第10話
「死ぬまで走れ!死にはしない!」
「無理!死にます!」
「喋る余裕があるなら、まだいける。死ぬまで走れ!」
「きゅ、休憩を」
「速度が落ちたぞ!死にたいのか!」
「し、死にたくないです!」
「ならば全力で走れ!お前に拒否権は無い!」
「はい!」
Q.俺は何をしているでしょう?
A。ヴァルディスから修行という名の拷問を受けています。一応、師匠と呼んでやります。
何故拷問って??そりゃさ、最初は体を慣らすための、本当に軽いトレーニングだったわけよ。歩くことから始まり、軽く走る、初級魔術をちょこっと使ってみる、剣や大鎌を使ってみる、位なものだった。最初の1週間は、な。
1週間が過ぎ、俺が今の体に馴染んだと見るや、修行は拷問となった。
考えてもみてくれ。早朝、日の出と同時に叩き起こされていきなり走れと。しかも師匠が止めるまで終わらない。ついて来る師匠は、SF映画にでるような空中を走るバイクに乗ってやがるし。何それ、俺も欲しい。
そして今日も、師匠が止めるまで走る。とにかく走る。時に平原もあれば、険しい岩場や視界の悪い森林を走ることもある。あー、きついわ。
「ここまでだ。1分休憩。次は魔術の訓練だ!」
「・・・」
返事ができない。俺はもはや屍。いや、なんでもない。
「休憩修了。魔術の訓練だ。基本7属性の初級魔術、詠唱無しで。始め!」
詠唱無しで魔術。これが案外難しい。詠唱、つまり術の名前を唱えることで、魔術の発動のイメージをしやすい。詠唱無しだと、イメージし、念じなければならないが、発動のイメージが掴みにくい、そのため、結局何も起きない。
「貴様!やる気があるのか!何も起きんぞ!敵がいれば、お前はたった今死んだ!」
「すみません。もう一度。」
「魔術はイメージだ。お前のイメージは弱い!自分を極限の状況に追い込め!」
そう言うと師匠は、俺に向かって火の上級魔術を、無詠唱でいきなりぶっ放しやがった。俺は間一髪横っ飛びで回避した。ちょっ!危な過ぎるだろ!何考えてんだコイツ!
「失敗すれば、その度に俺が無詠唱で貴様に魔術を放つ!」
「師匠!危険すぎます!当たったらどうするんですか!」
「貴様が無詠唱で魔術を使用すればいいだけのことだ。さあ、もう一度、無詠唱で基本7属性の初級魔術、始め!」
しゃーない。もうフラフラだが、やらないとマジで死ぬ。ファイアボールなら、こう、火の玉が全身の魔力から集まってできて、そして具現化して「ぶべぇ!」
「遅い!お前は今日だけで何度死んだ!?」
おもっきし顔面殴られた。超痛いし。もう嫌だし。逃げたいし。どこに逃げる?逃げ場無しやん。
「師匠。もう、限界で」
「たわけ!」
「ごはぁっ!」
また殴られた。もはや痛覚がマヒしてきたよ。
「寝言は寝てから言え。さあ、回復しろ。」
そう、俺はどういうわけか、治癒魔術だけは詠唱無しでできる。
元の世界の医療という概念を知っているからなのか、多少の傷や怪我は、詠唱することなく使用し、瞬く間に完治できる。魔工でできた部分も、破損個所は元通りだ。機械が修復されている原理がわからん。
とりあえず、治癒魔術がなければ今生きてはいない。
「治癒魔術だけは一人前じゃねえか。しかも、魔工にまで及ぶとはな。」
「ええ、そうです。これだけは師匠にだって負けません。」
「言うじゃねえか。ポンコツ弟子が。それができるなら、さっさと他の魔術の無詠唱を習得しやがれ。」
できたら苦労しないっての。この暴力師匠が。
「っ!あっぶな!」
「何か言ったか?馬鹿弟子が!」
エスパーか!何か読心術みたいなことやってるし。てかヤヴァすぎ。避けたけど、俺がさっきまでいたところに雷?が落ちたのか、バチバチと電気が。
「さぁ、さっさとしろ。じゃねぇと、武器を使った実験ができねぇ。」
そーいや最初に言ってたな。「実験」だと。俺の修行とやらは、師匠にとっては実験ってわけだ。
ゔぁー、もー。いつまで続くんだよこれ。だんだん腹が立ってきた。だが、どうしようもできない自分にもイライラする。
結局、日が落ちるまで、俺は無詠唱ができず、師匠にどつかれまくった。もう、本当に嫌だ。今日の修行終了と同時に、俺の意識は闇に沈んだ。
修行開始12日目
相変わらず師匠のしごきが続く。が、ファイアボールだけは無詠唱で師匠にぶっ放した。
あの師匠、ちょいとビビッてやがんの。と思っていたら、グランドブレイク?土の魔術
をぶっぱなしやがった。命中した。痛い。帰りたい。帰る場所がない。
修行開始15日目
やっと初級魔術無詠唱が完了。ざまぁ見ろ師匠。
アイシクルランスを飛ばしてきやがった。華麗に避ける俺、カッケェ!
修行開始16日目
ものすっげハードになった。今までのが生ぬるい位にハードになった。大鎌を使った修行が追加されたが、とにかくあの師匠ヤヴァイ。意識が遠のく。
修行開始17日目
意識が飛ぶ。闇に沈む。
修行開始20日目
もはや語るまい。
修行開始22日目
だんだん楽になってきた。オートヒール?を習得したみたいだ。
修行開始??日目
地下迷宮?なるものに放り込まれた。




