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最強家族のまったりライフ  作者: もちろう
39/58

39話 魔王っぽいこと

「今日の朝食は濃縮麦のパン、禍々鶏のベーコンエッグ、武装人参(ウェポンキャロット)と断食キャベツのコールスロー、爆裂豚(ボルケーノポーク)の冷製スープとなります。どうぞお召し上がりくださいませ。」


「ではいただこうか。」


父さんがそう言ったのを皮切りに皆食事を始めた。俺は最初に冷製スープから手をつけた。スープは爆裂豚《ボルケーノポーク》のブイヨンがよく出ていて深みのある味わいだった。


「ご主人様~、このスープ美味しいですね~。」


ノイントも冷製スープが美味しかったようで夢中で食べている。


『クルス、私はスープの中に入っている肉が食べたいぞ。』


爆裂豚(ボルケーノポーク)だっけ?はい、どうぞ。」


『うむ、美味いな。』


「そうだ。ちょうどいいから伝えておくぞ。話があるから朝食が終わったら俺の仕事部屋に来るように。ここにいない奴らにも後で伝えておいてくれ。」


朝食を食べていると父さんが唐突に切り出した。

仕事部屋って、あの魔王が出てきそうな場所のことかな?


「あの、カレイド様。」


「なんだ?」


「それは私達メイドや執事全員ということでしょうか?」


「ああそうだ。全員に伝えておいてくれ。」


「畏まりました。」


控えていたメイドは父さんに確認をとるとすぐに元の位置に戻った。


「お父さん、話って何なの?」


「それは後でな。」


「ぶぅ。」


レレナ姉さんは話の内容が気になるようだが、はぐらかされたことで不満そうに顔を背けた。


「カレイド、別にここで言ってもいいんじゃないの?」


「いや、俺も一応魔王なんだから、魔王っぽく玉座に座って配下に伝えた方がいいと思ってさ。」


「そんなくだらない理由だったの………。」


母さんは父さんが皆を集める理由を聞いて呆れていた。


「んんっ。くだらないかどうかはともかく………そういうわけだから朝食を食べ終わったら俺の仕事部屋に来いよ。」


そう言うと父さんはあっという間に完食し、食堂を出ていった。母さん達も父さんが出ていった後、すぐに完食してしまった。

俺も早めに食べ終わった方がいいのかな?


「そんなに焦らなくても大丈夫よ。朝食後っていっても執事やメイドが朝食を食べる時間も設けてあるはずだし。私達はもう行くけど遅れてもカレイドだって怒らないでしょうから、クルス君はクルス君のペースで食べなさい。」


皆完食してしまったことで慌てている俺を見て、レスティアお母さんが優しく言ってくれた。


「ありがとうレスティアお母さん。」


「いいのよ。………もしこんなことでカレイドが可愛いクルス君を怒りでもしたら私達で袋叩きにして締め上げてやる。」


俺が安心したようにお礼を言うと、レスティアお母さんは笑顔の裏で何か決意したようでぶつぶつと呟いていた。


「クルス、また後でね………。」


「待ってるからねクルス!」


「先に行っているぞクルス。」


「うん。またね、ルーナ姉さん、レレナ姉さん、兄さん。」


皆が出ていき、自分のペースで食べようと思っていると、控えていたメイドが近づいてきた。


「あの………クルス坊っちゃま。皆様がいなくなったようなので、私達も朝食をご一緒してもよろしいでしょうか?」


近づいてきたメイドは遠慮がちにそう聞いてきた。


「うん!勿論いいよ!」


断る理由なんてないのですぐさま承諾する。


「ありがとうございます!それでは朝食を持ってまいります!」


すると、聞いてきたメイドも控えていた他のメイドや執事達も嬉しそうに朝食を取りに行った。数分すると朝食を取りに行ったメイド達が戻ってきて各々席に着いて食べ始めた。

あれ?増えてる?まあいいか。あっ、シェーラだ。こっち見た!うわっ、すごいスピードで俺の隣の席に座った!めちゃくちゃ笑顔でこっち見てくる。


「それにしてもカレイド様が自ら全員を集めて伝えることって何でしょうね?」


シェーラの行動に驚いていると、メイドのアウルが父さんが言ったことについて気になるようでメイド達に問いかけていた。


「アウル、何のこと?」


食堂に居らず聞いていなかったメイドの一人がアウルに聞いた。


「この際だからここにいる人達に伝えておきますね。カレイド様からの言伝てです。朝食が終わったら話があるのでカレイド様の執務室に集まるようにとのことです。ですので朝食が終わった後は仕事より先にカレイド様の執務室へ行くようにお願いします。」


「「「「「はい。」」」」」


「「「「「畏まりました。」」」」」


アウルが食堂にいなかった面々へ父さんの言ったことを伝えると、皆揃って了承した。このような何気ない所作からもこの家のメイドや執事がどれだけ洗練されているかがわかるというものだ。


