高校生期(受験と漫才編②)
この自叙伝は、陽キャになろうとしてもなれない、エリートになろうとしてもなれない、スポーツをしようにも才能がない、モテモテになろうとしてもなりきれない挫折ばかりのごく普通の20歳大学生、おれが書く中途半端なストーリーである。
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高校生最後の行事、文化祭を終えたおれは、ここからセンター試験、二次試験に向けて、学内ワースト2位から神戸大への超下克上受験を狙う。
また、神戸大を目指す生徒の中には、元カノの親友であるHの姿もあった。。。
〜高校生期(受験と漫才編②)〜
文化祭の余韻も徐々に薄れ、10月。
この時期から、神大の大学別実践模試が始まる。
実際の二次試験に模して作られた、大手の塾が行う記述式模試試験である。
おれはまだセンター得点率が7割にも満たしていない中、本番では8割を取るという計算のもと、この試験を受けた。
手応えは驚くほどになかった。
おれはセンターに加え、二次力すらもなかった。
Hとは今でも仲が良かったので、帰り道に一緒に帰る約束をしていた。
外はまだ夕方で、ほんのり明るい。
先に出ていたHが、塾から出て少し歩いたところの曲がり角でちょこんと待っていた。
この模試には同じ高校の生徒も何人か受けていて、二人で帰るところなど、他のやつに見られるとめんどくさいと思ったからだ。
そのまますぐ駅には向かわず、ストレス解消と称して二人で歩いて帰った。
ほどなくして、おれたちは近くの公園にあるベンチに腰掛けた。
彼女と別れてからもHとはラインは続いていたが、学校外で約束してから会うのは本当に久々だった。
昔はあまり見た目に気を使っている様子はなかったが、久しぶりの私服姿を見ると、垢抜けたように可愛いくなっていた。
セミロングにゆるめのパーマ。
白い透き通るような肌。
くりんとした目と少しふっくらした頬。
初めておれはHを異性として意識した。
そういえばなんとなく距離が近い。
少し恥ずかしい気持ちになった。
だが不快ではなかった。
Hといるとなぜかとても落ち着く。
とても気が合い、まるで昔からの親友であるかのようだった。
幸せな時間だった。
ふと、夕方の公園で遊ぶ家族に目をやった。
おれは無意識にポロっと、
「Hと結婚したら楽しそうだなぁ。」
と言ってしまった。
Hの方をちらと見るとHも満更でもなさそうだった。
そこからはもしおれたちが結婚したら、という話になった。
付き合ってもないのに、なぜか二人の将来の話をばかばかしいぐらいリアルに語り合った。
トン、と肩に感触がある。
Hがおれの肩に頭を寄せてきた。
おれもその頭に自分の頭を寄せた。
途端にHが正気を取り戻したかのようにサッと離れる。
おれもふと冷静になる。
おれたちは何事もなかったかのようにすぐに立ち、その場を去った。
近くの駅まで歩き、ホームでお別れした。
久々の感覚に、少しの興奮と、なにか大きな罪悪感を感じた。
超えてはいけない線を超えてしまった気がしたが、あまり考えないようにした。
その後もおれたちは模試のたびに帰り道デート的なことをした。
イチャつきは徐々にエスカレートした。
受験のストレスは、時に人を暴走させる。
Hは最初、こんなことはもうだめだ。と言った。
その時のおれは、聞かなかった。
Hもだんだん自制が効かなくなっていく。
気づけば行為の手前までしてしまっていた。
しかしそこで得た感情は、満足感と、不快感、罪悪感。
好きでもない少し前まで友達であった女の子と、そういうことをしてしまっている。
そんな自分を正当化しようと、この子が好きなんだ、と思い込もうとした。
結果、独占欲のみが先行する歪な感情が芽生えた。
学校で、他の男子と喋っているところを見ると、イラつく。
イラつくが、好きというわけではない。
そんな曖昧な感情が、おれを疲弊させた。
中途半端な関係は嫌だったので、これ以上続けるならいっそのこと付き合おうと言った。
それは嫌だと言われた。
だがどちらかが恋人ができるまで、この関係は続けたいと言った。
Hの思考はイマイチ読めなかった。
だからおれは自分を正当化するのをやめた。
好きなものは好きではないと割り切った。
すると、とても気が楽になった。
自分の中で人間関係の中に新たなジャンルが生まれた。
しかしこの関係はあまり長くは続かなかった。
センター試験が近づいてくると、いよいよ余計なことを考える余裕はなくなる。
塾でもカウントパネルが1ヶ月をきる。
みな本番を意識して何度も過去問を解く。
この時のおれのセンター得点率は、なんと65%だった。
夏からわずか5%の上昇。
改めて現実は厳しいということを実感した。
代○ミの塾長の辛辣な言葉が頭をよぎる。
おれの性格上、浪人は絶対に無理だとわかりきっていたので、どうしても受かるしかなかった。
滑り止めの私立は関学と立命館を志望した。
