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最強家族のまったりライフ  作者: もちろう
38/58

38話 クルス帰還

「ポップコーンって他にどんな味があるのネ?」


「結構ありますよ。ブラックペッパー味だったりカレー味だったり、チョコレートなんかもありますね。」


「色々あるのネ。今度地球に行ったときに食べてみるのネ。」


「そんな簡単に地球って行けるものなんですか?」


「枢神以上なら行けないこともないネ。クルスも地球行ってみるネ?」


「うーん、特に前世に未練はないですけど、行けるなら行きたいですね━━━」


ガチャッ


リョウセン様とそんな話をしていると扉が開く音がした。


「うんうん、実に有意義な時間だったわ。」


「つ、疲れた~。」


ラセア様とノイントの声だ。上機嫌なラセア様とは対照的にノイントの声は疲れ果てていた。


「あら?何かしらこの匂い。いい匂いね~。」


「ご、ご主人様~!」


二人がリビングに顔を出すと、ラセア様はポップコーンの匂いを嗅ぎ付け、ノイントはソファに座っている俺を見つけると、すかさず俺のところまで走ってきて抱きついた。


「わっ!ど、どうしたのノイント?」


「ラセア様がひどいんですよ~!最初は話を聞くだけって言ってたのに、いつの間にか魔力切れまで魔法を撃たせられたり、神獣と戦わされたりしたんですよ~! 」


神獣と戦ったの!?ノイント、たくましいな。

ノイントは俺がわけを聞くと涙目でそう語った。


「ラセアが最初に言ったことを鵜呑みにしちゃいけないのネ。」


「それは………うん。お気の毒に。ほら、ジュースでも飲みなよ。」


俺はノイントを落ち着かせるために、先ほどまで飲んでいたリンゴジュースを差し出す。


「ううっ、ありがとうございます~。んくっ、んくっ、ん~?これ、もしかしてご主人様が飲んでました~?」


「え?うん。」


俺がそう答えるとノイントは悪戯を思い付いたかのようにニンマリと笑顔を浮かべた。


「んふふふっ、てことはボク、ご主人様と間接キスしちゃいましたかね~?」


「そ、そんなわけないでしょっ!」


ノイントに言われたことで途端に意識してしまい、顔が熱くなる。ノイントは俺のそんな反応を見て楽しそうに笑う。


「ふふふっ、ご主人様はからかい甲斐がありますね~。」


「お?ノイントもそう思うネ?」


「リョウセン様もですか~?」


「うん。さっきなんか私が果汁ジュースを毒━━━」


「わー!やめてくださーい!」


先ほどのリョウセン様にからかわれた記憶が甦ってきて、また恥ずかしくなる。ノイントとリョウセン様は俺の必死な姿を見て可笑しそうに笑った。


「なんか楽しそうね。」


「全然楽しくないですっ!」


近づいてきたラセア様に即座に反論する。


「匂いの出所はこれね。リョウセン、これ何?」


「クルスが作ったネ。地球のお菓子でポップコーンっていうネ。」


「そうなのね。え?でもなんでクルス………が地球のお菓子なんて作れるの?」


ラセア様は俺が異世界のお菓子を知ってることに疑問を持ったようだ。


「クルスは転生者ネ。イリスに転生してもらったらしいネ。それとクルスは男ネ。」


「ああ、転生者なら納得だわ。ていうか男!?………会ったとき下半身に違和感があったけど、そう、男なのね。」


ラセア様は俺が転生者だということよりも性別が男だということに驚いていた。


「なんでリョウセン様もラセア様も人の下半身を見てるんですかっ!」


「だから神の力でそういう雰囲気がわかるだけネ。見てはないって何度言えばわかるのネ。」


リョウセン様大きさまで知ってたよね!?


