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自叙伝  作者: ぺぺろん
4/12

高校生期(部活はつらいよ編)

この自叙伝は、陽キャになろうとしてもなれない、エリートになろうとしてもなれない、スポーツをしようにも才能がない、モテモテになろうとしてもなりきれない挫折ばかりのごく普通の20歳大学生、おれが書く中途半端なストーリーである。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ここからは、時系列的には彼女ができたその後として読んでいただけるとありがたき幸せで御座候。



〜高校生期(部活はつらいよ編)〜



サッカー部に入ってもうすぐ一年が経つ。


進学校であったおれの高校の部活生は、基本は4月でみんな引退する。


そう、もうすぐ一年ほど一緒にプレーしてきた先輩たちとはお別れの季節なのである。


つまりこの春の公式戦が実質引退試合ということになる。


やはり同期が試合で活躍しているのを見るのも、引退のかかった試合で先輩たちが活躍する姿も、とても胸熱くさせられた。


順調に三回戦まで勝ち進んでゆく。


当のおれはというと、ベンチである。


着実にベンチウォーマーとしての経験値は完ストしようとしていた。


ただ、勘違いしないで欲しい。


まだ今は、先輩たちの代なのである。


来年もしかしたら、ひょっとしたら、おれたちの代になればスタメンも狙えるのではないか、とおれは淡い期待をひそかに寄せていた。


また、鶏口牛後とはよく言ったもので、AチームとBチームで練習が分かれていたのだが、おれはBチームで多少は上手い方だったので、わりとブイブイ言わせていた。


それは、中学生の頃に必死に練習したドリブルがあったからこそだった。


しかし、実はBチームの守備がザルすぎるからこそ、通用する小手先の技術でしかなかったのだ。


おれはそのことを先輩たちが引退してから知ることとなる。。。。




春の公式戦、三回戦の相手は私立の強豪チームだった。


善戦するも結果は0-3で敗退。


いつも頼れる先輩が泣いている姿に、思わずもらい泣きをしそうになったのだが、余裕で耐えた。


試合後3日ほどはみなお通夜ムード。


進学校の弱小チームにとって三回戦進出などそうそうない快挙だった。


それだけに負けた時の悔しさも大きい。


しかし後輩のおれたちはうかうかしていられない。


今度はおれたちが新チームを新たに引っ張っていかなければならないのである。


となると、初めに行われるのが、キャプテン、副キャプテン決め。


キャプテンについては、うちには監督がおらず、顧問も放任主義であったので、前キャプテンからの推薦で選ばれることとなっているが、副キャプテンについては、その選ばれたキャプテンが2名推薦することとなっている。


まず、キャプテンとして選ばれたのは、クラブチーム上がりの、実力もあるしっかり者のG。


だれもが納得のいく人選だった。


実はもう一人キャプテン候補がいたのだが、自ら辞退したという。


そして次に、キャプテンによる副キャプテンの推薦。


当然おれは、サッカーが上手い奴が二人選ばれておわりだろぐらいに考えており、自分には何にも関係のない話だと思っていた。


まずは一人目。


成績優秀、プレーも丁寧かつ繊細なK。


実はこいつがキャプテン候補を辞退した男だった。


中学時代は強豪チームを統率するキャプテンをしていたというまさにキャプテンに適任といえるK。


その辞退の理由とは、自分がキャプテンをすれば、チームに厳しくなりすぎてしまうから、ということだった。


なんて恐ろしい理由なんだとも思ったが、内心少し安心もした。


副キャプテンという地位でも十分そのキャプテンシーを発揮してくれるだろうと思う。


そして二人目。


おれだった。


耳を疑った。


実力的に考えても能力的に考えてもおかしい。


ふつうに考えて1年間適当にサッカーをしてきたおれには荷が重い。


しかしこの時のおれは、そんな気持ちよりも選ばれた嬉しさから、この推薦を快諾してしまう。


ここからが地獄の始まりだった。。。





新チームとしての練習。


最初の数日間は出来立てホヤホヤのチームなだけあって、ゆる〜く練習していた。


それからしばらく経って、新入生の実力も把握し始めて、ざっくりAチームとBチームが分かれ出した頃、本格的に練習が開始した。


本格的練習開始の初日、おれはAチームにいた。


ミニゲーム形式の練習の時間が来た。


Aチームの新入生はみな中学生の頃からみっちりサッカーをやってきているのだろう。うまい。


ミニゲームでもボール回しが安定しており、徐々にチームに馴染み始めている。


おれはいつもと同じ感覚でボールを扱う。


その瞬間、すぐさま敵にボールが奪われた。


おかしい。


もう一度ボールをもらう。


(はやっ。)


