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最強家族のまったりライフ  作者: もちろう
40/58

40話 偵察隊結成

「勇者召喚?」


ってあれかな?よくラノベとかで見る一般人が異世界に召喚されるやつのこと?


「クルスは知らなかったな。勇者召喚っていうのはこことは違う世界の人間をこの世界に召喚する魔法のことだ。召喚される人は世界を越える影響でステータスが普通よりも何倍も強くなるんだ。呼び出される理由としては俺達魔王を倒すため、もしくは戦争の道具としてだな。」


どうやら俺の想像していた勇者召喚で合っていたようだ。


「まあそんな勇者召喚が西の軍事国家で行われたようなんだ。」


「それで、その勇者召喚が私達と何の関係があるのよ。」


母さんは先ほどのことが尾を引いているのか、棘のある言い方で父さんに続きを促す。


「ま、まあそう急かすな。」


「ふん。クルスを急かしたのはどこの誰だったかしら。」


「うぐっ。」


《うわ~お母様すごい怒ってますね~。》


父さんを責める母さんを見て、ノイントが引き気味に俺に囁く。

うん、ちょっと父さんが可哀想になってきた………。


『やはりクルスと母親は親子だな。』


『ええ、本当に似ていますね。』


え?俺のどこが母さんと似ているのさ?


《『『根に持つところ。』』》


俺がカリス達に聞くと揃って同じことを口にした。

ぐっ、しょうがないじゃん!許したくないことの一つや二つはあるでしょ!


「………それで、話を戻すが、今回集まって貰ったのは勇者召喚をした軍事国家ダンコーツに誰が偵察に行くかということなんだ。」


俺がカリス達に抗議していると、父さんがなんとか立ち直って全員を集めた理由を話した。


「父よ、今回もクジで決めるのか?」


そういえば前回、国を蹂躙しに行くときはクジで決めたってメイドが言ってたなあ。


「うーむ、そうしようと思ってるんだが、とりあえずクルスだけは確定で行ってもらう。」


「え!?なんで俺?」


父さんの唐突な決定事項を聞いて思わず驚いた声が出てしまった。


「心配するな。偵察といってもそこまで堅苦しいものではないぞ。前々からクルスには外の世界を見てもらいたいと思っていたんだ。そういう点でちょうど今回の偵察がうってつけだったんで行ってもらうことにしただけだ。」


俺のその反応を不安がっていると思ったのか、俺を安心させるように理由を教えてくれた。


「そういうわけだからクジで決めるのはクルスと一緒に行く奴だ。そいつにはクルスを守る役目も兼ねているから責任は重大だぞ。」


父さんがそう挑発気味に言った瞬間、俺以外の全員の目が光った気がした。

なに?なんか皆殺気だってるんだけど。


「うお、すごい気迫だな。一応言っとくが俺もクジには参加するぞ。」


その言葉を聞いた途端、部屋のあちこちから「チッ!」と舌打ちする音や「くそ、確率が!」という声が聞こえた。


「お前らなあ…………俺だってクルスと一緒に二人旅してみたいんだよ!文句あるか!はいこれクジな!」


父さんがそんな風にキレながら手を振ると、空中に手のひらサイズのシャボン玉を沢山出現した。


「クルス以外の全員にはこの中からそれぞれ一つ玉を選んでもらう。当たりの場合は玉を割ったときに中から光が漏れるはずだ。そいつが今回クルスと一緒に偵察に行ける当選者となる。ちなみに、これは魔力でできてるが割る前に当たりを判別しようとしても無理だと思うぞ。なんせ作った俺もどれが当たりかわからんくらいだからな。まあそんなわけだからちゃっちゃと選んでくれ。あ、選んでもまだ割るなよ。全員選んでからだからな。」


そう父さんが言うと、各々が宙に浮かぶシャボン玉のようなものをじっくり品定めして選んでいった。意外だったのが父さんの隣に立っていた側近さんまでもがクジに参加していたことだった。


「よし、全員選んだな。それじゃあ一斉に割ってくれ。」


パンッ


部屋のいたるところから風船が弾けるような音が響いた。果たして、当たりを引いたのは………。


「きゃっ!」


短い悲鳴が上がった方を振り向くと目が眩むほどの眩い光に包まれている人影があった。光が収まるとそこには呆然としている一人のメイドがいた。


「当たりを引いたのはアマリエか。これだと思ったんだけどな~。」


父さんや他のハズレを引いた面々は意気消沈したように肩を落としていた。中でもシェーラの落ち込みようは凄まじく、地面にうつ伏せに倒れ込んで絶望にうちひしがれていた。

………何がそんなにメイド達を駆り立てたんだろう?


『………教えない方が良さそうですね。』


俺がメイド達の落ち込みように疑問を持っているとティオが呆れていた。

ええっ?そんなこと言われると余計気になるじゃん!


