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008

 問題です。相互不可侵法の可決のより、この港町ダウンタウンからは草食獣人が減っています。さて、そういう状況下で、どうやったら安価で野菜を手に入れられるでしょうか?


「ドロシー。ほっぺにクリームが付いてるわ」

「んえっ、どこ?」


 大口を開けてホイップクリームとバナナが乗ったパンケーキを頬張ったドロシーに、テーブルの反対側に座ってベリーパフェを食べていたアリーが、スプーンを置き、自身の右の頬を指差して教えた。すると、ドロシーはフォークを置いて左手の甲で左頬をこすったので、アリーは反対の頬を指差して教え直す。


「反対。ピアスをしてる方よ」

「あぁ、ここか。よく見てるな、アリー」


 ドロシーは、ナイフを置いて右頬を右手の甲でこすってクリームを落とすと、一緒に注文したメロンソーダのせいで悪魔のように青黒くなっている舌で手に付いたクリームをペロッと舐め取りつつ、アリーの観察眼に感心した。そのドロシーの隣の席には、さきほどまで彼女が抱えていた荷物が置いてある。

 アリーの隣で二人の微笑ましいやり取りを見ていたベティーは、マンゴーミルクで喉を潤してから、おもむろに、このあとの話を切り出す。


「さて。お泊りに必要な物は、あらかた揃ったから、あとは今晩の料理に必要な材料を買おうと思うんだけど。あんた、今日はお父さんの帰りは早いの?」


 ベティーの問いかけに対し、ドロシーは食べ切ったパンケーキの皿を横に置き、二色のアイスの上に粉糖が掛かったワッフルの皿を手前に寄せ、そこへチョコレートソースを掛けながら答える。


「いや、今日も遅くなるってさ」

「そう。それじゃあ、食べて行きなさいよ。二人分も四人分も変わらないわ」

「ん? もう一人来るのか?」


 切り分ける手を止め、ドロシーが皆目見当もつかないといった風にとぼけると、ベティーは、テーブルの空いたスペースに積まれた食べ終わりの皿を横目で見ながら言う。


「あんたが二人分食べるからよ。冷蔵庫の大掃除になるから、助かるわ」

「あぁ、そうかい。他人を掃除機扱いするなよな、まったく」


 ワッフルを頬張りながら不貞腐れる大食のドロシーをほっておき、ベティーは、ようやくコーンフレークの層に辿り着いた小食のアリーに相談する。


「芋と葱はあるから、あと、魚介を入れてカレーにしようと思うんだけど、どうかしら?」

「良いですね。それなら、人参も買わないと」

「そうよね。カレーを作るなら、人参も入れるわよねー」


 アリーの方を向いてニッコリ微笑みつつ、ベティーはチラチラとドロシーに視線を送る。ドロシーは、食べるのに忙しいフリをして聞き流そうとするが、ベティーは更に追い打ちをかける。

 

「アリーは、人参は好き?」

「えぇ、大好きです」

「それは良かった。それじゃあ、人参いっぱいのカレーにしましょう」

「待った!」


 ニヤニヤと勝ち誇った顔で見やるベティーに対し、ドロシーは白旗を挙げた。このあと、ドロシーは人参嫌いであることを告白し、ドロシーの皿に入った人参はアリーが食べるという合意がなされたのであった。

 嵐の前の静けさと言おうか、緊急事態から束の間のほのぼのタイムを満喫している三人の裏では、他の三人が各々別々に行動を開始していたのだが、それについては、また次話以降で。

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