「それで、話に戻りますけどカレイド様が全員を集める理由、何だと思いますか?」


「うーん、前に集められたときは確か、バカな国が戦争を吹っ掛けてきたから誰が蹂躙しに行くかっていう内容でしたよね?」


「ブッ!」


アウル達の話に耳を傾けてたのだが、あまりに物騒な内容にお茶を吹いてしまった。


「坊っちゃま!?大丈夫ですか?」


「う、うん。ごめん、大丈夫。」


シェーラが心配して俺を介抱してくれる。

どう戦うかじゃなくて誰が蹂躙(・・)しに行くかって………。戦いにすらならないんだ。それに"誰が"だからおそらく一人で蹂躙しに行ったんだよね。恐ろしい恐ろしい………。


「あのときはクジで決めたのだったな。」


執事の人が当時を思い出しながら語る。

そんな大事なことをクジで決めないでよ………。


「それでルーナお嬢様が行くことになったんでしたっけ?」


「ええ。でも面倒くさいからって私達に押し付けようとしてたわね。」


ルーナ姉さん…………いやなんでもない。


「その前はお嬢様が生まれる前でしたね。カレイド様が自らこれまでのメイド、執事としての仕事ぶりの評価を一人一人にしていくという内容でしたね。」


なんだ、平和な内容もあるんだ。


「あの頃のシェーラは仕事も真面目に取り組んでいて、カレイド様からの評価も高かったのにね。」


シェーラに真面目な時代があったとは!

その頃のシェーラを思い出しているのか全員が遠い目になった。


「なんですか!?その今はダメダメみたいな言い方は!」


「いや、実際そうでしょう。貴女が仕事をサボった分、誰が代わりにやっていると思ってるんですか?」


「ギクッ。」


メイド達はよっぽど鬱憤が溜まっているのかここぞとばかりにシェーラを責め立てた。シェーラは自分の不利を悟ってか、助けを求めるように俺の方を見た。


「シェーラ、お仕事はしっかりやろ?ね?」


だが俺も心を鬼にしてシェーラを叱る。3歳児が大人の女性を叱る構図はどうなんだと思うが今は気にしない。


「うっ。で、ですが!それでは坊っちゃまといる時間が少なくなってしまいます!」


「そこまで俺と一緒にいようと思ってくれて嬉しいよ。」


「坊っちゃま………。」


「でも俺は、仕事をサボってコソコソと会いに来るシェーラよりも仕事をきっちりこなして堂々と会いに来るシェーラの方が好きだな。この前の、徹夜で屋敷全体を箒一本で掃除し終わったときのシェーラなんか、やりきった感じが出ててものすごくかっこよかったよ。」


「ううっ、坊っちゃま………。」


「だからシェーラには、仕事をきっちりこなして会いに来てくれる、俺の好きなシェーラでいて欲しいな。」


「う゛わ゛ーん!ごめ゛んな゛ざい゛坊っぢゃま゛ーーー!」


俺がそう締めくくると、シェーラは号泣して俺に抱き着いてきた。俺は泣いているシェーラを宥めながら周りを見回してみると、ハンカチを目に当ててもらい泣きしている執事や同僚のメイドから借りたハンカチで鼻をかんでしまっているメイドや、涙ぐみながら微笑ましそうにシェーラと俺を眺めているメイドと、まあ色々すごいことになっていた。


「ご主人様がまたやっちゃいましたね~。」


ノイントにもこの光景を作り出したことでからかわれた。

またって何さ………。


「ありがとうございます坊っちゃま。私達ではシェーラを反省させることは出来なかったでしょう。」


そんな中、俺達を微笑ましそうに眺めていたメイドがお礼を言ってきた。


「気にしないで。シェーラが真面目に働いてくれるのは俺も嬉しいから。あっ、もう皆朝食は食べ終わってたんだね。じゃあ父さんの仕事部屋に行かないとね。」


「そうですね。ですがシェーラが落ち着くまでは………。」


「えへへー。坊っちゃまー。」


「………大丈夫そうだね。シェーラ、今から父さんの仕事部屋に行くよ。」


「えへへー、了解でーす。」


シェーラは泣き止んだ途端、ゆるっゆるの笑顔になり俺の言ったことに素直に応じた。


「………ええと、だから離してもらえると嬉しいんだけど。」


「嫌でーす。カレイド様の執務室までは私が坊っちゃまを連れてきまーす。」


だがいつまでたっても俺を離さず、俺を抱き上げて食堂を出てしまった。その様子を数人のメイド達がハンカチを噛みしめ、先ほどとはまた別の意味で涙を流しながら眺めていた。

