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最強家族のまったりライフ  作者: もちろう
33/58

33話 お酒の材料集め

遅くなりました。

「母さん。それ、お酒の材料じゃなかったの?」


「あっ!」


俺が上半身が消失した魔物、神金羊(オリハルコンシープ)を指差しながら言うと、母さんはしまったというような顔をした。


「え、ええとたしか材料になる"神金羊オリハルコンシープの光玉"の場所は…………。」


母さんは慌ててお酒のレシピが書かれた手帳を取り出し読み進めていき、ホッと胸を撫で下ろした。


「良かったわあ。光玉の場所は尻尾の光っているところみたいだから大丈夫そうね。」


神金羊(オリハルコンシープ)の尻尾の先端を見てみると、本体が死んでもなお光り続けていた。


「あれが光玉なの?」


「そうみたいね。ちょっと取ってみましょうか。」


母さんは神金羊(オリハルコンシープ)に近づくと無造作に光玉の部分を掴み、思い切り引っ張った。


ブチッ!


雑っ!というか大丈夫なの!?ブチッていったよ!


「これが光玉ね。なんだかガラス玉みたいね。」


俺の心配を知ってか知らずか母さんは俺のところまで戻ってきて、俺に光玉を見せてきた。大きさは20センチくらいだろうか。かなり大きい。これが本当にお酒の材料になるのか?


「そうだクルス。さっき聞きそびれちゃったけど、その"黒盾球"?ってどんなことができるの?」


母さんが光玉をマジックバックに入れながら聞いてきた。


「名前のとおり形を変えて盾の役割をしてくれるよ。」


「この小さな球がねぇ………。」


母さんがそう言いながら今も俺の周りをクルクルと回っている"黒盾球"に触ろうとすると、"黒盾球"は攻撃だと思ったのか主である俺を守るように長方形になって俺と母さんの間に壁をつくった。


「驚いたわ………。こんなことができるのね!」


母さんは"黒盾球"の変化を見て驚いているようだ。


「ちょっとどのくらいの固さか試してみるわね!」


「えっ、ちょっ!」


そう言うや否や母さんは俺の静止も聞かずに腕を振りかぶり、目にも止まらない速さで黒盾球を殴った。


パリーン!


黒盾球はその威力に耐えきれず、ガラスのように呆気なく割れ、土へと戻ってしまった。

母さんはその様子を見て、少し考えてから話しだした。


「………うーん、発想自体は悪くはないわね。でもこの魔法は術式が繊細過ぎるわ。範囲が広い攻撃とかなら十分だと思うけど、一点集中型の攻撃だとすぐに破られちゃうわね。守る範囲を全部じゃなくて、攻撃の範囲だけに絞れればその分強度も上がって破られにくくなると思うわよ。」


母さんは俺にアドバイスをしてくれたようだ。たしかに"黒盾球"は守るときにいつも俺を覆うように守るからその分全体的な防御力は下がってたわけか。気づかなかった。


「ありがとう母さん、試してみるね。………でも、やる前に一言言ってほしかったな。」


正直言ってすごい怖かった。だって化け物みたいな強さの人が盾越しとはいえいきなり殴ってくるんだよ。心臓バックバクだよ!


「ご、ごめんなさいね。見たことない魔法だったからつい試してみたくなっちゃったの。」


「うん。次から気をつけてね。」


次が来ないで欲しいけど………。


ガサガサッ


「ギギャギャッ!」


「あら?」


母さんと話してると後ろから茂みを掻き分ける音と鳴き声が聞こえたので振り返ってみると、そこには緑色の肌に大きく湾曲した鷲鼻の醜悪な顔をした小人が神金羊(オリハルコンシープ)を見つけて十数匹の仲間と騒いでいた。


「ゴブリン?」


「知ってるのね。そうよ、他種族のメスを拐って繁殖する、謂わば女の敵よ。」


俺が母さんに確認をとると母さんは鷹揚に頷いて簡単な説明をしてくれた。どこの世界でもゴブリンはゴブリンなようだ。

ティオ、ゴブリンのランクってどのくらいなの?


『ゴブリンのランクは最低ランクのFです。農民でも勝てます。』


「クルス、戦ってみる?」


ゴブリンが最弱なんだから外の世界の強さの基準を知るためにもいいかもしれない。


「うん、やってみる。」


「ご主人様~ボクも~。」


ノイントも戦ってみたいようだ。


「じゃあ一緒に戦おうか。」


「はいっ!」


「カリスはどうする?」


『私は遠慮する。ゴブリンの肉など不味いだけだ。』


「ああそう………。」


カリスはゴブリンが相手ということで乗り気ではなかった。

あれ?従魔って主人を守るものじゃないの?肉の味で決めるものなの?


