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007

 ダウンタウンは、どこも人で溢れていて、人と人との距離が近くて温かい場所だわ。


 アリーとベティーは仲良さそうに手を繋ぎ、ダウンタウン随一の繁華街へとやってきている。二人の一歩後ろでは、紙袋や段ボール箱を抱えたドロシーが、すれ違う通行人に謝ったり睨んだりしながらついてきている。

 目に映る景色が初めて尽くしのアリーと、お喋りとショッピングが好きなベティーは上機嫌だが、荷物持ちをさせられているドロシーは、不満たらたらである。

 そもそも、どうして三人が繁華街へとやってきたかと言えば、エリックの提案でアリーをベティーの家で一晩預かることになり、どうせ着替えを用意するなら、いっそのこと見つかる可能性が下がる恰好に変身しようとなったからである。まぁ、仮に捕まっても、この人混みをバイクで突っ切るのは無理なので、ここで犯人がアリーをひったくって逃げることは難しいのだけれど。


「パーカーやジーンズなんて、初めて着ました。動きやすいですね」

「男の子用だからね。フードを被れば特徴的な耳と髪が隠れるし、パンツルックなら走ったり跳んだりしやすいから、一石二鳥よ」


 ベティーが言った通り、今のアリーはティーシャツの上にパーカーを羽織り、下には裾を折ったジーンズを履いている。髪も三つ編みを解いてポニーテールにしているので、遠目には少年のように見える。この姿のアリーを知らない人物が、いつものアリーを思い浮かべながら雑踏を捜索したとしても、きっと見逃すことであろう。


「いいのかねぇ、あんな恰好させて。――オッと、スマン。……チッ!」


 肩をぶつけた相手に詫びを入れたり、足を踏んだ相手に舌打ちしたりしつつも、ドロシーは、アリーのパーカーの背面に描かれたストリート系の絵柄を見ては、違和感を隠し切れない様子で呟く。無理もない。たとえるなら、高貴な妃に機械工の作業服を着せたようなものであるからだ。

 そんなドロシーのことを知ってか知らずか、ベティーはドロシーの方を振り返り、労をねぎらいながら短く告げる。


「あちこち歩き回ったから、疲れてきたでしょう。そこのパーラーで休むわよ」

「あいよ。はぁ~、やっと一息つけるぜ」

 

 ベティーが指差す先に、二階にパーラーの看板を掲げている雑居ビルがあるのを視認したドロシーは、溜まった疲れを吐き出すように大きく息を吐き、ほんの少し軽くなった足取りで二人のあとを追いかけた。


 このあと、三人は夕食の献立について話し合い、そこで港町ダウンタウンの食糧事情が伺い知れるのだが、それは、また次の話で。

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