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ロストノート

作者: 柳晶

LOST NOTE ~星の降る夜~      

 僕の人生はさして人と変わり栄えののしない平凡なものでした。それを飾りたてる才能も富みも名声も智慧もありませんでした。当然です。ぼくはどこにでもいる独りの高校生だったのですから。ただ、ダイブKYで集団で独り浮いてるタイプの人間だったんです。

 アノ日から平凡にして愛すべき僕の日常は無残にも切り裂かれ、って自分で裂いたんですけど、頚動脈。(ダメですよ真似しちゃ。死んじゃいますからね。禁則事項ですか、これ。)

脳裏に人知れず描き続けた希望も夢も露と消えました。なぜ、僕は死んだんでしょう。忘れちゃいました。もう、細かいことは忘れるようにしたんです。だって、偉い人が

「お前、このままじゃ自縛霊になんぞ」なんて怖いこと言うんですもん。Mじゃないし。え、自縛違い?僕、日本語苦手なんですよ。怨みたくなんかない、だから僕は許しを求める。それは抜け出こと叶わぬ悪夢の咆哮…。

 

 とある高校の体育館、演台の前には一人の生徒が顔を赤らめて立ち尽くしている。マイクからは彼の苦しそうな息ずかいが聞こえる、そして。

 こういったメンどくさい催しは大概嫌われ者に嫌われ役が渡ってくる。

 彼もまたそういったメンバーの一人だったのか、それとも担任推薦の選ばれし子供達の一人だったのだろうか。個人的ナ感想としては、前者であっただろうと判断する。

そういった脇役キャラ(だからといって、このタイプは名優ではないすぐ死ぬ雑魚キャラ)

は大抵適当こなし、適当に人生を楽しむものだが、彼は違った。まじめと呼ばれた彼は真剣にその役に取り組んだ。それが彼の不幸の性だったのかもしれない。なぜこんなことがおきたのだろうか。パパに聞いてみようかな、でも東海自身がいつ起きるのかとかおしえてくれないし、これもわかんないかも、あ、夜のバイト行かなきゃ、四角いラーメンなんで売れねん、蛾ッちゃんは絶品だっていってたのに。アーマジ借金の抵当に神殿取られるとは思わなかったし。礼拝できないし、お布施はいらないから、生活費厳しいからね~。

てか、年金とか固定資産税とかどうすればいいの僕。紙よ我を助けたまえ、マジで。またCMの話こないかな~。

 ちょ、上様カミサマチャンと台本どおり仕事してください、え、ここから僕が読むんですか。

じゃ、ここからは柳がお伝えします。

 これは誰かの物語(僕の物語)、でもあなたの物語かもしれません。これは俺の物語でもあるから(…あれ、これって雄也の台本じゃんか、はずいし。やば)その演説のあと彼のセキ(籍、席)はその学校から消滅した。彼自身の手で。そして、一冊のノートが残された。膨大なメモとも呼べるそれは、失われた一冊、それは存在の消えたたった一人の存在の証明。


 ザワツイタ、大衆。僕はこんな雑踏のような空気が一番恐ろしかった。周りの声がすべて悪口のように聞こえる。あの(男子)ニコ厨もあの[禁則事項DE×TH]女子たちも…

「柳君、まじめに台本読まないと強制送還だよ、いろんなオプション付きでいろんな場所へ。」「えーそんなただのお茶目ですよ、OOO(軍曹さん)たらひどいなひどいDE×TH」

 では気を取り直して、

いやだ、みないで、突き刺さる視線が恐ろしい。助けて、息が苦しい。

 演台へ向う階段を上がる柳の頭のなかで、雑踏の中に押し込められていた時の記憶がフラッシュバックする(お カ し いな、薬、飲んできたのに…)気を立て直し、僕は演台に向う、あの雑踏よりはましのはずだった、だから、僕はこの役目を引き受けたのに、どうしてOOOの。

