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最強家族のまったりライフ  作者: もちろう
19/58

19話 従魔ができました

ズザーーーーーー!


ルーナ姉さんが俺達の前で止まった。

そして引きずられてきた魔物……………じゃなくて父さんも、ルーナ姉さんが止まった所から少し地面を滑って止まった。


この現状についていけず、俺は声を出すことができなかった。それはシェーラもレレナ姉さんも同様のようで、俺達の間にしばらく沈黙が降りることとなった。


「うぅ…………。おいルーナ………。説明しろ」


そんな沈黙の間に引きずられてきた父さんがのそのそと立ち上がり、少し怒気を孕んでルーナ姉さんに問いかけた。

しかしルーナ姉さんはそんな父さんの怒気を意にも介さず、平然と答えた。


「クルスが………魔物以外でも殺せばポイントが手に入るって言ったから、お父さんを連れてきたのよ………」


いや何言ってんの!?いやでもまさか父親を殺せなんて言わないよね?さすがにそんなことあるわけ────


「さあクルス………。今のうちよ………。サクッと()っちゃって………」


────あったよ………。なんかやっちゃうの漢字が違う気がするんだけど!?


「お父さんは強いからポイントも高いはずよ………。そうすれば私が絶対優勝ね………ふふふふ」


だめだ!ルーナ姉さんが暴走してる!優勝のことしか考えてないっ!


「おいルーナっ!それは俺に死ねと言ってるのか!?」


「子供は親の死を乗り越えることで強くなるのよ……」


「何言ってんだ!?今日のお前おかしいぞ!」


「ルーナっ!ねえ大丈夫!?」


「お嬢様!早まらないでください!」


「ふふふ………。みんな何を言ってるのかしら…………?私はいつも通りよ……」


ルーナ姉さんの暴走にみんなてんやわんやだ。

俺もなんか言った方がいいよな。


「ルーナ姉さん!」


「──っ!!」


俺の声にルーナ姉さんはハッと肩を揺らしてこちらを見た。


「確かに魔物以外でもポイントは手に入るとは言ったけど、敵対していないとポイントは手に入らないよ。それに俺は父さんを殺したくもないよ!」


「!?クルス………。ごめんなさい、私どうかしてたわ……」


どうやら正気に戻ったようだ。


「お父さんも、ごめんなさい……」


ルーナ姉さんは自分のしでかしたことを申し訳なく思っているようですぐに父さんに謝った。すると、父さんは安心したようで口元に笑みを浮かべた。


「おう、正気に戻ったようで良かった。いやあそれにしても驚いたぞ!書斎にいて、いきなりルーナが後ろに現れたと思ったら服を掴まれて、そのまま引きずられてきたんだからな」


「うっ………」


本当に何やってんのルーナ姉さん…………。ルーナ姉さんは暴走すると何をするかわからないね。


「そういえばお前らはここで何をしてたんだ?あとさっきからポイントがどうこう言ってたが……」


まあ隠しても仕方ないか。

俺は正直に森には俺の力試しで来たこと、俺の"スキルクリエイト"のこと、行っていたゲームのことを話した。"スキルクリエイト"の話をしたとき、父さんはひどく驚いた様子で聞いていたが最終的には「さすが俺の息子だ」と納得していた。

そして全て話したあと、父さんは何やら考え込んで俺に言った。


「ふむ、強い敵か。よしわかった。少し待ってろ」


そう言うと、姉さん達と同様に一瞬で消えた。この家の人は消えるのが好きなのか?


『いえ、マスターが目で追えていないだけで、本人達にとっては少し急いでる程度でしかないでしょう。ちなみにカレイドは上に行きましたね』


少し急いでる程度って。もうやだこの人外魔境。

ん?上に行った?


『はい』


上って…………空ってこと?


『はい』


いやなんでジャンプしたの?


