5話 あ!忘れてた!!!
少しだけあらすじを変えてみました。
意識がブラックアウトしてから目が覚めると、もうイリス様の姿はなく、俺は天井を見つめていた。
周りを見回すと柵で覆われていて、背中の感触から察するに今俺は赤ちゃん用のベッドの上にいるのだろう。
━━これは、転生したってことでいいんだよな?
『はい、この世界に来てちょうど一週間です、マスター。』
うぉっ、なんだティオか……。
そうだ。イリス様が生まれて一週間は意識をなくしてくれてたんだっけ。
それはそうと、ここどこだ?
『ここはエルフの国、フォルスティン王国のはずれです。マスターはフォルスティン王国のレグサンド伯爵家の次男として生まれました。』
ありがとう、ティオ。
『いえ、私はマスターのお役に立てることが最上の喜びなので、気にしないでください。』
お、おう………。なんかすごい忠誠心だ。
それにしても伯爵ってことは、貴族の中では上の方だから生活には困らなそうだな。
そういえば俺、種族設定でエルフにしたんだっけな。ん?違うか。ハイエルフか。
悪目立ちしそうで怖いな。
ティオ、ハイエルフってこの世界にどのくらいいるの?
『ハイエルフの割合をエルフと比較すると、0.001:99.999程です。』
ええ!?めちゃくちゃ少ないじゃん。ハイエルフ絶滅するんじゃない?
『はい、ですがその分、寿命の面でも力の面でもハイエルフは通常のエルフとでは圧倒的なまでの差があります。
それにハイエルフとエルフは別の種族というわけではなく、先祖返りのようなものなので、絶滅という概念はありません。』
良かった……エルフとハイエルフで対立とかしてたらどうしようかと思ったよ。
あ、でも目立つんじゃ………。
『それはもうどうしようもありません。諦めてください。』
くそっ。早くも俺のスローライフ計画が崩れようとしている………。
まあ、今考えても仕方ないか。その時考えよう。
そうだ。イリス様にもらったスキルとかどうやって見るんだろう。
『ステータスと念じるだけで見れますよ。』
そうなのか。
━━━ステータス!━━━
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クルス・レグサンド :男 0歳
種族:高位森人族
状態:健康
耐久力 10/10
魔力 5/5
攻撃 5
防御 5
俊敏 5
器用 5
運 85
《スキル》
剣術Lv . 1・身体強化Lv . 1 ・気配察知Lv . 1 ・気配遮断Lv . 1 ・魔力操作Lv . 1 ・魔力探知Lv . 1 ・隠蔽Lv . 1
・調教Lv . 1 ・加速Lv . 1
・成長倍加Lv ―・神の導き手Lv . 1
・スキルクリエイトLv . ―(0P)
《加護》
主神イリスの加護、魔王の加護
《称号》
転生者、神の加護を受けし者、
魔王の息子
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良かった…性別男のままだった。名前はクルスか。
俺が作ったスキルはスキルクリエイトっていうのか。早く使ってみたいな。あ、でも魔物とか倒さないとポイントもらえないんだっけ。使うのはまだ先になりそうだ。
イリス様の加護もちゃんとあるな。てかイリス様主神だったのかよ。
あれ、見慣れない加護と称号があるぞ。なんだよ魔王の息子って……。
まあ、いま考えても仕方がないか。
ステータスあるけどこれだけじゃ強いのか弱いのかわからないな。
『マスター、この世界での人族の成人男性のステータスの平均は100~150程度です。ちなみにエルフの成人男性の平均は800~1000程です。運のステータスだけは別で最高が100で生まれた時についていた数値のままです。』
人族とエルフでそんなにも力の差があったとは……。
それにしても俺の運の数値はかなり高いようだ。
『あ、ですがこれは人族の一般の男性のステータスです。冒険者などの戦闘を専門にしている方々はエルフにもひけをとりません。』
職業によってはエルフと同じくらいのステータスになるのか。凄いな人族。
『言い忘れてましたがこのエルフの平均も一般の戦闘を専門にしていない男性のステータスですので、戦闘を専門にしているエルフと人族では比べものになりませんよ?』
マジかよ。一般のエルフが人族の中の強い人たちと同じって……これはイリス様が他の種族を勧めるわけだ。
人族、ドンマイ!
そんな話をティオとしているとドアの開く音がして女性の声がした。
「奥様、お待ち下さい。坊っちゃまの
世話は私達メイドが致しますので。いえ、私がしたいです!」
「なにを言ってるの?我が子の世話を自分でしないでどうするのよ。
………それに、そう言って口実を作って仕事もサボれるじゃない!」
「我が子をダシに仕事をサボる親がどこにいますか!奥様は早く仕事を終えてきてください!そうすれば、私が坊っちゃまと二人っきりになれて、坊っちゃまに付きっきりでお世話をできるのですから!そうしていくうちにだんだんと坊っちゃまは私を母親だと思い込み、血の繋がった親よりも私を求めるようになっていき━━あいたっ!」
「よくも実の母親の前でどうどうとそんなことを言えたものね!あなたメイド向いてないんじゃないの?他の所だったら即刻クビよ━━━ってあらあらクルスちゃん、起きたのね~。」
なんかものすごいことを言い合いながら俺のいるベッドまで来て、俺が目覚めているのに気がつくと言い合いをすぐさまやめ、とてもいい笑顔になった。
俺のことを見つめている女性は二人いた。
どちらも18~20歳ぐらいにしか見えないぐらい若かった。一人はプラチナブロンドの長髪をおろしていて、瞳の色はピンク色の、色白で小顔の、メイド服を着たキリッとした美人さんだ。
もう一人はウェーブがかかった金髪に碧眼の、こちらは色白で小顔の仕立ての良さそうな服を着たおっとりとした美人さんだ。
背は金髪の女性の方が高い。
先ほどの二人の会話から察するに金髪のおっとり美人の女性が、俺の母親でプラチナブロンドのキリッとした美人の女性が、メイドってことかな?
え、でもそうすると、この金髪おっとり美人が俺の母親!?若すぎないか!?
『エルフは成人を迎えると成長が止まりますので。』
ああ、なるほど。どうりで若いわけだ。
「クルスちゃんがちょうど起きたんだからミルクもあげちゃいましょうかね。」
「いえ!奥様!私がやります!」
「あなたさっきから大丈夫!?というか出ないでしょうが!」
「そんなもの坊っちゃまへの愛でどうにでもなります━━━」
ん?ミルク?ミルクってつまり………母乳か!
そうだ、忘れてた!!!このことをイリス様に言おうと思ってたのに!ああああ!なんで忘れるんだよ!俺のバカーー!
俺はこれから起こるであろう結末を予想して心のなかで自分の至らなさを悔いた。
そんなことをしている間にも時間は過ぎていくわけで、いつの間にか言い合いを終わらせていた金髪の女性が、俺を持ち上げ、金髪の女性…俺の母親は胸を出し、俺を自分の胸に近づけさせた。
俺はもう逃げられないと思い━━ええい!ままよ!━━
羞恥心を一切捨てて俺は母親の胸にしゃぶりついた━━。