食堂を出るとメイドや執事達と一緒にゾロゾロと父さんの仕事部屋に向かう。

俺は歩いてないけど………。

どうせ下ろすよう暴れても、シェーラ(化け物)に敵うわけがないので既に俺は諦めていた。ちなみにノイントは歩くよりも浮いて移動する方が楽だそうで実体化を解いていた。


「それにしてもシェーラとクルス坊っちゃまって、こうして見ると瞳の色以外では本当に親子にしか見えないわね~。」


父さんの仕事部屋に向かう途中、シェーラの隣に来たメイドがしみじみと呟いた。


「やっぱりそう見えますよね!そうですよね!うふふ、坊っちゃまと親子………。」


シェーラはその言葉が琴線に触れたのかどこか遠いところにトリップしてしまった。

確かに俺とシェーラの髪色は同じプラチナブロンドで、どちらも肌は白いので知らない人が見ればほとんどの人が俺達を親子だと思うだろう。


「ふふふ、坊っちゃま………親子…………坊っちゃま…………よしっ!坊っちゃま、本当に親子になりましょう!」


「なんでそうなるの!?」


「私と坊っちゃまのこの髪色!これはもう親子になれと神が定めた運命なのです!」


あー、またシェーラの暴走が始まった………。神が定めた運命ってことはイリス様が決めたことになるよ?………いや、あの駄女神ならむしろあり得るか。


『マスター、さらっと主神を貶さないで下さい………。』


だって事実だし………。ティオも実は思ってるんじゃないの?


『………。』


認めちゃうの!?


「あっ、カレイド様の執務室が近づいてきましたよ。」


「本当だ。シェーラ、着いたから下ろして。」


「うー、私の至福の時間がー。」


シェーラに下ろすように言うと、名残惜しそうにしながらも渋々下ろしてくれた。

これ、ノックとかした方がいいのかな?


コンコンコン


「誰だ?」


俺がノックをすると中から父さんの声が聞こえた。


「クルスだよ。父さん、入ってもいい?あとメイド達もいるけど。」


「そうか、入れ。」


ドアを開けると既にほとんどのメイド達が揃っていた。前に来たときと変わらずこの部屋はRPGで勇者が攻めてきそうなイメージが浮かぶ。父さんは部屋に入って真正面にある玉座に座っており、その隣には初老の文官の服を着た側近の人が立っている。この部屋の雰囲気に合わせてなのか、父さんがいつもより威圧的に感じる。母さん達はと周りを探すと、メイド達の最前列に立っていた。母さん達は俺が入ってくるとこちらに手を振ってくれた。


「おお、これはまた結構な大所帯で来たんだな。というか、なんでクルス以外はそんな泣き晴らしたような顔をしているんだ?」


父さんは一緒に部屋に入ってきたメイドと執事の人数に驚き、俺以外の全員に泣き跡がついていることに首をかしげた。メイド達はそのことに今さらながら気付き、バッと顔を逸らした。その顔には少し朱が差していた。


「まあいい。それより、随分と遅かったな、クルス。何をしていたんだ?」


「ご、ごめんなさい!朝食をゆっくり食べてたら遅くなっちゃって………。」


俺は父さんに怒られると思い、咄嗟に謝って理由を尻すぼみになりながら答えた。すると、俺の謝罪を聞いた母さん達がピクリと震えた。


「………カレイド?あんだけクルス君は自分のペースで食べているから遅くなっても仕方がないって言ったわよね………?」


レスティアお母さん、俺に言ったこと、父さんにも言ってくれたんだ。


「い、いや別に怒ってるわけじゃないぞ?ただ少し遅いなと思っただけで………。」


父さんはレスティアお母さんの怒気にあてられ、しどろもどろになりながら答える。


「ねえカレイド。クルスはまだ3歳なのよ?食事も人一倍苦労して食べているのよ?いつも頑張って食べているのをあなたも知っているでしょ?そんなクルスの頑張りを遅いと切って捨てるわけ………?」


「べ、別にそういうわけで言ったんじゃ………。」


だがその答えが今度は母さんの逆鱗に触れたようで母さんにも責められる。


「お父さん、最低………。」


「クルスだって遅れないように必死に食べてたのに!」


「父よ、先ほどの発言は兄としていただけないぞ。」


「グフッ!」


そして自分の子供達からの連続コンボにより遂に父さんはノックアウトしてしまった。




<hr>







「す、すまなかったクルス………。」


あの後、母さん達によって徹底的に絞られた父さんは最初の威厳はどこへやら、やつれた雰囲気を漂わせながら俺に謝ってきた。


「別に大丈夫だよ父さん。俺が遅れたのが悪いんだし。」


「そう言ってもらえるとありがたい………。」


俺が許したことで母さん達の父さんを見る目からはいくらか険が消えた。


「そ、それで、話がだいぶ逸れたというか話にすら入ってなかったが、これで全員集まったようだな。」


父さんは仕切り直すようにこの場の全員に確認をとる。


「誰のせいで逸れたと思ってるのよ。」


「うぐっ、それは、すまなかった………。」


だが母さんの痛烈な一言で仕切り直した場はまたもや崩れる。だがなんとか持ちこたえ本題を切り出す。


「………えーとそれで本題だが………今回、西の軍事国家ダンコーツで勇者召喚が行われた。」

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