「はあ~、いつまでも落ち込んでてもしょうがないか。クルスはアマリエと話したことはあるか?」


父さんは気持ちを切り替えると、俺にアマリエと呼ばれたメイドと面識があるか聞いてきた。


「ううん、ないよ。」


アマリエと呼ばれたメイドのことは、廊下で見かけることはあったが、話したり一緒に何かすることはなかったので、ちゃんとした面識はなかった。


「そうか。じゃあ紹介しておこう。アマリエ、そこでボーッとしてないでこっちに来い。」


俺がそう答えると、父さんは当たりを引いた衝撃から未だに立ち直れていなかったアマリエに呼び掛けた。


「…………へっ?は、はいっ!」


アマリエは父さんに呼ばれると、言われたことに思考が追いつかず惚けた声を出した後、やっと言われたことを理解できたのか慌ててこちらに駆け寄ってきた。


「クルス、こいつがお前に同行することになったアマリエだ。アマリエ、お前からも何か言え。」


「え、ええと、ご紹介に預かりましたとおり、こ、今回坊っちゃまにど、同行させていただくことになりました、ア、アマリエと申します。よ、よろしくお願いします坊っちゃま!」


アマリエは初めて話す俺に緊張しているのかどもりながら自己紹介をしてくれた。160センチほどの身長に、明るい黄色の瞳、二の腕まである長めの金髪は前で二つに縛り、病的なまでに白い肌は緊張でぷるぷると震え、15歳程に見える若干幼さの残る顔には本当に自分でいいのかという不安の色が見え隠れしていた。


「うん、よろしくね、アマリエ。話すのはこれが初めてだからお互いわからないことがいっぱいあるし不安だと思うけど、沢山話してお互いのことをもっと知っていこう!」


「ひゃっ、ひゃいっ!」


俺はアマリエが感じている不安を払拭するために、優しい笑顔を浮かべながらそう語りかけると、余計に緊張してしまったのか耳まで赤くして頷いた。だが不安の色は消え去っていたので俺は一先ず安心した。


「そうだな。お互いのことを何も知らないまま一緒に行動するというのもあまり気持ちのいいものではないだろう。どうだ、今から少し一緒に歩いてきてみては?お互いのことをある程度知ることができると思うぞ。」


俺の言ったことを聞いていた父さんがそんな提案をしてきた。


「そうするよ。アマリエもいいかな?」


「え?はい!勿論ですっ!」


俺としては嬉しい提案だったのですぐに承諾した。アマリエにも確認をとると慌てながらではあるが快く承諾してくれた。


「それじゃあ行こっか、アマリエ。」


「は、はい!」


俺はアマリエの手を引くと後ろからおずおずとついてきた。そのまま俺達は部屋の扉を開いて外へと出ていった。


バタンッ





「行ったか………。」


クルス達が部屋を出ていった後、カレイドがポツリと呟いた。


「あーもう!私だってクルスと一緒に行きたかったのにー!」


「私も………。」


いくらか静かになった部屋の中で、レレナとルーナはクジでハズレた不満を爆発させていた。


「ううむ、我もクルスと二人で旅してみたかったぞ。いやまことに残念だ。」


今回は珍しくカルエナまでもが悔しがっていた。


「ううっ、坊っちゃま~、坊っちゃま~、どうして私はハズレてしまったんですか~………。」


今の今まで倒れ伏していたシェーラは四つん這いにシフトチェンジし、悲しみに明け暮れていた。他の者達も落ち込み具合いにだいぶ差はあれどクルスと共に行動できないことを残念に思っていた。


「カレイド様、今回の召集の目的は達成したと思われますので、我々は通常業務に戻ってもよろしいでしょうか。」


そんな中、いち早く立ち直った執事がカレイドに確認をとった。


「あー、それなんだが、この中からクルス達とは別に偵察隊を組もうと思っている。」


「………理由をお聞きしても?」


執事はまさか別動隊を用意するなどと思っていなかったため、カレイドに理由を尋ねた。


「別に勇者召喚を警戒してってわけじゃないぞ。ぶっちゃけ、偵察なんかしてもしなくても変わらないしな。」


カレイド達のようにほとんど最強に近い者達にとっては勇者がいたとしても、戦力差がひっくり返ることはあり得ないので、偵察などそもそも必要ないのだ。ようはただの暇潰しである。


「今回別動隊を組むのはクルスをサポートするためだ。まあ、アマリエがいれば大抵のことはどうにでもなるが、面倒なことになる場合もある。そのような事態を未然に防ぐことが別動隊の役目と思ってくれればいい。」


「つまり、クルス達に悪い虫がつかないように見張っていればいいわけね?」


「まあそういうことだ。」


それを聞いた者達は、先ほどの落ち込んだ様子とは打ってかわって、ギラギラとした闘志を燃やしてカレイドのことを見つめた。


「決め方はさっきと同じでいいな。あ、それと、俺ってば当主だから当主権限で別動隊に確定で入るからな。」


カレイドがそう言った瞬間、メイドと執事達は、カレイドに向かって無駄に洗練された動作で親指を下にして突きつけた。その中にはカレイドの側近までもがいた。


「おいお前ら本当に俺に仕えてるのか!?」


メイドと執事全員による無言のブーイングにカレイドが悲痛な叫びを漏らしたが、全員にスルーされた。


「「カーレーイードー………。」」


「「お父さーんー………。」」


「なあ父よ………。」


そして青筋を浮かべながらゆらゆらと迫ってくる自分の家族を見てカレイドは、ようやく自分の犯した失態に気づいたのだった。




外へと出ていったクルス達がカレイドの断末魔を聞くことがなかったのは幸か不幸か、それは誰にもわからない。

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