 「ち、がう、OREHA 俺は殺サレタンダ!!」

 体育館の中に一瞬の静寂が訪れる、演台に立った頭のよさそうな少女の明瞭な(猫かぶりのアニメ声ぽく聞こえるけど、本とに可愛くて本とに地声、本人と喋って感動したもん)いかにもデキルという声がマイクから(閉鎖じゃないよ)空間に響き渡る。雄哉はそれを聞きながら、ひたすら大丈夫、大丈夫と心のなかでつぶやいた。(つもりだったんですけど、小声でぼそぼそ結構つぶやいたらしく、あとで下界のぞいたら結構狐つきってばれてららしく…思考駄々もれな件自嘲且つ自重)

「次の方演台へどうぞ。」

「え、もう、は、はい。」

 パニックになった雄哉はもう頭が死んだと思った。(そのまま死ねばよかったのに)フリーズまさにそれだった。

『僕は笑いたい』

 雄哉の震え、甲高くなった声がマイクを通過したとたん、笑が会場に広がる。

「むしろ、笑われてるし。」

 雄哉の背後から冷たい皮肉がつきささる。

『僕の将来の夢はお笑い芸人です。馬鹿でそれしかできないとかじゃな、ないです。

今は学歴とかないとだめだし、ボケはボケに勝てないし、空気読めないし、

けど人を笑わすのは幸せな仕事できっと、か、っか、ひゅー、かっっこいいから…。」

 しばらく、会場が沈黙に包まれた。そして、雄哉の意識はシルクの視界に飛ぶ。

 目が覚めるとそこは保健室のベットのうえだった。過呼吸を起し、失神し運ばれたのだった。遠くの廊下からかすかな声が聞こえる。

「てか、何で倒れてんの馬鹿なの、基地外なの、痛い子?」

「あ、って山田、途中棄権だからおれの勝ちだろ、コークプリーズ。」

「なに、その旧いネタだれもやってないしね。なんでだよ!!」

「なんで、倒れんの…アイツ、死ねマジ」

山田はドリンク買って戻ってきた。

「ナイス野球部、GJてか、なんでんな速いのに勝てないの部活」

「あ、メンタルがもんだいって、なにまじめに答えてんの俺。」

「てか、アイツはいろんな意味でレットカードだろ。」

「は、うけるあれじゃね。人生から退場!レットカードだろ、それ」

「まじね、死ねばいいさ。」

 雄哉は焦った、また失敗した、また怖い目にあうかも今度はなにを摂られるんだろう。

もう精神力も勇気もつくり笑いものこってないよ。あんなに頑張ったのに。

「死ね、」

その何気ない会話のその変哲のない単語は雄哉の頭に染み付いてはなれることはなかった。


年賀状さえ届かない、俺のもとへ送り主不明の小包が届いた。その中には、一冊の分厚いノート。そのノートには手紙がそえられていて、やっかいなことになったものだと思ったけれど俺はそのノートを開いた。


 ノートはこぎれいな字でつらつらと書き綴られていた。内容からすると日記のようなものらしい。ノートの表紙の裏には、マジックでこう書かれていた。

 「自由に書き込んでください、独りぼっちは寂しいから。批評でも悪口でもかまわないから。君の気に入らないようなら、捨ててもらってかまわない。でも、せめてちらっとでも目だけは通して欲しいのです。読み終わったあとの処分は君に任せます。」

そのノートはくたびれて見えた。ぱらぱらとめくっただけでも、いろんな書体が踊って見える。何か、えたいの知れないこのノートに僕が引かれたのは、ほんの少しの好奇心と背筋が寒くなるような違和感ためだろうか。


 ただぼうっとバス停の前のベンチに座り込んでいた。どのくらい座っていただろうさっきまではあんなに五月蝿く騒がしかったバイクの甲高い音もいの間にか向こうの峠に、消えていったしーんと張り詰めた空気の中に聞こえるのは虫の声だけだった。

 田舎だ、こんな時間だ、そうでなくても人通りが少ないうえ日が落ちてからでは車意外には影も形もない。

(時計をもってくればよかった)

