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「ジンジャー・レッドタイガー! お前を逮捕する」
足音の正体はチェスターであり、彼は開口一番、そのように言い放ちつつ、アリーたちがいる部屋に突入してきた。だが、そこにベティーやドロシーが居るのに気付き、疑問を口にする。
「何でお前たちが居るんだ?」
「それは、こっちのセリフよ。逮捕するにしては、タイミングが遅いわ」
「それより、どういうことなんだ? その、ジンジャー・レッドタイガーってのは、あーしの……」
ベティーが遅れてきた刑事の怠慢を指摘し、ドロシーが更なる疑問をぶつけようとした。だが、そこでボスが口を挟み、ドロシーの発言を遮って答える。
「その刑事さんの言う通りなのよ、ドロシー。こんな悪いことに手を染めてしまったから、姿をくらましてたの。イケナイ母親ね」
ボスことジンジャーは、告解室で懺悔するように厳粛な口調で言うと、フードを外し、素顔を晒す。その顔は、あと二十年ほどしたらドロシーもこうなるだろうという未来予想図さながらに、ドロシーとよく似ている。しかも、左耳にはドロシーと同じピアスが輝いている。
それらの共通点から、まぎれもなくジンジャーとドロシーは母娘であり、他人の空似では無かったと納得し、同時にモンタージュ画像にも相違ないことを認めると、チェスターはジンジャーが紅の悪魔に間違いないと判断し、事務的に訊ねる。
「何か言い残しておくことはあるか?」
「いいえ。あとは、取り調べでお話します」
「十四時四十一分、凶悪犯罪グループのボス、紅の悪魔ことジンジャー・レッドタイガー、確保!」
ジンジャーが一切抵抗する様子も見せずに両手を前に差し出したので、チェスターはスラックスから手錠を取り出して手首にはめ、部屋の外へと連行していく。そして、部屋を出る寸前、ジンジャーはドロシーの方を振り返り、一言だけ口にした。
「最後に、元気な顔を見られて良かったわ」
そう言うと、再び前を向き、チェスターと共に廊下の向こうへと姿を消した。
そのあとドロシーは、階段を下りる足音が聞こえなくなった途端、その場にガックリと両手と両膝をつき、そのまま片手を握って床をドンドンと叩きつけながら嗚咽を漏らした。再会の喜びに浸っていたところへ、このような不条理な事実を突き付けられ、やるせなさを発散させようとするドロシーの姿に、ベティーも、アリーも、フランクとアレックスも、何と声を掛けて良いか分からず、しばらくは、ただただ見守っていることしか出来なかった。




