11話 この家の正体
昨日はお休みしてしまい申し訳ありませんでした。
ちょうど外に出てみようと思っていたところに母さんたちが入ってきた。今日はシェーラの他に姉さん達も一緒だった。
とりあえず聞いてみよう。
「おはよう!おかあさま!しぇーら!れれなねえさん!るーなねえさん!」
まだ舌が上手く回らないので、発音が拙いが大丈夫だろう。
「あら~クルスちゃん起きてたのね。おはよう。」
母さんは大輪の花のような笑顔を咲かせながら、挨拶を返してくれた。
母さん、めっちゃ綺麗です……。
「坊っちゃま、おはようございます。……はっ!坊っちゃまからご挨拶をっ!!やっと私が母親なのだと思えるようになって━━━あいたっ!」
このポンコツメイドはなにをやってるんだ?また母さんに頭はたかれてるし。
「クルス!おはよう!」
レレナ姉さんはそう言って俺に抱きついてきた。 レレナ姉さんから匂う香りが鼻腔をくすぐる。
「おはよう………。む……お姉ちゃんだけずるい。」
ルーナ姉さんはそう言うやいなや後ろから俺に抱きついてきた。今俺は姉さん達に挟まれている状態だ。
……異世界の挨拶はこういうものなのだろうか。
っと本来の目的を忘れるところだった。
「おかあさま!きょうはいえのなかをみてみたい!」
「そうね。約束してたものね。私はまだ仕事があるのよね………。ああ、もうなんでなの!……あとでカレイドに文句言ってやる……。しょうがない。シェーラ、お願いするわね。」
ごめん父さん、なんか八つ当たりされるみたい。
「お任せください!もう私なしじゃ生きられないくらいの勢いで案内させていただ━━あいたっ!」
どうしてお前は余計なことを言うのだ。
「大丈夫よ………私達が見張ってる。」
「そうね。なら問題ないわ。」
「な!思わぬ伏兵が━━あいたっ!」
このメイド、よくクビにならないな。
━━まあ、そんなわけで俺はシェーラ達に家の中を案内されている。どこもかしこも職人が意匠を凝らしたような作りになっていて、この家の主の拘りが伺える。
あっメイドだ。みんな本当に美人だなぁ。……でもメイド全員ハイエルフで強さも母さんと同じくらいって言うんだから、世の中見た目で 判断しちゃいけないな。
お、執事もいる。みんな若いな。そして 超イケメンだ。くそっ、寄ってたかってなんだこいつら。俺みたいなフツメンへの制裁か!
『マスターの両親はどちらも美形なので、少なくとも不細工ではないです。』
そうか。確かに俺の両親はどっちの顔も良いから将来に期待が持てそうだ。
そういえば、前にティオがこの家の人の種族を調べたときに執事達のことを言わなかったよね?なんで?
『……忘れてました。てへっ。』
………こいつ、本当にガイドマスターか?仕草が人間臭くなってきて、ものの忘れ方も人間に近づいてるんじゃなかろうか………。
まあとにかく、それであの執事達の種族はなんなんだ?
『彼らの種族はドラゴニアンです。ですが、全員ベースのドラゴンは違いますがただのドラゴニアンではありません。高位古代竜人です。』
高位古代竜人?それってどんなやつなの?
『高位古代竜人は竜王を越えた、竜神に最も近い種族となります。名前に古代とありますが実際は先祖返りで古代竜語魔法が使えるというだけです。………そして、毎度お馴染みですが、全員通常の高位古代竜人の域を越えています。竜神越してますね。もう少しでその上の龍種とサシで戦えますね。』
竜神?龍種?分からない単語ばっかりだ。
『申し訳ありません。説明不足でしたね。竜神とは竜達を統べる竜王が神格を得たものです。強さは一匹で複数国を相手にとって勝てるほどです。
また、龍種とは竜種と別格の存在です。普段はこの世界に隣接する空間にいるので、害はありません。しかしその力は一匹で大陸が消え去るほどです。』
ちょっ、えええええええ!!ってことはここにいる執事達大陸滅ぼせるの!?
………そんな強さなのにみんな神格得てないのか。じゃあ神格を得たらどうなっちゃうんだよ。恐ろしい。
『ちなみにセーラやメイド達も同じくらいの強さですよ。カレイドはその上をいきます。』
母さんたちも同じレベルなの!?父さんに関してはそれより強いって。この家は世界でも滅ぼすのか?