家を出るときに持ち出したのは、塾の教材の入った鞄と小銭をためたビンのなかにむりやり押し込まれ窮屈そうに顔を歪めた数人の野口先生と小銭の入った財布、ズボンにいれっぱなしになった携帯とMP3プレーヤー。親には塾に行くといって家を出た。でも、どうしても行く気にはならなかった。塾にはさっき携帯から連絡を入れた。養われの身分で塾をサボるなんて、ばれたらきっと母は怒るに決まってる。めんどくさい。でももうなんだかどうでもよかった。どっちも昼間から電源が入ったままだったらしく両方ともディスプレイがうつらない。携帯に至っては、塾への連絡を最後に電池の残量を知らせる警告を最後にうんともすんとも言わなくなってしまった。風が吹くとシンと手が冷たい、上着のポケットをもう一度探してみると小銭が手に触れる。さっき自販機の前を通ったことを雄哉は覚えていた確かなんか暖かいものがあったはずだ。雄哉はベンチから腰を上げるとぼんやり白くみえる自販機のほうへ歩き出した。膝がピシリと音をたてる、自販機につく、右手に握った小銭を入れる、紅く光ったボタンを適当に押した、鈍い音が聞こえて缶が落ちてくる、屈んでそれを取り出すとミルクティーだった。

手にずっと持つにはすこし熱すぎる、夜気に染まった手にはいっそう熱く感じるのかもしれない。

それをまた上着に押し込むとまたベンチに向って歩き出した。ベンチに戻ると、腹部の缶の温かさがちょうど良かった。ベンチで長い間座っていたためか、不意に首にわずらわしさを感じる、頭を左右に傾けると頚椎がゴキリ、ペキリと金属のように耳の後ろのほうにびびいてくる。少し軽くなった頭を上に向けると、雨上がりのように澄んだ空に白く星が画やいていた。もう星空が綺麗な季節になっていた。すぅっと小さなため息をつくと、小さな星が目の前で小さな線を描いて消えていった。今星が燃え尽きた。ほんの数秒、一瞬の輝き、それがその燃え尽きた星の最後だった。思わず息を呑んでいたことに雄哉は気づいた。(おなじ塵でも星屑の最後は綺麗なのにな)そんなことを考えながら雄哉はそっとッ目を閉じた。

 幼馴染がこないだ死んだ。そう呼ぶにはおこがましいかも知れない。小さいころは確かに遊んだ。でも高校は別だったし一年に数回会えばいいほうだ。いわゆるKY。クラスに一人はいるういちゃうタイプ。でも実際悪い奴ではなかったから、僕らはたまにいじる程度で一緒にたまに帰るくらいの仲だった。多少あつかましい、そんな奴だった。

 突然の電話、やっぱり中学の時の同級生からの電話だった

「雄哉、電話。」

「誰。」

「林君。」

そういって、渡された受話器に耳をあてる。聞きなれた、でも懐かしい声が聞こえてくる。

「もしもしどうしたんだよ。メールしてくれればよかったのに。携帯変えたんだっけ?」

「あのさ、ニュース見た、中学で飛び降りあったじゃん、二週間前くらいの」

「え、どっち古いほう?県内のやつ。」

「県内のやつ。」

「見たけどなに。」

「あ、あれさ、重態だったらしいんだけど、先週末死んだらしんだよ。」

「んで、知り合い。」

「柳らしんだよ、死んだの。」

「え、でも中坊じゃないの。」

「十七歳、市内の私立高校に通学って報道されたじゃん。」

「そこまで、詳しく見てないし。」

「だから、気になって知り合いに聞きいてみたら…。」

「…へぇ。」

「葬式いく?」

「ああ…行くんでしょ?」

「とり合えず。制服だよな服装…」

「前もそうだったし。たぶん」

「細かい日程分かったらメールして」

「わかった、じゃまた。」

「じゃ。」

そういって電話を切った。

「なんか、中学の時の奴が死んだらしい。んで葬式行くかって。」

「そうなんだ…。」

(そうなんだって、あっけないな…とりあえず人一人死んでんだぜ…。)