センター利用はどちらとも、一般入試は関学のみだった。
私立の一般入試はあまり自信がなかったし、京大阪大以外の基本的な国公立はセンター命だったので、おれの受験はセンターの重要性が非常に高かった。
65%は流石にまずいと思い、元旦に開催される参加自由型のセンター直前模試なるものを受験した。
少しでも本番前に高得点を取り、自信をつけたいという狙いがあった。
なぜならセンター試験は、本番で劇的に点が上がることなどまずないと言われているからだ。
たいていは模試結果の±5%、緊張や調子によっては、下手すればこれより下がるなんてこともザラにある。
模試の最高結果が65%のおれは、このままではMAXで取れても70%。
ぎりどこかしらの国公立のボーダーにのれるかどうかといったラインだ。
逆にこれより下がった場合、いよいよ受けられる国公立はなくなる。
だからこそこの模試はおれにとって重要だった。
朝から晩までかけて1日で模試は終了。
本来2日かけて行うセンター試験を1日で終えたため、疲労が凄まじかった。
その後、自己採点を行う。
あまり手応えはなかったが、どうだろうか。
意外と丸が多い。
慣れた手つきで採点を終えると、結果は7割ジャストだった。
素直に喜んだ。
ここにきてようやく伸びてきた。
自信を持って本番に臨める。
漏れがないかを細かく確認しながら、おれは本番まで残りの日を待った。
本番当日。
結果、75%。
ほぼ奇跡だった。
模試の最高記録70%の、さらに+5%。
自分の実力を持て余すことなく存分に発揮できた。
目標の神戸大は少し厳しいが、それ以下の国公立なら基本はどこでも選択可能。
厳しい代○ミ塾長も度肝を抜いていた。
スカッとした。
国公立に大きく近づく。
気持ちよかった。
センター利用も関学の方は合格、一般入試も合格していた。
これで浪人の心配をせず気楽に二次試験に挑むことができる。
国公立は結局、センター重視の二次試験の比重が小さい安パイな大学を選んだ。
センターで取れた点数を活かしたいと思った。
センターリサーチは100人中8位ぐらい。
勝ち確。
周りの友達はみな玉砕受験ばかりしていたなかで、置きにいきすぎだろとも言われたが、安定志向のおれ的には素晴らしい選択だった。
二次試験も落ち着いて難なくこなした。
おれは後期試験を考えていなかったので、おれの受験はひとまずこれで終了。
苦しい受験生活からついに解放された。
前期試験が終わると、すぐに卒業式があった。
みんな合格発表前でそわそわしながらも、最後の別れを惜しみ、廊下で延々と写真を撮っていた。
おれも仲良くしていた友達とたくさん写真を撮った。
元カノにも、別れて以来初めて話した。
一緒に写真も撮った。
まだぎこちなさはあったが、相変わらず可愛くて、やっぱりまだ未練があることを再確認した。
Hと元カノの3人でも写真を撮った。
もうこのメンツで遊ぶこともないのだろうと少し寂しく感じた。
式は一瞬で終わった。
その後はすぐに帰る者もいれば、まだ残って写真を撮る者もいる。
おれも満足するまで写真を撮り終えた後、ふと教室に一人でいる元カノを見つけた。
チャンスだと思って、おれは話しかけた。
さっきはみんな写真撮影で廊下がごったがえしていたのであまり長く話せなかったが、教室に二人しかいない今、ゆっくり話すことができた。
話すたびに好きだという気持ちが湧いてくる。
復縁したい。
でももうおれは嫌われてしまっているかもしれない。
悩んだ末、今度遊びに行こうよ、と言ってみた。
卒業式なんだから、どうせ断られたら断られたでもう二度と会わない。
言ってみるだけ言ってみようと思った。
返答は意外にもオッケー。
内心むちゃくちゃ喜んだ。
ワンチャン性を密かに感じながら、遊ぶ日にちを決めて、元カノにばいばいした。
おれは友達が待つ教室へと向かい、三年間お世話になった校舎に感謝を告げて、友達と帰路についた。
明日から学校がないのが違和感しかなかった。
こうしておれの高校生活は幕を閉じた。
しばらくして、合格発表当日。
おれは見事その国公立に合格。
そこまで心配はしていなかったが、母は大喜びしていた。
学部もおれが神戸大で目指していた学部と似通ったところで、十分満足している。
次の日おれは代○ミの塾長に合格報告をしにいった。
塾長はもはやどんな報告でも動じないというような姿勢でおれの報告を聞いていた。
塾長があの時無理だ、と言ってくれたおかげでここまで成績が伸びたとも思えるので、塾長にはとても感謝した。
来月から大学生活が始まる。。。
しかしおれは、そこまで大学生活に希望を抱いてはいなかった。
〜続く〜
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p.s.
先輩からマリカー 8dxとゼルダを借り、またポケモンも新たに発売ということで、更新頻度が大幅に遅れる可能性しかないです。