第12話
「よお。久しぶりじゃねぇか、バカ弟子が。」
久しぶりの、ヴァルディス師匠。会いたくなかったな、この鬼畜め。
迷宮内の、スライムの大群、ガイコツやゾンビ等のアンデッドの軍勢、毒ガスの魔物か?が漂いまくるフィールド、灼熱の火山や氷の洞窟、鎌鼬だらけの空間に雷が降り注ぐ平原、最後の2体の騎士、他諸々の魔物の軍勢やトラップ地獄よりも、この師匠は厄介だ。あまり会いたいものではない。
「そんなに嫌な顔をするなよ。久しぶりに会えて、嬉しいだろ。」
「気分を害しました。これっきりにしてほしいですね。」
せっかく自然に癒されていたのに。邪魔されてひどく気分を害した。だから、
「おおっと。やるじゃねぇか。」
避けやがった。風の上級魔術、ディザスターサイクロン。さっきまで師匠がいた場所に、鎌鼬の渦が巻き起こり、周りの砂や石等を巻き込んで竜巻のように暴風を起こした。風は見えないから、不意打ちには丁度いいんだが。こいつ、地味に強いな。ウザい。だが、これで終わらせない。あたっても、こいつはどうせ死にはしない。
「おおっと!おいおい、これはひどいんじゃないかぁ。流石に死ぬかと思ったぜ。」
「ご冗談を。生きてるじゃないですか。」
師匠がディザスターサイクロンを避けて着地したその場所に火柱を発生させたが、耐えた。トラップのように仕掛けたり、そのまま相手にぶつけたりできる火の上級魔術のフレイムブラストだったが、師匠はグラビティフィールドで防いだ。無の上級魔術で使用できる者が少ない珍しい魔術で、俺の炎を吸い込んだようだ。ほんっと、器用だな。
「で、ここにいるってことは、終わったのか?まさか、逃げ出してきたわけじゃあねぇだろう?」
「終わりましたよ。証拠物もあります。」
「よっしゃ。なら、戻って詳しい話を聴かせろや。それで、修行を完了するかどうか、判断するぜ。」
そう。これで俺の修行は完了だ。これから、久中さんと元の世界へ帰る為に行動しなければ。
「この2つが、最下層にあった物だな。」
「そうです。何かわかりますか?」
「まず、この袋だな。これはマジックバッグだな。高度な時間と空間の魔術を使用して、このカバンの見た目以上に物を入れることができる。例えば、これだ。」
と、大きめの鉄でできた盾を、マジックバッグの口にもっていくと、消えた。
「消えちゃいねぇよ。バッグの中にある。バッグの中は時間が流れないから、食料保管も可能だ。だが、生き物は入らねぇ。容量も、このバッグの魔力からして、ほぼ無限大だな。いくら中に入れても、外に出さない限り重さも感じない。こりゃ良いもん拾ったなぁ!」
何やら、上機嫌だ。そんなにすごいものだとはな。
「マサツカ、これはお前の物だ。俺はいらん。大切にしな。使い方は簡単だ。口を開けて、入れたい物を近づけたら入る。口を開けて、出したいものを念じれば出てくる。中の物を全部出したいときは、口を開けて全部出すよう念じる。それだけだ。ただ、便利すぎるし珍しい物だから、無闇に言いふらすなよ。国宝級の物だ。持ってるだけで狙われる。」
便利なことで。これからの旅に有効活用させてもらおう。
「で、次にこの石だな。これこそ、あの迷宮の核だな。」
「迷宮の核?」
「そうだ。迷宮はある時突然発生する。原因はわかっていない。迷宮の奥にある迷宮の核、この宝石みたいな石だな。これを迷宮の外に出すと、そこは迷宮ではなくなり、ただの洞窟になるわけだ。魔物も出てこなくなる。だから、なんらかの要因でこの核ができて、迷宮が広がるという説がある。ついでに言うと、この核は魔力の塊だ。値段もつけられねぇし、これも持っているとわかっただけで狙われるもんだ。」
ほう。そうか。迷宮の核というのなら、これ以上の証明はないな。
「後は、お前が迷宮を踏破した記録をとったら、終了だ。よくやった!これで俺の魔工技術が更に進化する!そして、俺のこれまでの技術の正当性が証明された!」
よくわからん。こいつの頭がイカれていることは、まぁわかった。
「じゃ、お前の記録をもらうから、ちょっと待ってろ。」
と、奴はごそごそと部屋の中のガラクタの山を漁りだした。なんでも、奴にはどこに何があるか全てわかっているらしい。
「よし、ちょっと目を見せてもらうぞ。」
と、俺の義眼に何か向けた。元の世界にあった赤外線通信のようなものか。この世界にもあったのか。
「終わったぜ。必要な記録もとれた。で、これからどうするよ?すぐに旅立つか?」
「そうしたいですね。そういえば、迷宮に入ってから戻るまで、どれ位経ちました?」
「1か月位だな。記録を見たら、あの迷宮は100階層あったようだぜ。大したものだな。普通は半年位かかりそうなものだがな。」
迷宮に入ってから1か月も経ってたのか。なら、なおさら今すぐにでも。
「まあ、すぐに旅立つとはいっても、これから日も暮れる。行くなら明日の朝にしろ。迷宮程ではないが、この辺にも魔物は出る。お前はもうそこいらの魔物や盗賊なんかには負けない位強くなったが、油断はするなよ。」
そういうことなら、明日にしよう。色々あったが、これでやっと旅立てる。こいつともおさらばだ。長かったよ、ホントに。