そういえば、ねぇちゃんは結構人の死に対してあっけない。祖父が死んだときももっと泣くかと思っていたのに。そのとき初めて接した肉親の死は本当に何もないものでただ不可思議だった。祖父がもの静かな人だったからなのかもしれない。ただ、祖父は寂しかったのではないか。見舞いにいったその夜に急変したのか。幼かった僕は分からない。でも偶然か必然か僕はその晩祖父の枕元にいた。なぜか、いつまでもそこにいたかった家に帰りたくなかった。けど子供だからと帰されてしまった。そして、十歳の僕に勉強しろと言い残して、未明に彼は逝ってしまった。

彼の死は幸福だったのだろうか。本当に死は幸福なのだろうか。


 

 最近、自殺とかのニュースにが目に留まる。死にたい奴の気が知れないなんてバカな考えはもってないけど、それってやっぱりいいことではないきがする。生きてる以上は死ぬまで生きなきゃいけないし、そんなことに理由なんてことはなくそれは当然としてあるのもだから、疑問なんて浮かべる無駄なことだと最近悟った。生きているのはそれなりにエネルギーを使って、それなりにしんどくて大変だと思うときもある。それは誰だって思うことで、死ぬことがその反対ならやっぱりそれなりにシンドイはずで、生きていて自分が中途半端で嫌だと思うなら、中途半端に死ぬのもやっぱりよくないような気がする。死という言葉がタブーではなくなって身近な日常会話の中に潜り込んでる。ただ、身近になったからといってその全てを理解できるほど僕は頭言い訳じゃないから、分からないぶんその重みを考えつづけないといけない気がする。冗談でも言葉は力を持っている。生きた人間が多少なりとも悪意をこめて投げかけるのだから。逆に言葉に悪意が宿ることもあるかも知れない。単なる冗談、からかい、いじり 。でも、受け止める側の人間がそうはとれなかったら。死にそうなほど落ち込んでいる人間が、存在を否定されたと受け取れば、誰かの人生がそこで終わるかもしれない。

「雄也、聞いてんの。着いたよ。」

「どこへ。」

「どこへってあんた、ばか?」

「葬式会場、あのこの、ほら林君、入り口で待ってるみたいよ。ほらさっきの制服。

林君でしょ。速くいきな」

「ん、あんがと、いってくる。」

「裏に止めたけどさ、なんかカメラとか着てたし、アノ子の学校の関係者も

きてたみたいだから、そしらぬ顔すんのよ、間違っても顔色かえんじゃないよ。」

「分かった。」

こんなことじゃもう泣かない。アイツのために泣いたりしない。むしろ腹立つし。

「じゃ、迎え来て、メールするから。」

 背後でドアが音をたてた、するとエンジン音が遠くへ去っていく気配がする。

ポケットに手を突っ込むこともなく、通常業務通り俺は淡々と歩いて正面ホールに向う。

 きょろきょろしてたんだろうか、しらない女性が香典やらなんやらみんなやってくれた。

中学の先生が、ちょっと青い顔して立っていた俺は林と合流して中に通してもらう。

思っていたより地味な葬式みたいだ。でも、なんかぴりぴりしてる。空気が怖い。

 林はとみると隣の松田と喋ってた。中学のメンバーはこの三人だけみたいだ。


 ヤキソバブル


  大人が好きな子供なんて地球上に存在するだろうか。

親殺し、子殺し、それ然り。血縁なんて大そうなしがらみでさえ断ち切るほど大人の支配に対する子供の恨みは根が深いのだ。僕らを『弊害』と呼んだ大勢の大衆。僕らに夢をと、希望をと、さんざん煽っておいて能力がないとわかるや、近頃の若者は…ゆとりはと、軽口こぼす先人。僕は絶対に許さない、自分の不幸を時代のせいになんか、お前らのせいになんか絶対にしない。たとえ、ゆとりだろと、M児童だろうと、ひきこもりだろうと…。

