに置きっぱなしの荷物もあることだし、一旦フィネアに戻ろう。宿の代金は払ってなかったから、荷物はどうなってるやら。処分されてなけりゃいいんだが。制服あるし。
やー、しっかし平和だね。一面の緑の平原。めっちゃゴロゴロしたい。ちょっと位いいよね。フフフ、我を呼ぶ緑のお布団よ、待っておれ、いざダイブ!
ドーーーン!
勘違いしないでくれ。俺のダイブの音では決してない。これは、爆発だ。そして、俺は爆発していない。断言する。
遠く、でもないな。なにやら赤色やらオレンジ色が見える。火だな。穏やかじゃないな。せっかく平和な散歩道なのに、なんというお約束。
鬱陶しい。これからお昼寝ゴロゴロタイムなのに。実に気分が悪い。俺の気分を損ねたのはどこのどいつだ?
爆発が発生した場所へ向けて、草原を駆け抜けた。俺も悪人ではない、事故なら仕方ないから人命救助に勤しもう。だが、例えば盗賊だとかが害意をもってやらかしたなら、色々と覚悟してもらおう。
あっという間に現場に到着。現場の状況を報告します。馬車と思われるものが1つ、馬は繋がれたまま。柄の悪そうな複数の人間が馬車を取り囲んでいます。早速事情聴取を行います!
「あー、そこのあんた。これ、どういうこと?」
「んだコラガキがぁ!いつの間に来やがった!?見られたからには生かしておけん、ブッ殺すぞ!」
おーおー。話が通じないし敵意が溢れとるなぁ。こいつのまわりにいる奴らも、ニヤニヤ気持ち悪く笑いながら俺をみてやがる。気持ち悪ぃな。これはもう、決定か?
「見たところ、盗賊か?さっきの爆発といい、お前達がやったのか?」
「だったらどうなんだ?俺達が獲物を狙って何が悪い!?俺たちはそうやって生きてきたんだ!てめぇもぶち殺す!」
決定だ。非常に残念だ。
「野郎ども、先にこのガキから始末するぞ!」
「その野郎どもとかいうのは、そこでおねんねしている奴らのことか?」
こいつの周りにいた奴らは、全員地面に横たわっている。こいつら、威勢はいいが隙だらけだ。だから、サクっとな。安心しろ、寝てるだけだ。
「な、なんだと!て、てめえがやりやがったのか?」
「安心しろ、殺しちゃいねぇ。寝てるだけだ。だけどよ、これ以上は、わかるよな?」
スリープで眠っているだけだ。闇魔術は状態異常の魔術でもある。こういう、殺したくない時は思いの外役に立つ。
「お前、何もんだ?」
「余計な詮索はすんな。今の俺はてめぇらのせいで機嫌が悪ぃんだ。さっさと立ち去れ。じゃないと、正当防衛で反撃するぞ。そうなれば、その顔面とも今日でお別れだなぁ!」
「わ、わかった。俺達はこれで・・・」
そいつは、俺に言われた通り眠りこけている仲間達を起こした。顔を叩かれたそいつらは、すぐに目を覚ましてキョトンとしている。
「お頭、これはどういう」
「余計なことは喋るな。ここは終わりだ、さっさと行くぞ!」
「せっかくの獲物が」
「命あってこそだ。行くぞ。」
ふん、行ったようだな。さて、この馬車の中、誰か生きてるかなっと?
ドーーーン!
後ろだな。イライラするなぁホント。
「な、なんて奴だ。俺の爆発魔術弾、それも切り札の・・・」
「あのなぁ、やることがせこい。正面からかかって来やがれ!!」
あいつ、逃げたと見せかけて爆弾投げて来やがった。そんなもんお見通しだ。結界はっとけば、なんてことはない。
「なあ、わかってるよな。」
「ひ、ひぃぃ、助けて」
「さっき助けただろうが。無下にしやがって。いいな、これはお前らが反撃しないよう、正当防衛だ。」
「ゆ、許してくださ「ゴハァァァッ」」
腹パンしてやったぜ。加減したから死んでないだろうさ。
「さぁ、さっさと行け。次は頭と胴体がお別れしないといけないな。ん?」
「うぐぅ・・・ご、ごめんなさい。」
生ゴミが。いや、生ゴミでも燃えることでエネルギーになり、人類の役に立つこともある。であれば、こいつらは生ゴミにも劣るカスでしかない。生ゴミに土下座しやがれ。
もう懲りただろう。あいつらは本当に遠ざかって行った。さて、馬車の中は、っと。
「おーい、生きてるかぁ?」
「こ、殺さないで。お金はあげるから、命だけは・・・。」
女が一人いた。
「勘違いすんな。助けにきた。他に生きてる奴はいるか?」
「ひ、一人行商だから、ウチだけだよ。」
「ほーん、一人か?護衛とか雇ってないのか?」
「このあたりは治安が良くて、護衛は必要ない、筈だったの。しかも、フィネアとマケニアの往復だけだったから、距離もそんなになくて。油断しちゃった。」
フィネアとマケニア?の往復?
「そうだ、ポチは!?」
「ポチ?馬なら無事だが。」
「そう、ポチ!ああ、無事でよかった!」
ポチって、犬につける名前じゃ・・・
「かわいいでしょ?私が子どもの時から一緒なの!」
「馬のポチがかわいいのには同意するが、あんたは今も子どもじゃねぇか。」
「もう17歳!大人だよ!」
ああ、そうか。この世界、15歳から大人だったな。
「俺と同じじゃないか。」
「おお、タメだね!でもどちらかというと、私がお姉さんだよね?」
「調子のんなよ。」
調子狂うな。
「そう怒らないでよ。助けてくれてありがとう。私はメリッサ。君は?」
「マサツカだ。」
「変わった名前だね。この辺の人?」
「違うな。ところで、これから行くのはフィネアか?」
「違うよ。フィネアで商売して、マケニアに帰るところ。マサツカ君は?」
「フィネアに行こうとしていた。」
「それは、急ぎの用事?」
「いや、そうでもないな。」
「だったらさ、マケニアまで護衛してよ。ここから馬車で数時間。どう?」
「マケニアに行くと、フィネアから遠ざかるじゃねーか?それに、マケニアってなんだ?」
「マケニアは、そうだね、商売の街とか、交易都市とかいわれてるね。フィネアとマケニアは近いし、そんなに遠ざからないよ。」
交易都市、か。なら、様々な情報が入ってくる筈だ。なら、先にそっちに行っておいてもいいだろう。
「よし、護衛なら、いくら出す?」
「ええ!?お金とるの?ここは何かの縁だと思ってなにとぞ!」
「冗談だ。だが、マケニアの案内位はしろよ。」
「任せて!それなら楽勝!ささ、馬車に乗って!」
「焦るな。その前にやることがある。」
「何々?」
「昼寝。」
「昼寝!?」
そう、この草原でお昼寝タイム!緑のお布団よ!お待たせしました!




