1/6
特異点のち、希望
気がついたのは、小学校に上がってからだった。体に見合わない大きなランドセルを背負った、子供たちのカラフルな通学路。低い視線から見る世界はとても広くて、大きくて不安だったことを覚えている。それからというもの、私の世界は、不安と恐怖でいっぱいだった。常に足元が崩れ去るような、一吹きの風で落ちてしまう鉄塔の上にいるようなそんな恐怖が私にはあった。
ついに足元が崩れてバラバラになって、もう生きるのを諦めたある日、初めて先生が現れて、彼が手を掴んでくれた。その後のことはあまり覚えていない。きらきら光る水面だとか、薄暗い照明の下の、冷めた珈琲だとか。そんな断片がクルクル回って、私を構成している。今、隣には先生がいる。私は彼の言う通りにする。だって、先生だから。言う事聞かないとダメでしょう?