「そんなことより、そのポップコーン、私も食べたいわ。」


「ご主人様~ボクも~。」


「そんなことって…………はあ、どうぞ好きなだけ食べてください。」


「やったわ!それじゃあいただきまーす。んん!これ美味しいわ!いくらでも食べれそう。」


「ボクも~。ん~!しょっぱくて美味しいです~。」


「それは良かったです。」


二人もポップコーンを気に入ったのか次々とポップコーンへ手が伸びていき、あっという間に無くなってしまった。


「ラセア!お前全部食べたのネ!」


「いいじゃない。リョウセンはずっと食べてたんだから。」


「クルスは私のために作ってくれたのネ!」


「ま、まあまあ。ポップコーンなんていくらでも作れるんですからそんな喧嘩しないでください。」


ギャーギャーと騒ぐ二人をなだめる。


「本当ネ?また作るネ?」


「はい。勿論です。」


「約束ネ!」


「クルス………君よね?今度私にも地球のお菓子を作ってくれない?」


「あっ!ラセアずるいのネ!私にも地球のお菓子作るのネ!」


………そんなにお菓子づくりってやったことないんだけどなあ。


「そうだ。前にノイントが料理してみたいって言ってたのでノイントに作ってもらうのはどうでしょう?」


「え~?ボクですか~?確かにやってみたいですけど~。」


「なんでノイントなのネ?ノイントは転生者じゃないネ。」


「ええと、イリス様からもらったスキルで神の導き手(ガイドマスター)のティオっていうのがいるんですけど、ティオが地球の知識を持っているようなので、ティオが教えればノイントもできると思うんです。」


「そういうことネ。なら今度会うときにノイントに何か作ってもらうのネ。」


「なんか勝手に決まっちゃったんですけど~。」


ごめん、ノイント。


「ラセア達がポップコーン食べちゃったからすることがなくなったのネ。暇ネ。」


「そんなこと私に言われてもしょうがないわよ。」


コンコンコン


全員が手持ち無沙汰になったところで部屋にノック音が響いた。


「ラセアー、いるー?ちょっと聞きたいことがあるんだけどー。」


「やばっ、イリスネ!」


「げっ、イリス様っ!?」


「………クルス君、主神に"げっ"はないでしょう。」


ラセア様は俺のイリス様に対しての反応に呆れているようだ。

そんなこと言われても見つかったら何されるかわからないんだもん。


「あわわ、どうしましょう~。」


「とりあえず、二人とも地上に帰すネ。多分イリスのことだから地上に帰ったと思わずに神界を探し続けるはずネ。それに1日経ったらもう怒りも治まってると思うネ。ラセア、その後私も他の空間に逃げるから、くれぐれも私達のことを気取られないようにするネ。」


「まったく、しょうがないわね。あ、クルス君。今回はあまり話せなかったけど、また会ったときはお話しましょうね。」


「はい。ありがとうございました。リョウセン様もありがとうございました。一緒にいられて楽しかったです。また中華料理食べさせてください。」


ちょっと図々しかったかな?


「いつでも食べにくるネ。お前達なら歓迎するネ。私も、お前といられて楽しかったのネ。」


「ラセアー。入るわよー。」


「そろそろ時間がないネ。転送するネ。」


「ありがとうございました。」


「ありがとうございました~。」


俺に続いてノイントもお礼を言う。その直後、俺の視界は真っ白に染まった。










「んぅ……。」


「あら、クルス起きたのね。」


「おはよう、母さん………。」


目が覚めると隣にはちょうど起きたばかりの母さんがいた。どうやら無事に戻ってこれたようだ。

そうだった………。昨日は眠くて自分の部屋に戻らないで母さんのところで寝ちゃったんだった。


「まだ眠そうね。朝食になったら起こすから、それまで寝てていいわよ。」


「いや、起きるよ………。」


起き抜けで眠気が残るが気合いで起き上がる。


「そう?なら顔洗ってらっしゃい。」


「うん。」


俺はベッドを抜け、覚束ない足取りでフラフラと洗面台へ向かう。


「大丈夫かしら………?」


そんな俺を見て母さんは心配そうに呟いていた。


洗面台に行き、台に乗ってパシャパシャと顔を洗う。


「………ふぅ。」


やっと目が覚めた。俺って吸血鬼(ヴァンパイア)とか夜が得意そうな種族じゃないのに朝が苦手なんだよなあ。低血圧なのかな?


