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第11話

 こんの、消え失せろ!


 俺は、この地下迷宮の最下層だろう場所にいる。目の前には、純白に輝く鎧の騎士が俺の大鎌による斬撃を受け、今にも崩れ落ちそうになっていた。もう少し。こいつを仕留めれば終わり、だとよかったんだが、


 ヒュンッ


 俺の首を狩り取ろうと、今度は漆黒の鎧の騎士が縦横無尽に駆け回る。


「シャアアア」


 こいつの剣には無駄が無い。確実に俺を殺しに来ている。一流の、凄腕の剣士だ。だけど、俺も負けてはいない。

 いなし、避けて、スキをつくる。一瞬たりとも見逃さない。突き、横薙ぎ、縦切り、次々と俺を襲う斬撃を見極める。そして、


「!?」


 ホーリーシャイニング。光の上級魔術を、当然無詠唱で放つ。一瞬でまばゆい光が広がり、光の鎖が相手を捕らえ、やがて檻を形成した。悪いが、正々堂々と戦う余裕はない。

 光の檻に囚われた、この漆黒の騎士に対して、俺は脳天に大鎌の切っ先をたたきつけた。


「オオオオォ」


 その一撃がとどめとなり、最後は灰となって消え去った。


 残った純白の鎧の騎士は、灰となった漆黒の鎧の騎士を見やると、猛然と持っていた剣で斬りかかってきた。あと一歩というところまでダメ―ジを与えたとはいえ、こいつも漆黒の鎧の騎士と同じく、相当な実力者だ。だが、その輝く鎧は既に幾多もの亀裂が入っており、所々欠けている。もはや満身創痍だ。

 剣に勢いがあり的確に俺を殺そうとしているが、もうこいつの動きも見切っている。俺の首を狙う一撃をしゃがんで回避し、同時に大鎌を奴の胴体へ一閃。

 それを受けたそいつは、大きくよろめくも、まだ消えない。耐久力が異様に高いようだ。だが、ここまで来ればあとはとどめだけだ。


 フォンセ・ゲフェングニス


 弱りきった純白の鎧の騎士へ、闇属性の上級魔術を放つ。ホーリーシャイニングとは逆に、今度は闇を模した蠢く靄が敵を捕らえる。生命力をえぐり取るかのごとく奴のエネルギーを奪うそれが消え去った後には、バラバラになった鎧が転がっており、やがて灰となって消え去った。


 これで、2体共倒しただろう。振り返れば、2体の騎士の連携は絶妙だった。息が合うどころではない。まるで計算し尽されたコンピューターの如く、俺を殺しにきた。まずはどちらか一体を止めなければと、半ば力ずくで純白の騎士を攻撃していたが、かなりの時間がかかった。だが、時間がかかったことで、あいつらの動きを読み切った。正確すぎる動きは、言い換えれば読みやすいものだった。時折フェイントを混ぜてきたが、結局俺を殺す為に必要な最適な行動をとると考えれば、予測しやすいものだった。さて、


「終わった、な。」


 地下迷宮に放り込まれてから、何日経ったのか、ここが何階層目なのか、わからない。途中で時間と、階層の数を数えることをやめた。ヴァルディス師匠は、この迷宮の最下層の試練を乗り越えたら、修行は終わりだと言った。なら、後はここを出て久中さんを探し出して、一緒に元の世界へ戻るだけだ。

 さて、どうやって試練を攻略したことを証明し、どうやってここをでようか。マッピングなんてしていないから、来た道は覚えていない。それに、騎士達の魔物も、灰になって、いや、跡形もなく消え去ってしまった。

 どうしたものか。地上に戻るのは、まぁなんとかなるだろう。この体、食わなくても生きて行けるし、水が必要なら魔術でどうにでもなる。問題は、証明だな。


 ゴゴゴゴゴ・・・


 不意に、この部屋全体が揺れた。地震か!?と思えば、どうやら壁が動いているようで、さっきまではなかった通路が現れた。まだ、先があるのか。いや、罠か?だが、罠探知の魔術は反応していない。ここは進もう。


 現れた通路を進むと、程なくして、古びた祭壇のような場所に辿り着いた。何かを祭っている、のだろうか。石を積み重ねただけの、その祭壇の前には、虹色に輝く丸い宝石のような物と、石でできた箱が置いてあった。

 なるほど、先程の騎士の魔物達を倒したことで、ここへの道が開けたわけだな。なら、この宝石のような物と、箱の中身を持ち帰れば証明となるわけだ。

 念の為、ここでも罠探知を作動させるが、特に異常はないようだ。まず、箱を開けて中身を確認すると、特に代わり映えのないカバンが一つ入っていた。ただのカバンか?いや、微量だが溢れる魔力が感じられる。持って帰ろう。そして、宝石のような物を持ち上げると、目の前の床に円が描かれ、輝きだした。その輝きはしばらくしても消えることがない。

 元の世界のテレビゲームに、ボスを倒したら現れる光に足を踏み入れると、入口までワープさせてくれる仕掛けがあったが、これも同じだろうか。

 同じであれば、迷宮の入口に戻れる。が、本当に大丈夫だろうか。実は、まだ最下層ではなく、この先のフロアへ転送されるのか。・・・どちらにしても進むしかないな。ここで戻るのも時間がかかるし、この先があるのならば、行かねばならない。


 ならば、乗るしかない。警戒を解かずに、光る床に足を踏み入れた。


 視界が反転し、目の前が真っ白になり、しばらく重力が感じられなくなった。まるでフワフワと浮いているようだ。

 やがて目の前に見覚えのある景色が現れた。もう、薄暗い地下では無い。太陽と青空と緑の森の中、迷宮の入口の前に俺はいた。


 無事に戻ってきたようだ。久しぶりの太陽が眩しい。空も森も、懐かしく目に優しい。

 空を眺めながら、柔らかい草むらに寝転がった。こういうのは久しぶりだ。癒される。迷宮では魔物がいる為油断することなく、寝る時も硬い地面で、罠探知の結界に反応があればすぐに起き上がって迎撃したものだ。そういえば、いつからか寝転がるのではなく座ったまま寝るようになったな。迷宮を進むにつれ、より油断ならなくなった。


 ふぅ。もうしばらく、このまま休んでいたい。そう願っていたが、


 バシャアッ!


 水の塊が降ってきた。だから、防いだ。土の中級魔術、ロックウォール。これで俺を囲むように展開することで、水の塊は俺に届くことは無い。


 さて、こんな余計な事をしでかすのは、一人しかいまい。



「よお。久しぶりじゃねぇか、バカ弟子が。」


 こいつの声を聞くのも、久しぶりだ。


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