 大人の作ってきた社会なんて継承するものか、どうせ放って置いたってこの国の退廃は救えない、零に還るその時まで、僕は絶対に許さないきっとこの国をもう一度…。


 動画が開かれたウィンドウにカーソルを動かす手が悴んでいる。背中越しにも感じる外の寒さ、背後の雨戸のひかれた窓のどこからか冷気が漏れているようだ…寒い。温かいところから寒い外気に晒されれば通常は寒さを感じる、しかし室内であっても外気とほぼ同様の温度に保たれた部屋にこもっていれば、感覚がまひるのか、メタぼな体型、皮下脂肪の恩恵か、かじかんだ手がしびれだすまではなんとかなるものである。

 深夜、電灯のしたでも薄暗い廊下、それを無理やり襖と箪笥で仕切る。そこに机やら本棚やらを持ち込んで、南側の一面のガラス戸の前にはカーテンをとってつけた。床にはカーペットを敷いた。この五畳半ほどの空間に籍を移譲してから三年ほどがたつ。一年程まえにうちにLANが引かれそいつを無理やりこの閉鎖空間までもちこんだ結果僕はこの一年程の間に社会復帰が危ぶまれるほどにある種オタク化した。これは自称というか、他称というか僕自身は自嘲の意図で自身をそう呼称することもあるが、決してそうは思っていないただ、どこから醸し出されるのか周りからはオタクだと断定的そう思われてしまっている。僕は義務教育課程をほぼゆとり教育で修了した、ゆとり世代である。ゆとりっ子、そう呼称した方が可愛らしさがでてこっちの方が個人的には好ましいでも、流通してないからな…。オタクではなく、オタク体質なのだと反論するようにしているでも、激しい突っ込みに負けそうになる昨今…。深夜PC画面動画に向ってニコニコしていたって仕方がない。

 このままではまた学校を休む羽目になる。でも、義務もない今、目的も意志もやる気も失った今僕はどうして学校に行くんだろう。机の傍らには昨日アイロンをかけた制服がハンガーにかかって天井の梁に渡した南北をわたるつっかいぼうにつるされている。うちの高校は悪くない、そこそこ塾でしぼられ、年末年始も塾でどなられ受かった学校だ、(塾の課題をこなす、宿題をこなす以外で家で勉強した記憶はないけど)レベルも質も悪くないはず、在校生のスカートの短さにはショックを受けたけど、昔のだぶだぶのソックスとか妖怪みたいなメイクよりはましというか、スタイルよくて可愛ければ許されるんだきっと、

だって女子高生だもの。明日は学校だ。今日も学校だけど、毎日が日曜日だんだん感覚が緩く緩くなっていく。

 みんなとおんなじように塾に通って課題をこなして学校にいって先生にいろいろ迷惑かけつつ卒業して実績のなんの裏打ちもないまま高校に入学する。世界一の学校だ、なんか誰かどでかいことを興すような面子がそろった学校だと思ってた。自分はそうではないにしても、ナンだかんだいろいろあってそれぞれがいろんなもの背負って生きてたし、いろいろ細かいことはあったけど、皆いいやつだって信じてた。