『いえ、ジャンプではありません。空気を蹴りつけることで推進力が加わり落ちなくなるので飛んだと考えていいでしょう 』


空気を蹴りつけるって、そんなの漫画の世界だけだと思ってたよ………。さすが人外。なんでもありだ。


「結局ゲームはどうなったの?」


不意にゲームのことを思い出したレレナ姉さんがみんなに問いかけた。


「私は3980Pです」


あの青い猿の魔物はSランクだったな。


「私は失格だったわ……」


結局トカゲの魔物はシェーラが倒しちゃったからな。


「私は………お父さんを連れてきて………今多分魔物を探しているから………お父さんの連れてきた魔物次第?」


ルーナ姉さん、なんでそうなる………。


「あ、ずるいっ!」


「そうですよ!ルーナお嬢様、往生際が悪いですよ!」


「うぐっ……仕方ないか……」


「ということはお二人とも失格ということで、私が優勝ですね!」


「「しまった!」」


見事シェーラの口車に乗せられた姉さん達は今更気づいたようで、驚いていた。

…………メイドが仕える人を騙していいの?まあ、今更感がするから言わないけど。


ズドンッ!


いきなり何かが降ってきたような音がしたので驚いて音がした方向を向くと、父さんとピクピクしている白い鳥のようなものが見えた。


「父さんっ!?」


「おうクルス。強い魔物でいいんだよな。だから連れてきたぞ。少しばかり大変だったけどな!」


「え、あ、ありがとう……?」


少し混乱してしまったが、一応お礼は言っといた。そして父さんに急かされるままに、白い鳥の魔物に近づいていった。鷹のような姿で大きさは3メートルくらいだろう。羽を見ると淡く光を放っており、とても幻想的だ。そして何より、羽がふわっふわだ。

俺は全身を駆け巡る衝動に突き動かされ、本来の目的を忘れその魔物の羽毛に飛び付いた。

うああ………なにこれ。ふわふわで暖かくて、すごい気持ちいい。ずっとこうしていたいな……。

羽毛の気持ちよさに心を奪われ殺すのが少し惜しくなってきてしまった。


「お、おいクルス?」


俺の突然の行動に、みんなびっくりしているようだ。


『おい……。お前は何をしているんだ?』


いきなり見知らぬ女性の声が聞こえた。

驚いて辺りを見渡すがここには姉さん達と白い鳥の魔物しかいない。

ということは………。


『そうだ。私だ』


俺がその鳥の魔物を見ると鳥の魔物が再度語りかけてきた。姉さん達には聞こえていないようで、俺の奇行に首を傾げているだけだ。


『それで、お前は何をしているんだ?ああ、これは念話故、答えを念じるだけでいいぞ』


え、何をしてるって……そりゃあ……


『全力でモフってる!』


『モ、モフ………?わからんが、ま、まあいい。それより聞きたいのだが…………私は生き延びられるのだろうか?』


この世界にはモフるという文化はないようだ。残念!


『うーん。俺としてはこんな素晴らしいモフモフを殺したくはないんだけど…………』


『なら私を従魔にしてくれっ!私は長く生きているから色々この世界のことを教えられるし、それなりに強いぞ!絶対役に立つぞ!』


おお!それはいい提案だ。でも従魔ってどうやるの?


『マスターはスキルに"調教"を持っていますよね。それを使ってテイムするのです。魔物側の同意があればスキルがなくてもテイムすることはできますが、スキルを使うことで、ノイントとの契約のようにスキルを共有化することができます』


なるほど。じゃあ早速やってみよう。

俺は白い鳥の魔物から離れ手を翳してスキルを唱えた。


調教(テイム)!」


すると俺と鳥の魔物の間につながりができたのを感じた。


『おめでとうございます。テイムに成功しましたね』


『おお!私は生き延びられるのか!礼を言うぞ』


『俺も殺さずに済んで良かったよ』


念話で鳥の魔物と会話していると、父さんがしびれを切らして俺に話しかけてきた。


「おいクルス。早く止めを刺さないか」


「え、ええと。テイムしちゃった」


「「「「テイムした!!!?」」」」


「う、うん…………。どうしたの?みんな」


「い、いや、お前がテイムしたという事実に驚いているんだ……。テイマーは普通、最初は低級の魔物からテイムしていくんだが……。そいつ、結構高位の魔物だぞ?よくテイムできたな」


「なんか話しかけられてこのままじゃ死んじゃうから従魔にしてくれっ!て言われたからできたんだと思うよ」


「魔物からテイムを…………うむ!さすが俺の息子だ!」


あ、考えるの諦めたっぽい。まあ、とりあえず一件落着かな?