「ギギャ?ギギャーッ!」


そうこうしているうちにゴブリンの方も俺達に気がついたようだ。ゴブリンは俺達を欲望に満ちた瞳で舐め回すようにして観察している。

ん?俺達?母さんやノイントはともかくなんで俺まで?


「ご主人様は可愛いですから~。女の子って言っても誰でも信じると思いますよ~。」


ノイントが俺が思ったことに答えてくれた。

あり得ないでしょ。俺のどこが女なのさ。


『マスター、後で鏡で自分の顔を見てみてください。』


ティオまで!?………まあそれは後で見るとしよう。それより今は目の前のゴブリンだ。

これ以上母さんやノイントを下衆な視線に晒させるわけにはいかない。


「まあいいや。ノイント、やるよ!」


「はい~!」


自分に身体強化と加速、上位スキルの超越化と瞬速、そして魔力操作での身体強化をかけてから俺とノイントは勢いよくゴブリンの群れに突っ込んでいった。俺は武器を持っていないので、猿の魔物の首を切り落とした時のように両腕に魔力を纏わせ魔力操作で刃のように鋭くする。レベルが上がったからなのか魔法を習ったからなのかわからないが以前より魔力の扱いが向上し、目で見える程の密度で魔力の刃を形成することができた。


「はっ!」


そのままゴブリンのうちの一匹に肉薄して魔力を纏わせた右腕を袈裟懸けに振るう。魔力の刃はほとんど抵抗もなくゴブリンの肩口へと吸い込まれ、右腕を振り切ると目の前のゴブリンの上半身が少し間を置いて斜めにずり落ちた。

袈裟懸けに切ったのでゴブリンの内臓やら何やらが丸見えである。ホラー映画も真っ青なグロさだ。普通の人なら悲鳴をあげて吐き気を催すところなのだが、俺は何も感じなかった。

………称号の"魔王の息子"の効果もあるけどそれ以外にも赤ちゃんの頃から黒ずくめさん達の悲惨な末路を間近で見てきたからだよな~。ある時は木っ端微塵にされ、またある時は生きながら内臓をかき回される拷問をされ、またまたある時は姉さん達に吸血という名のおやつにされ………そんなことをされてるのに未だにめげずに黒ずくめさん達は家に来るんだよなあ。本当にどこの誰なんだろう?

そんな取りとめのない考えをしている間、ゴブリン達は仲間がいきなりやられた衝撃から立ち直っていないようで考え事をしていて隙だらけな俺に攻撃をしてくることはなかった。逆にゴブリン達が衝撃から立ち直っていない隙にノイントが突っ込んでいった。


「|光球(ライト)改造(エディト)~。」


そんな気の抜けた掛け声と共にノイントの掌に光球が現れた。だがノイントが付け足した単語によって一つしかなかった光球は次々に数を増やしていき、数えきれなくなった頃には辺り一面眩い光に覆われていた。


「……ノイント?」


何をするつもりと聞こうとすると、辺りに広がっていた数えきれない程の光球がいきなりノイントの掌に集まりだした。全ての光球が集まるとそこにはその分だけ輝きを増した光球が一つだけあった。


「よ~し、発射~!」


ノイントが合図をするとその光球は一条の光線となり、物凄い勢いでゴブリンの群れを突き抜けた。


「……お~すごいですね~。」


「ノイント、何あれ?」


光線が突き抜けるとゴブリン達の身体の大部分が灰になっていた。当然ゴブリン達が生き残れるはずもなく、地に伏して動かなくなっていた。

ノイントは自分がやったことなのに他人事のように驚いている。


「え~と~スキル改造で光球を増やして一点に集中させるようにしたらこうなりました~。」


………虫眼鏡みたいな感じかな?光を集中させると熱を持つから、それを魔法でやったのかな?


「虫眼鏡?というのはわかりませんがイメージはあってますよ~。」


「クルスもノイントちゃんもすごいじゃない!」


ノイントに先ほどの魔法について聞いていると母さんが駆け寄ってきて開口一番にそう言った。


「え?俺も?」


俺よりノイント方がすごいと思うんだけど。


「当たり前じゃない。魔力でゴブリンを切り裂くなんてできないわよ!」


あの魔力刃はどうやら普通じゃできないらしい。

まあ魔力操作のスキルでできるようなものだから当たり前か。


「ノイントちゃんも!あれ光魔法よね?光魔法って攻撃魔法がほとんどないはずだけど?」


母さんは光魔法で攻撃する、しかも強力な魔法を使ったことに驚いているようだ。このことについてノイントがスキル改造のことを教えながら話すと驚いたものの納得していた。


「あなた達といると驚くことばっかりね。」



「そうかな?それより次の材料は?」


「え、ええそうね。次は━━」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



「…………ねえ、本当にあれ?間違いじゃない?間違いだよね?」


「………いいえ、間違いないわ。大きさも書いてあるとおりだし絵も完全に一致してるわ。」


今俺達の目の前にはお酒の材料になる植物があった。その植物は、樹齢百年は越えてそうな大樹にへばりつくように生えており、鮮やかな黄緑色に血を連想させるどす黒い赤色の血管のようなものが何本も走り、それがときどき脈打っているという、見れば見るほど植物とはかけ離れている形をした植物があった。