「………お?」


『む?おおクルス。本当に神界から戻っていたんだな。』


母さんのいるベッドまで戻ろうとしていると、ちょうど部屋に入ってきたカリスとばったり出会った。


「うん。そうだカリス。俺が神界に行ってるってことは母さん達にはバレないようにしておいて。」


『何故そんなことを………ああ、クルスが転生者だと気づかれる可能性があるのか。』


「そういうこと。」


『うむ、心得た。』


カリスは俺の懸念に気がつき快く了承してくれた。


『そういえば聞きたかったのだが、神界とはどのようなところなのだ?』


「んー、別に何もないよ。」


カリスも神のいる場所は気になるのか、母さんのところへ歩きながら興味津々に聞いてくる。だが俺が見たままの感想を言うと拍子抜けたような表情になった。


『何も、ないのか?』


「うん、ただ白い空間がずっと続いているだけ。あ、でも神様の家があったから何もないとは言えないのかな?」


『………随分と面妖な場所に居られるのだな。』


「なんであんなところにいるんだろうね。今度聞いてみようかな。」


そんな話をしているうちにベッドまで戻ってきていた。


「ちゃんと目は覚めたようね。それと、朝食の準備が整ったそうよ。着替えたら食堂に行きましょ。」


「うん。でも、服は自分の部屋にあるから戻って着替えてくるね。」


「今執事に取りに行かせたから大丈夫よ。」


「そうなの、ありがとう。」


それから少し待っていると執事がやって来た。


「失礼致します。坊っちゃまのお召し物を持って参りました。」


「ありがとう。」


俺が着替えの服を持ってきた執事に服を受け取る際に笑顔でお礼を言うとニコリと笑みを返してきた。

クソッ!イケメンスマイルが眩しーー!


「おのれイケメン………!」


「ありがとうございます。」


「うぐっ。」


漏れ出た心の声は執事に綺麗に受け流され、敢えなく撃沈した。


「それでは、失礼致します。」


颯爽と退室していく執事を、ひとしきり恨めしそうに見つめたあと、俺はいそいそと着替え始めた。


「クルスも着替え終わったわね。じゃあ、食堂に行きましょうか。」


着替え終わると俺の着替えを待っていた母さんと一緒に食堂へと向かう。


「あっ!クルス!セーラお母さん!」


「クルス、セーラお母さん、おはよう………。」


食堂へ向かっていると途中で姉さん達に会った。姉さん達は俺を見つけると一目散に走ってきて俺に抱き着いてきた。

姉さん達今日は早起きだな、珍しい。


「レレナ姉さん、ルーナ姉さん、おはよう!」


「奇遇ね、レレナちゃん、ルーナちゃん、おはよう。」


「クルス!今日暇?」


「え?うん。」


暇って、3歳児だからいつも暇なんだけどね。


「じゃあ今日は外で遊びましょ!」


「うん、いいよ。」


姉さん達と遊ぶ約束をしたあとは、適当に喋りながら食堂まで歩いていく。食堂の扉が見えてくると、扉の近くにいた執事が扉を開けてくれた。中に入るとカルエナ兄さんだけが座っていた。


「兄さん、おはよう!」


「うむ、おはよう。今日も元気だな。」


俺が兄さんに挨拶をすると兄さんも挨拶を返してくれた。それからしばらく待っていると、父さんとレスティアお母さんが朝食を運ぶメイド達と一緒に入ってきた。


「遅いわよ、カレイド、レスティア。」


「悪かった悪かった。」


「まだ朝食がテーブルに並んでないからセーフよセーフ。」


母さんが遅れてきた二人に不満げにそう言うと、謝る父さんとは逆にレスティアお母さんは屁理屈を述べていた。


「母さん、素直に謝んなきゃダメだよ。」


「母さん、大人げないわ………。」


「そうだぞ母よ。」


「うっ………悪かったわよ。」


だが、自分の子供達からの容赦ないダメ出しをくらってあっさりと折れた。


「ははははっ!すっかり子供の尻に敷かれてるな、レスティいててててててて!」


それを笑った父さんはレスティアお母さんに足をグリグリと踏んづけられ、かなり痛がっていた。

朝から賑やかなことで。



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