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026

 港町ダウンタウンを流れる川の右岸沿いを、三つ編みとワンピースに戻ったアリー、縄目の痕を隠すためにリストバンドをしているアレックス、二人の手を引くフランク、そしてベティーの四人が歩いている。川面では、背の高い三角旗を竿先に掲げた船が波飛沫を立て、その船体の周囲に幾重にも水紋を描いて進んでいる。

 誘拐犯グループは、チェスターが呼んだ応援によって根こそぎ逮捕され、ひとまず事件は収束した。しかし、それでドロシーの心の傷が癒えるわけではなく、彼女は今、見送りには参加せず、探偵事務所のソファーで不貞寝している。

 しばらく歩き、橋板が上がっている跳ね橋のたもとへ到着すると、四人は足を止め、三対一で向かい合う。それから、まずはフランクが礼を述べる。


「この度は、いろいろとご迷惑をお掛けし、申し訳ございませんでした。それと同時に、誘拐犯からの奪還にご協力いただきましたことを、心から感謝いたします。ありがとうございました」

「いえいえ。困ったときは、お互いさまですから」

「何かございましたら、お渡しした名刺に記載されているアドレスまで、遠慮なく申し付けください。すぐに対応いたします」

「わかりました。何かあれば、ご連絡します」


 最後まで執事としての姿勢を崩さないフランクに、ベティーも心なしかレディーとして品よく答えた。それに続いて、今度はアレックスもベティーに別れの挨拶をする。


「僕からも、御礼を言います。アリーが、お世話になりました。もう一人の方にも、よろしくお伝えください」

「こちらこそ、何だか妹が出来たみたいで楽しかったわ。ガサツな誰かさんと違って可愛くて大人しいから、ずっと居てほしいくらいよ」

「そうでしたか。――ほら、アリーからも」


 アレックスが発言を促すと、アリーは、恥ずかしそうにモジモジとしながら言う。


「こんな形だけど、ダウンタウンに来られて良かったわ。悪い人も多いかもしれないけど、その分、良い人もいっぱい居て、ハイランドじゃ出来ないことが経験できて、知らないことをたくさん学んだわ」

「そうね。アリーにとっては、初めてのことばかりだったものね」

「それでね。もし良かったら、今度はベティーたちがハイランドへ来てみない? 年末に、スターフェスティバルがあるの」

「あら、素敵なお誘いだこと。――行ってもよろしいのでしょうか?」


 ベティーが視線を上げ、アレックスとフランクに目を向けると、フランクが口を開く前にアレックスが答える。


「僕も歓迎しますよ。――良いだろう、フランク?」

「はい。お二人がよろしければ、招待状を準備いたします」


 再会の約束が決まったタイミングで、メガホンを肩に提げ、マイクを片手にしたビーバー耳の人物が、たもとで待っている人々にアナウンスを始める。


『お待たせしました。まもなく、橋を下ろします。手回り品をお持ちください』


 話し込んでる間に、知らず知らず橋板は水平になっており、あとはバーが上がるだけの状態になっている。ハイランドの三人は、先程と同じ順番でベティーに一言ずつ告げ、橋へ向かって歩き出す。


「では、私たちは、ここで失礼いたします」

「また冬に会いましょう」

「楽しみにしてるわね、ベティー」


 去り行く三人へ向けて、アリーは手を振りながら、雑踏に負けじと声を張って言う。


「会える日を心待ちにしてます。またね、アリー!」


 ベティーが手を振っているので、アリーも同じように手を振り返す。そうして、お互いの姿が見えなくなるまで、二人は手を振り続けた。そうすることで、必ず再会できると信じて疑わないかのように。

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