気づけばボールがラインから出ている。


おれはトラップミスをしていた。


パススピードがBチームと明らかに違う。


おれはその後も、ボールをキープするどころか、止めることすらできていなかった。


Bチームでぬるい練習ばかりして満足していたツケが来たのだ。


おれは唖然とした。


みんなもおれを呆然と見つめる。


「お前ってそんな下手だったの?」


おれの心に深く刺さる。





そこからは同期の奴らに完全に舐められたのか、とことんいじめられるようになる。


仲の良かった奴らから特にいじめられた。


物を隠されたり、ケータイを勝手に開けてモンストのモンスターを勝手に売却されたり、カバンを汚されたり靴下を濡らされたり。


過激ないじりを受け、それに対してツッコむも、おもんな、と言われるのみ。


一年の時はよく一緒に遊びにも行っていたのに、まるで態度が違った。


おれにほとんど人権はなかった。


悔しいがなにもやり返せなかった。


また、厳格なKにもとてつもなく怒られる毎日だった。


ミスをするごとに呆れた顔をしながら小言を言うK。


その度に心が痛んだ。


マネージャーの彼女の手前というのもまた、とても惨めだった。


おれのスクールカーストは、確実に下がった。


それでもポジションの関係上、サイドバックが他にいなかったので一応はスタメンだった。


まともにプレーもできないのにスタメンで出ていればそりゃあボロクソに文句も言われる。


だがおれは、スタメンであるという事実に安堵していた。


本当にバカだ。危機感が足りなかった。


そんな下手くそなスタメンなど、段々とチームに馴染み、仕上がってきた後輩たちにすぐ奪われた。


結局、夏の公式戦を、おれは副キャプテンになってもなおベンチで迎え入れることとなった。


ここで初めて危機感を覚える。


このままじゃダメだと。


夏の公式戦は一回戦敗退で終わった。






すぐさまおれは自主練を始めた。


毎日、時間があればボールを触った。


朝練夜練は欠かさなかった。


近くのフットサル場で毎週千円払ってフットサルチームの練習に参加させてもらい、サッカーについて学び直した。


サッカー関連の本を読み漁った。


海外サッカーは時間があれば片っ端から見た。





しかし所詮は付け焼き刃。


そんなすぐに上手くなることはなかった。


だが、少しずつ。ほんの少しずつだが、最低限の止める、蹴るの質が高まってきた。


相変わらずバカにされるほどの下手くそさだったが、昔ほどミスはしなくなった。


それを真っ先に気づいてくれたのが、後輩の中でもずば抜けてうまく、チームの中でも一番と言っていいほどの実力で、次期キャプテン候補のMくんだった。


彼はその実力から、チーム内での発言力はすでにキャプテンや副キャプテンのKに匹敵するものがあった。


そんな中、キャプテンのGが怪我をして2ヶ月ほどサッカーができなくなる自体が発生した。


1人欠けたことで、だれを試合に出すか、という話し合いになった。


おれにとっては願ってもないチャンスだった。


後輩のMくんは迷わず言った。


「○○くん(おれ)は確実に上手くなってると思います。いま試合に出すべきは○○くんです。」


そう言ってくれた。


とてもありがたかった。初めてサッカーでだれかに認めてもらえた気がした。


おれは再び、実力でスタメンに返り咲いた。しかもボランチというチームの中核を担うポジションで。


それでも自主練は欠かさなかった。


体が悲鳴をあげようとも、熱があろうともサッカーをした。


この掴み取ったスタメンという枠を、死んでも離したくはなかった。






ある日、だれかが気づく。


「ここ最近の練習、ずっと全く同じ内容じゃね?」


「この練習、あんま意味なくね?」


「なんか、チームにまとまりがなくね?」


「てか、キャプテン、何も仕事してなくね?」


違和感は徐々に膨らむ。


各々が文句や不満を言い出す。


そう、キャプテンのGには、キャプテンシーがあまりなかった。


しっかり者には違いなかったが、統率力とはまた別物であった。


徐々に不信感が募り始めたのである。


キャプテンのGの顔にも疲れの色が見え始めた。


完全にキャプテンという重荷に耐えかねてキャパオーバーしているようだ。


またチームに対する不満も増え始めた。


もっとこうして欲しい。ああして欲しい。という声がちらほらと聞こえる。


おれは副キャプテンとして、このままではまずい、と思った。


最初、自分のことで精一杯だったおれは、無視して自身の練習に励もうかと思った。


だが、副キャプテンになって半年、おれはまだ副キャプテンらしきことを全くしていない。


もう片方の副キャプテンKもまったくもって他人事のようにしている。


おれがどうにかするしかないと思った。


おれが助けなきゃ、キャプテンは一人で孤独にチームと向き合わなければならなくなってしまう。


この状況を変えるべく、まずはKにチームの現状を変えよう、という相談をした。


だがKの返答は驚くべきものだった。


「一年生の時の一年間を適当にお遊びサッカーをして過ごしてきたやつに、チームを変えるなんて言われたところで、なんの説得力もないし、変えられるわけがない。ましてや部内恋愛している浮ついたやつに指示されたくもない。チームを変えるというのは素晴らしいことかもしれないが、おれはお前の指示では動かない。」