「ちょ、林トイレどこ。」

「入り口はいってホールの逆方向に小ホールって看板が西側にあるから、そこを曲がってすぐトイレ。いけばわかるよ」

「さずが、寺の次男。なんで坊主なんなかったんだよ。」

「中学で、タバコみつかったんだからしかたないだろ、体面だよ親の。」

ふーん、そんなもんか。ま、檀家にばれてちゃしかたねーな。

緊急事態は親友のナイスアシストで事なきをえた。グッジョブ林。

手を珍しく持ってたハンカチで拭きながらトイレからでる。

隣の女子トイレから出てきたらしい女子二人がトイレ待ちをしていた。

 すると、携帯がなった林からだ。メールをよみながら突っ立てると背後の女子の会話が漏れてきた、そういえばアノ制服って。

「で、そのなくなりものってなんだったの?」

「あ、なんかノートがなくなってたぽいよ。」

「だから、アイツんちばばー泣き叫んで山田とかに組み付いてたの。」

「てかさ、山田まじ災難じゃない?担任ってだけで責任取らされるらしいよ。」

「てか、柳ってまじKY。死んでよかったんじゃない、てか最後までなにやってんのだし。」

「自殺とか、笑えるよね。本とにあるんだみたいな」

「てか、持ち物とか隠されまくってたし、ノートも学校にあんじゃないの。」

「え、でも肌身離さずだったらしいよ、それ。」

「うわ、ないわそれ、アイツの演説ぐらい無い。将来の夢、芸人とか…」

「和海、遅いし、なに便秘?」

「ふんばっちゃったんだ」

「は、ありえねぇーし、だれとちがうから。」

やべぇ、はじまるとか書いてあるし、俺はちょっと速いそぎでその場を後にした。

やばい、ホールがどっちかわからない。なんで、俺だけ方向音痴が遺伝したんだ。

それもこれもじいちゃんの遺伝だ。そういえばじいちゃんの葬式もここだったきがする。

このタイルの落書き覚えがある、じゃここを右にまがれば、よし!帰ったら線香、線香。 



 4月23日 ちっとも頭に入らない数式の板書とピントの多少ずれたような現実から目を背け

心持ちょうどいい感じの春風と睡魔に身を任せて、数学の授業を抜け出してみた。

こんな夢を見た。やっぱり数学の授業だった。黒板にはびっしりと方程式が書き込まれている。

「センセー、計算みると熱が出るンで保健室行ってきていいすか?」


「中間テスト間にあうの、その調子でサァ欠課は単位響くから、毎回言うけど分かっておいるよね?」

「むしろ、その台詞は、数学教師に満面の笑みで言うことじゃないよね?」


「ま、いいや、やる気ないもんね。やる気ないなら学校やめれば。義務教育じゃないんだし」「先生ないのはやる気ではなく、数学を理解する能力で…」


それを言い終わるか、終わらないかの一瞬に、背後に北棟の全ての教室に響き渡るかのような轟音をくらい廊下にたたき出され―…(勉強したくて来ているのじゃない、このプロセス踏まないとまともな大人になれないのだもの)

遠くで鐘の音がする、そのとき教室では福音のように

終礼の鐘が鳴る、こいつは虚無感の右フックを俺の頬に食らわせて一気に数学の授業へ引き戻した。いつの間にか本格的に眠り込んでいたらしい。

 「じゃ、写し終わった人から終わってね」先生がまず雑踏をぬけだす。

ぐしゃぐしゃと動き出した教室の雑踏の中を、俺は最短距離で抜け出そうともがきだす。


そうやって、教室を抜け出すと、気づけば窓のそとを眺めていた。


 窓の外には春が広がり毎日風が吹き渡るたびにこの額のなかの景色は初夏へと彩を変えていくのだ。


『こんな綺麗だったんだな~、去年は気がつかなかった』そんなふうに真っ白な頭のなかに春を映していると、遠くのほうから聞き覚えのある笑い声が、からっぽの胸にことりと音をたてて落ちてきた。


廊下を窓際に歩いていく。女子高生といわんばかりのスカートの集団のなかに、その面影があった。満開のさくらの香りを運ぶ風が新しい環境で浮き足立った心を刺激するせいなのか

それともただ単に俺が変態なだけなのか、目の前を過ぎる横顔にずきっと胸に小さな針が、

刺さる。


あの子はどんどん先へゆく、もともと少し遠くに感じた存在。それが今では同じ軸上にすらないように感じる。その感覚が、虚無感に支配された心の奥に少し残った自尊心をぐいぐいと攻め立てる。「何故?」分かりきった答えを孕んだその問いかけが、考えることを投げ出した頭をますます混乱させていく。


 軽い吐き気を覚えた気がして、にごった大気を吸い込むと小さなため息をついてみた。


5月の中旬ってことにしとく。

 体育がタルイ…。かったるい…。音楽を聞こうが、漫画を読もうが胸の奥の虚無感の広がりを到底押さえることはできそうにない。頭が痛い…。雨が降るのかもしれない。

窓のそとに、空を見上げる。ねずみ色の雲が広がる。やっぱり降るのかもしれない、天気予報を見てくれば良かったか、いや折りたたみが、バックのそこに放置してある。なんとかなる。