物騒な事を考えるのは止めよう。今は屋敷の探検だ。
「━━こちらは私達メイドのエリアになります。何かあればこちらにお越しくださればメイドの誰かが対応致します。」
メイドエリアは飾りなどは最低限しかないが、逆にそれが落ち着いた雰囲気を醸し出していた。
「こちらが私の部屋になります。」
部屋は全員個室を与えられているらしく、メイドエリアはホテルのような作りになっていた。
その中のひとつのシェーラの部屋に入った。……俺が部屋に入ると「坊っちゃまの匂いが私の部屋にっ!!!」とか叫んでいたが気にしないことにした。
「シェーラの部屋初めて来たわ。」
「私も初めて……」
「しぇーらのおへやきれー!」
シェーラの部屋は女の子っぽい可愛らしい部屋とかではなく、アンティーク調のシックな感じで、香を焚いているのだろう、部屋中にハーブの良い香りが充満していて、ゆっくりとできそうな部屋だった。床にも塵ひとつなく、掃除をよくしているのだと見てとれた。
だから、俺は自分が思ったことを正直に伝えた。
「はうっ!坊っちゃまが私の部屋をお褒めに!!!」
メイドは頬を赤らめ、そんな事をのたまっていた。
部屋を見回すととてもふかふかそうな白いベッドを見つけたので、ついベッドにダイブしてしまった。シェーラのベッドは俺の部屋のよりふかふかでシトラス系の良い匂いがした。その心地よい感触と香りに思わず寝てしまいそうになったが、姉さん達も俺と同じようにベッドにダイブしてきたため束の間の安息は中断となった。そのあとここはシェーラの部屋だということを思い出して申し訳ないと思い、俺はすぐにシェーラに頭を下げた。
「ごめんなさい、しぇーら。しーつぐちゃぐちゃになっちゃった…。」
「いえいえ、良いんですよ。シーツなんてすぐに元通りにできますから。……ベッドに坊っちゃまの匂いがっ!これだけでご飯三杯はいけますから、逆にこちらが感謝したいくらいですよ。」
最後はよく聞こえなかったが、許してくれたようで安心した。
この部屋は落ち着いた雰囲気でゆっくりできそうだしベッドもふかふかだから、また来たいな。
「ねえ、しぇーら。またここにきてもいい━━」
「勿論でございます!!いえむしろ来て下さい!」
なんか即効でオーケーでたよ。何故かシェーラはガッツポーズをしている。
『ふふっ、ギブアンドテイクですね。』
どういうことだ、ティオ?まあこの部屋に来れるなら別にいいか。
シェーラの部屋を出て、次に来たのはとても豪華なつくりの扉の前だった。
「ここはカレイド様のお部屋です。お部屋………というかお仕事をなさる場所ですね。」
執務室みたいなものか?
「はいってもいいの?」
「今の時間帯は休憩時間なので問題ないでしょう。」
「私ここ嫌い。」
「うん……。落ち着かないよ……。」
姉さん達はこの部屋は好きではないようだ。
シェーラが扉をノックした。
「カレイド様、メイドのシェーラです。坊っちゃまの屋敷の案内でこちらに伺いました。入ってもよろしいでしょうか?」
「……いいだろう。入れ。」
扉を開け、中に入ると王様が座るような豪華な椅子に腰かける父親の姿があった。隣には文官の服装をした初老の男性が立っていた。
部屋の中は黒色が多く暗いイメージだが、全てのものが豪華なので、まるで魔王の間にでもいるようだった。
うん、確かに落ち着かないな。
俺がキョロキョロと部屋を見回していると父親が話しかけてきた。
「ここはどうだ、クルス?」
「いろんなものがいっぱいあっておもしろい!それにおとうさんがまおうみたいでかっこいい!」
俺が思ったことをそのまま告げると父親と文官のような男が声をあげて盛大に笑い出した。
「━ははは。ああ、すまんクルス。そういえばお前に言ってなかったな。」
はて?なんのことだろうと思っていると、父親が
「俺は魔王なんだよ。」
「ええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?」
俺の父親が…………魔王!?