表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/36

筋肉と武闘祭と霊長類最強受付ちゃん 3

その後、私もお姫も順調に勝ち上がり、4回戦で、お姫と当たることとなった。


お姫が帝都でも優勝したというのはどうやらガセや接待試合だったわけでもないようで、危なげなく勝ち抜いていた。ただ、戦い方はすべて力こそパワーといわんばかりの横綱相撲であり、膨大な魔力とあざといかわいらしさを前面に押し出した正面衝突する試合ばかりであった。かわいらしい少女のお姫が正面からあたる、といっているのに変化して躱したりするのはさすがにできないのはわかるけど…… その辺はやはりお姫は戦略家なんだろう。体重の軽さは、身のこなしでカバーしているようで、自分事相手を吹き飛ばして、相手より後で場外に着地する、なんて芸当も多かった。


一方私は正面からあたらず、躱してばかりである。か弱いエルフの私が、筋肉に正面からぶち当たれば木っ端みじんである。お姫のように魔力もないのだから、力勝負になったら即降参レベルである。

なので躱して足を引っかけるかケツを蹴飛ばして場外に追い出すだけである。派手さもないため非常にブーイングが多い。へこむ。待機中も誰も人が来ない。お姫のほうを見ると、かわいい子からタオルをもらっていた余計へこむ。1回戦で私が勝ったエドワードが来て、


「そんなんだから嫁の貰い手がないんだ。仕方ないから俺がもらってやってもいいんだぞ」


とかいきなり言ったから、首根っこつかんで地面に突き刺しておいた。すごいへこむ。

なんだこの格差社会は。やっぱり出場するべきではなかったのだ。出場しなければ毎年のように神父さんの横で実況アシスタントしながらお茶を飲んでいたのに。こんなの、8年前の大会の時からわかっていたから出なかったのに。いったいどうしてこうなった……

そうだ、お姫のせいではないか。あいつが居なければ、そもそも出場しなくて済んだし、仮に出場していなくても、リリーちゃんたち子どもたちは私を応援してくれたはずだ。あいつが私のすべてを奪い、あまつさえさらし者にしているのだ。絶対に許さん。

そう心に誓ったタイミングで、試合のアナウンスが流れた。この恨み、晴らさずにおくべきか。闘気をみなぎらせて、私は舞台へと上がった。







「う、受付ちゃん、なんか殺気がすごすぎて怖いんだけど」

「うふふ、アンジェリーナさん。私、殺気なんて出していませんよ」

「なんで敬語!? 余計コワイ!!!」

「理由なんて知る必要ないわ。あなたはここで死ぬのですから」

「ひぃっ!? 殺気コワイ!!!」


気を殺すべく、冷静に対応しているのだが、お姫には怖がられてしまった。まだ修行が足りないようだ。まあ、修行が足りなくても、お姫をコテンパンにするには十分である。

お姫の声援ばかりで、完全にアウェイの気分になりながら、試合は始まった。


「いっくよー!!!」


掛け声とともに、高速で突っ込んでくるお姫。魔力の残光を残しながら突っ込んでくるその姿はかっこいいが、当たったらただじゃすまないだろう。当然当たるわけにもいかず、かといって躱すのも面倒なので……


「どっせい!!!!」

「うにゃあああああああ!?!?」


懐に潜り込んで、胸元をつかんで背負い投げをした。ずどんっ!! と重い音がして地面にたたきつけられるお姫。そのまま勢いを横に流せば、お姫は場外にすっ飛んでいって私の勝ちだっただろう。しかし今回は勢いを全部あえて下向きに流したので、お姫は場外には飛び出ない。飛び出ない代わりにすごい衝撃だっただろう。そうだ、ここで場外など面白くない展開など、私は望んでいない。じわじわとなぶってやるのだ。


「え、なにいまのおおおおおお!!!!」


立ち上がろうとするタイミング、右足の足の裏がつくかつかないかの、重心が動くタイミングでその右足を払ってやると、お姫は面白いように右に転がり地面にたたきつけられた。ちゃんとお姫の右手を左手で引いてあげたので、背中から落ちていて、けがはしていないはずだ。その分落下の衝撃は普通に落ちたよりも強かったと思うが。


「う、受付ちゃんなかなかやるね、でも油断しなければああああ!!!!」


今度は足元に警戒しながら立ち上がるお姫。しかしその分上半身がお留守である。前かがみで隙だらけの腰を背中側から抱えて、一気に引っこ抜く。そのまま後ろに倒れる裏投げである。お姫の体重と私の体重を乗せて、お姫の背中から落下する。どごぉっ!!! と重い音がして、砂を固めて作った舞台が軽くへこんだ。


「こ、こんどこそゆだんせずにぃいいいい!!!!!」


お姫は、次は足元も上半身も気を使いながら立ち上がろうとしたため腰のあたりが隙だらけになっていた。投げられすぎて恐怖が出ているのだろう、逃げ腰になっていて重心が後ろに下がっていたため、懐に容易に潜り込めた。そのまま脇にお姫の腰を抱え込んで、両足を自分の脚で刈りながら。一緒に倒れこむ。バカーン、という軽い音がして、お姫が地面に激突した。



お姫を私が圧倒できる理由、それは単純にお姫が対人戦になれていないためだ。

お姫の戦いは、その世界有数の魔力を使った魔法戦と、魔力を消費しながら力任せに戦う近接戦である。あまりに魔力が強すぎて、ただの力押しで勝ててしまうせいか、動きが雑で隙が多い。そこをついて転がしてやれば、簡単にポンポン跳ね飛んでいく。特に立ち上がり時の体勢が安定していないときに投げると本当にコロコロ転がる。


大丈夫大丈夫、全部背中から落としているから怪我はしない、と思いながら楽しくお姫を投げ続ける。20回ぐらい投げると、起き上がってこなくなった。心が折れたらしい。泣いて横たわるお姫を場外に容赦なくたたき落とすと、私は舞台から降りた。

私の完全勝利である。







当然のようにこの後、私に対するブーイングはひどかった。しかし、鋼の心を手に入れた私は何事もなく勝ち進む。


決勝戦は領主様だった。接待などを考えずに戦うことにする。

正直、領主様のような大柄な人相手だと、動かれないと戦いようがない。つまり、じりじりと間合いを詰めて、がっちり組んで戦う、なんてことになれば私もやりようがないのだ。

しかし、観客は、ヒールの私が吹き飛ばされるのを望んでいる。そんな地味でわかりにくい戦い方は、領主様には求められていなかった。

最初はそれでも勝ちに行くためか、領主様もじりじりと寄って間合いを詰めてきた。それに対し、私は数歩下がると、肩をすくめてため息をつくジェスチャーをする。


「みみっちいですわね、領主様」


笑顔でそう言ってあげれば、観客もそれに答え、吹き飛ばせのコールである。場を制する者が戦いを制するのだ。結局私に向かって勢いよく突っ込んできた領主様を、私は躱して背中を押してあげる。そのまま領主様は場外へと落ちた。

私の優勝である。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