 「今日はどうしてこんなに早いの?」隣でハンドルを握る母の声に多少には若干イラつきが混ざったように聞こえた。

 「息子の声には耳を傾けて欲しいな、数学の追試…。」(親子のコミニュケーションが不足すると、かぁさん…。子供が歪むんだってよ?僕みたいに。二ユースでやってたよ)

 「昨日も、言ったと思うだけどナ~。」

「おねがいだか勉強してよ、いつも人のせいにするじゃない…送り迎えだってすごく負担なのよ、あなたと兄ちゃんどちらかでもしゃんとして?もう高2なのよ、お兄ちゃんのほうがはるかにしっかりしてるわ。」

 俺は、この登校までの5~10分の間に母の小言を受け止める義務をおっている。これと引き換えに自力ではない自家用車での登校が許されているのだ。罪には罰…権利には義務

それと似たようなものかもしれない。

 「かぁさん~俺には携帯なしなの結局。買ってほしんだけど、必要だから。」

高2にもなって携帯なしはかなりの少数派であることは間違いない。そこまでの必要性を感じるのかと聞かれればたしかに疑問符が浮かぶ。それでも、あったほうが便利な訳で…。

通常うちの学校で携帯の電源を入れていることは校則違反となっている。携帯を持たない俺は、この校則に抵触することはありえない。そして、授業中に携帯がなってとりあげられるなんて不幸にも遭遇することもない。これが俺の現実なわけで、これを前向きに捉えるか、後ろ向きに捉えるかは俺の人間関係に偏ってくる。メールを送っても三日も放置されるくらいなら、携帯なんて持たないほうがましだ。ちくしょう。

 「だめよ、前科があるから、お兄ちゃんの携帯でも、お父さんの携帯でも。一万円ってどうゆうことよ、あなたが使うまで、あの二人ッで5千円もかからなかったのよ、基本料金ぬけばね。」

 「とにかく、成績あげるか、バスで通うかしなきゃ、携帯は許さない。じゃ追試行ってらっしゃい」

  うちの母は料理が天才的に下手だ。でも小言は最高に天才的だ。「僕の役目はママの愚痴をきくことなんだな…」初めて人生に使命感を感じたのは五歳の夏、車の中だ。

 結局、この話を母にいっても信じてもらえなかった。ひどいもんだ、まったく。


二年で生物を選択したにはちょっと理由があった。夢と希望に満ち溢れた中三のとき、

高校の授業をのぞく機会があって、生物の授業をみた。デオキシリボ核酸って単語を覚えたてで得意になってたころで、タイミングよく生物の教室ではDNAの抽出実験をやっていた。ビーカーの中から半透明の糸状のDNAが割り箸に巻き取られる。さっぱり訳が分かってなかったけど、ゆとりっ子の僕らは実験とかって経験する機会が少なくて、やっぱり新鮮だった。だからってわけじゃないけど、そんなわくわくに期待をしていた。また生物を頑張ろうと思っていたはずの自分自身にかなりげんなりさせられた。

 実際は、授業とまったく関係ないことを考えて血中の酸素を大いに消費していた。

睡魔と闘いながらセンセーが黒板を消す前にノートに殴り書きするのを心がけた。それでも、俺を置いて授業は進むので、わからないとこは誰かのノートを見せてもらおうと思いながらそのままになっていた。問題もとかないわけだから中間テスト最中には悲惨な結果にちょっと期待しながらちょっとにんまりしている自身にまたげんなりしていた。生物のクラス、外の青空を見上げながら、一年前の早退したときのことを思い出していた。