そのあとはもうゲームも終わり、日も傾いてきたため新しく従魔になった鳥の魔物と皆で家路に着いた。




────────────



家に帰ると、父さんは「それじゃあ俺はまだやることがあるから」とすぐに家の中に入っていってしまった。


「そういえばシェーラ、優勝賞品のクルスへのお願いは決めたの?」


ぐっ、思い出さないようにしていたのに………。


「ええ!ズバリ!私の部屋で坊っちゃまとの二人きりでお泊まりです!」


「二人きり!?」


「くっ……うらやましい……」


またシェーラの部屋に行けるんだ。これは嬉しいかも。


「クルス、テイムした魔物の名前ってなんていうの?」


そういえば聞いてなかった。とりあえずさっきみたいに念じれば答えてくれるかな?


『ねえねえ、名前ってあるの?』


『いや、特にないな。好きに決めていいぞ』


『わかった』


「名前はないんだって。俺達で決めていいって言ってたから一緒に考えてくれないかな?」


俺がそう提案すると、三人ともウンウンと唸りながら真剣に考えてくれた。


「ねえクルス、ひとつ聞きたいんだけどその魔物って女の子なの?」


声は女性っぽいけどどうなんだろう……。


『女の子……なの?』


『性別的にはそうだな』


「女の子らしいよ」


「じゃあ女の子っぽい名前にしないとね」


レレナ姉さんはそう言って改めて考え始めたが、ルーナ姉さんは女だと聞いた瞬間、愕然とした表情になった。


「ルーナ姉さん、どうしたの?」


「てっきり男だと思って……鳥丸君にしようかと…………」


えぇ……その名前は……どうなんだ?


『私が男であってもさすがにその名前は嫌だな……』


だよね……。ルーナ姉さんのネーミングセンスが今のでわかっちゃった……。


「はい!思い付きました!」


「どうぞシェーラ」


俺が促すとシェーラは自信満々に発表した。


「はい、坊っちゃまの奴隷(クルスズスレイブ)というのはどうでし────」


「却下!」


そんな名前誰が喜ぶか!

シェーラはまさか却下されるとは夢にも思っていなかったようで、目を見開いて驚いている。

いやなんでその名前にそんな自信を持てたのか不思議でしょうがないよ。


「私も思い付いたわ!」


レレナ姉さんならいい名前を考えてくれてそう!


「フェニックスよ!」


おお!地球の神話にもでてくるしかっこいいからいいんじゃない?


『どう?』


『………ううむ、別に先ほどのように酷くはないのだが、不死鳥(フェニックス)という種族がいるのでな。そやつらの名を使うのはどうにも気が引けるな……いや好きに決めろと言った手前それでも構わないが……』


フェニックスって魔物がいるのなら仕方ない。


姉さんにこのことを伝えると渋々ながら引き下がってくれた。

うーん、こうなると俺も考えないとな…………あ、これなんかどうだろう。


「カリス………なんてどうかな」


「カリス………坊っちゃま、なぜその名前にしようと思ったのですか?」


ギリシャ神話の女神様の名前とは言えるはずもないので、ぼかしておこう。


「ええと、羽が真っ白で美しいから、遠い国の美を司る女神様の名前からとったんだよ」


「シェーラ、そんな神様知ってる?」


「いえ、私はそんな神がいるなど全く知りませんでした」


うっ……さすがにバレるか。


「そっか。クルスよく知ってるね!すごいすごい!」


「良い名前かと思いますよ」


「鳥丸…………」


あれ?なんかスルーされた。よかった………。というかルーナ姉さん、まだあきらめてなかったんだ。

あ、肝心の本人の意見を聞いてなかった。


『どうかな?』


『ふむ、カリスか。良い名前をもらったぞ。これからよろしく頼むぞ、クルスよ』


気に入ってくれたみたいだ。


『うん、よろしくねカリス』


「本人も気に入ってくれたみたい」


「じゃあこれからはカリスって呼ぶわね」


「よろしくお願いしますね、カリス」


こうしてカリスはレグサンド家に迎え入れられたのだった。


「鳥丸…………」


ルーナ姉さんそろそろ諦めて?

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