そこまで言うかと思った。


しかし筋が通っていないこともない。


たしかにおれは今までの自分の行動で、チームのみんながついてくるかと考えれば、なかなかに難しそうだった。


そりゃそうだ。いきなり副キャプテンになれと言われた側で、そんな覚悟すらなかったのだから。


ならば態度で示してやろうと思った。


おれは、半年以上付き合っていたマネージャーの彼女に突如別れを告げた。


引退後にまたよりを戻そうという約束をして。


泣いてキレられて拒まれたが、その時のおれにはそれが最善の選択と信じて疑わなかった。


今思えば本当に彼女の気持ちを1ミリたりとも考えられていなかったが、その時はもうすでにサッカーのことしか頭になかった。


毎日の自主練に加えてチームのことを考えるとなると、彼女を持つ余裕などなかったのだ。


また、Kの手を借りずとも、チームの現状を変えられるということをKに見せつけてやりたかった。


おれはさっそく、ミーティングで各々が思うチームの不満点について、紙に書き出して提出するように言った。


たくさんの不満が出てきたが、それをキャプテンと二人で共有し、改善できる部分から順に対処していった。


特に、練習メニューについては、練習メニュー設計日というのを設けて、週に一度、練習後にみんなで集まり、試合や練習から出た課題から、それの改善につながる練習をそれぞれ提案していき、みんなで自分たちの練習を設計する、という監督がいないチームならではの方法を取って、メニューを決めた。


これにより、今まで一人でメニューを全て決めていたキャプテンへの負担は大きく減ったと思う。


時々Kは嫌みのようなことを言ってくる時もあったが、きちんと副キャプテンとしての案もだしてくれた。


この方法は引退まで続いた。


おれ自身、チームの運営のための、統率をいかにしてとるか、という本をよく読み込んだ。


自身の技術の向上と、常にチームについて考えることの両立は、正直しんどかった。


でも、キャプテンに元気が取り戻されていくと、おれはとても嬉しい気持ちになった。






ある日、おれは突然スタメンから落ちる。そして二度とスタメン復帰することはなくなる。





うちのチームにはよく、この高校出身の、過去に女子サッカー日本代表を育てたコーチが練習に顔を見せる。


その度に、ここがよくて、ここがダメ、と逐一的確なアドバイスをくださった。


監督のいないこのチームにとって、その的確なアドバイスはとてもありがたかった。


しかしチームが軌道に乗り始めた頃に突然言い放たれたそのアドバイスは、おれにとって致命的なものとなった。


「○○(おれ)が試合にいると点が入らない。」


これをチームは鵜呑みにした。


以後おれが試合に出ることは二度となくなる。


ここまでコーチの影響力は絶大なのか、と思った。


絶望した。


どれだけいいプレーをこの先しても、あの言葉に全て打ち消される気がした。


完全におれは腐ってしまった。


ここまで頑張ってきたのに。


なにか糸が切れたようだった。


それからはチームに尽くすようになった。


正しくは、チームに尽くすことでそれを逃げ場にしていた。


おれは試合に出ない代わりにチームに尽くすんだ、と自分の逃げを正当化していた。


そこから引退試合まではあっという間だった。


気づけばチームは一回戦敗退。


あっけない最後だった。


結局、おれが眺める光景は中学の頃から変わることはなかった。






引退試合後の全体ミーティング。


引退する者は、一人一人後輩たちに向けて言葉を送る。


最後に副キャプテン二人と、キャプテンの言葉。


Kの引退の言葉は非常に端的だった。


ある意味Kらしい。


次におれ。


ここの生徒はみな賢い人たちが集まっているが故、監督がおらずとも自ら考え、チームを動かすことができる人間ばかりであること、これからもみんなでチームの方向性を考えていって欲しいこと、あとは自分が頼りない副キャプテンで本当に申し訳なかったことを伝えた。


この時ばかりはみんな話を真剣に聴いてくれた。


最後にキャプテン。


はじめに、頼りないキャプテンで申し訳なかったという旨の言葉。


そして、おれに一番感謝している、という言葉が次に出た。


○○(おれ)がいたから、なんとか最後までキャプテンとしてやってこれた。


練習メニューも○○のおかげで、自身に負担がかからずに決めることができた。


○○を副キャプテンにして本当によかった。


○○、ありがとう。


ちょっと泣きそうだった。


その感謝の言葉が自分にとって印象的で、キャプテンのその後の話はあまり覚えていない。


プレイヤーとしては一人前でなくとも、副キャプテンとしては仕事を全うできたのかな、と少し感慨深い気持ちになった。


ただおれは、この部活での思い出は苦しかったこと以外なんにもなかったので、以後サッカー部での集まりに参加することはなかった。


もともとこのサッカー部自体が不仲であり、毎年の恒例行事以外プライベートで集まることは皆無であったが。


彼女とは結局、よりを戻すこともなかった。


復縁するにはあまりにも時間が経ちすぎたのだ。


以上がおれの過去で最も苦い部分だ。


今でも、当時のストレスを思い返すだけで気分が悪くなる。


毎日繰り返されるKからの度重なる叱責、チームメイトからの暴言、いつまでも上手くなれない自分、まとまりのないチーム。


でもこの経験のおかげで、おれはまた一つ成長することができた。


ここからはいよいよ受験期に突入する。


だが、あまりにも大きすぎた部活の疲労とストレスは、おれの受験勉強スタートの大きな弊害になってしまうのである。。。。



〜続く〜

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