「これが寄生梅(パラサイトプラム)なんですね~………。」


そう、これこそがお酒の材料になるという寄生梅(パラサイトプラム)なのだ。正直近寄りたくない。


『なんだ、寄生梅(パラサイトプラム)ではないか。』


「カリスは知ってるの?」


『ああ、見た目はあれだが味は保証するぞ。』


「………そうなんだ。」


あれかな?ゲテモノ料理的な感じなのかな?


「ま、まあとにかく見つかったんだしよしとしましょう。」


母さんは早くこの場を離れたいのか、足早に寄生梅(パラサイトプラム)に近づき強引に大樹から引き剥がした。


ブチュブチュブチュッ!


「うえ~嫌な音ですね~。」


ノイントは寄生梅(パラサイトプラム)を引き剥がしたときの音に顔をしかめた。たしかにあれは聞いてて気持ちの良い音ではない。それは間近で聞いていた母さんも同じだったようで盛大に顔をしかめながら寄生梅(パラサイトプラム)をマジックバッグに仕舞っていた。


「もうここに用はないわね。はぁーなんかどっと疲れたわ。早く次に行きましょ。」


余程寄生梅(パラサイトプラム)の形が精神的に堪えたのか、とても疲れた顔をしていた。





そこからの材料集めは特に問題もなく順調に進んでいった。問題といえば影竜(シャドウドラゴン)を見つけた瞬間に母さんがその心臓だけを持ってかえってくる荒業をみせたり、蹂躙檎(トランプルアップル)が刃物がびっしりとついたその身体でゴブリン達をその名のとおりに蹂躙したりしていたことくらいだ。


「ふう、これで全部揃ったわね」


「疲れた~」


「ふふ、お疲れ様」


空を見上げて太陽を見てみるともう日が落ちかけていた。


「もうこんな時間ね。早く帰りましょうか」


「うん」


あーここから家まで歩くのかー。レベルも上がって身体能力もあがっているから辛いわけじゃないんだけど、面倒くさいなー。


『む?ならば私に乗るか?』


え?いいの?


『ああ、別に構わんぞ』


そう言うとカリスは俺の肩から地面に降りて俺から少し離れたところで立ち止まると、カリスの身体がいきなり光に包まれた。光が収まるとそこには5メートルほどの大きさになったカリスがこちらを見下ろしていた。


『ほらクルス、乗れ』


「う、うん」


カリスの身体の変化に驚いてまじまじと見つめていると、俺が乗りやすいように身体を屈めてくれた。


「クルス、何してるの?」


念話で話していたため、状況が理解できない母さんが俺に聞いてきた。


「家までカリスが乗せていってくれるんだって。母さんも乗る?」


「あらそうなの。そうね、たまには空の散歩もいいわね」


「ご主人様~ボクも乗っていいんですか~?」


「カリス、母さんとノイントも乗るけど大丈夫?」


『ああ、問題ないぞ』


「じゃあ乗るよ、カリス」


おっほーフワフワだー。そして温かい。ヤバい、これ寝そう。


「うわっ、すごいフカフカですね~」


「ああ~癒されるわ~」


ノイントも母さんもカリスの羽毛の触り心地に大満足のようだ。


『それじゃあ、飛ぶぞ』


カリスは全員が乗ったのを確認すると翼を広げて空へと飛び立った。驚いたのは飛び立つときにほとんど音がしなかったことだ。フクロウみたいな羽の構造なのかな?


「うわあ」


周りを見渡してみると絶景が広がっていた。右を向くと、どこまでも続いていそうな森を赤く染める夕日が俺達を照らしており、俺は思わず目を奪われた。辺りを吹く風も心地良く、俺はこの景色をずっと見ていたくなった。


「綺麗ですね~」


「本当ね~」


ノイントも母さんも同じことを思ったみたいだ。


「ねえカリス」


『なんだ?』


「またこうやって乗せてもらってもいいかな?」


『そんな遠慮しなくてもいつでも乗せてやるぞ。私も誰かを乗せるのなんて初めてで楽しいからな』


「ありがとう!」


俺達は家に着くまでその絶景を心ゆくまで堪能した。

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