 なにがきっかけだったか、よく覚えてはいない。きっとなんか人間関係とかで軽い軽い不快なことがあったんだと思う。階段を降りて保健室に直行。

 「失礼します、センセー気分不快、熱あったら帰る」

そんなことを言って、熱を測ったら微熱があって、担任との交渉を試みた。必死になるのも悪くないって思えた。

 リスカをして病院にいったこともあった。病名はつかない…。そういわれた。

 軽くショックを受けた頭に浮かんだのは疑問符だけだった。結局その人の専門の範疇じゃなくて、かっこいい言葉を捜せばグレーゾーンだったのかもしれない。

教室から抜け出して、荷物を抱えて家路を急ぐ。ばーちゃんちは五分くらいで着く距離だった。

 いろんなクラスから聞こえる授業の内容が、中庭で反響する。そこを抜けて、校門へと急ぐ。校門を抜けると学校の敷地の外で、先生がタバコを吸っていた。友人はこれをニコチン摂取と呼ぶ。

 「帰るの?」

 「はい。」「近いんで、ばーちゃんちまで歩いて」(じゃ、なんで帰るんだよ)((笑

  「気をつけろよ」そんなことを言われた気もする。

坂を下っていく。グランドにも道にも誰もいない、車の音さえ響いてはいない、あおぞらの下、聞こえるのは鳥のさえずり。最高の気分だ。何から開放されたのかはよく分からないけど。優越感に似た感覚と快感を覚える。世界に人間が俺一人になったような錯覚を覚える。その満たされ感情が、学校をサボった罪悪感を中和してくれたように思う。

 すぐに、麻酔は切れたけど。


学校の授業に置いてかれるとかそんなことは頭のなかにかすりもしなかった。だって、いろんな意味ですでに置いてかれてたしね。


“生きている次元が違う”この言葉はよく日常会話で使ったりもするけど、例えばテストの結果を話すときに、

「何点だった?何とか~」

「こいつ、80点だったらしいぜ」

「まじかよ~おれ13点だったし…」

「勝った~俺27~。ま、赤点ですけど」

「お前らシンデンジャン」

「うっさいな~まじ、凹むわーこいつの点数聞かなきゃよかったし。」

「気にスンナよ天才クンは俺らとは生きてる次元が違うんだよ。」

って具合だろうか。でも、実際この言葉を体感した奴はそうそういるまい。

そういう、意味では俺はかなり貴重な体験をしているといえるのかもしれない。


 はっと、我に返ると黒板の半分は消されていた。やってしまった。どうしても、集中で

きない。困ったもんだ、文系教科は授業が命なのに。うちに帰っても勉強しない、むしろ学校にいないと勉強できない。監視下に置かれなければ、俺は勉強できない。日本人らしいといって欲しい。恥の文化たいしたものだと。ちょっと、心の中でため息をつくと

また、青空を見上げた。早退したあの日の青空にちょっとにている気がする。

 そんなことをしているうちにも、どんどん授業は進む。先生、俺高校生向いてない気が

します。でも、辞める元気もありません。もうちょっと足掻いてみようと思います。

 ちょっと、心の中で決心して、黒板に向った。まだ、計算はそんなに出てきてないんだから、頑張ろう。二学期にはぶち当たるはずの遺伝の法則を浮かべながら、吐き気がした。


六月 もうすぐ文化祭が始まる。学校生活いろんな意味で一番のイベントだ。文化祭はまだイイとして、最終日に行われる体育祭はたる過ぎる。あれは絶対に○育教○室の陰謀だ。こんなことを言ったら怒られるかも知れないけど、楽しい反面めんどくさいのも事実のこのイベント、楽しいことには変わりないけど。受け取り方の問題のようだ。

 どこに、男女でフォークダンスを行う必要性があるのか、高2のちっぽけなみそじゃ理解不可能だ。アンコールも意味不。むしろ体育祭なんてやる必要あるんだろうか?

 かっこよすぎる運動部の面々活躍の観戦で事足りるはずじゃないのか?それを応援する気合が入った応援団のパフォーマンスそれで十分だ。これも結構受け付けないことも多いけど。背負ったもののために頑張れる奴が頑張ればいい。世の中なんてそんなもん。

甘酸っぱい青春ねぇ~。甘酸っぱいのは○イチューでこと足りてますけど。

 

 楽しいには、楽しいだろうさ、確かに。実際去年の文化祭は楽しい面もあった。けれどその分半端なく疲れるのだ。特にフォークダンス、体育祭の…。もとから人に好かれる性質ではない。だからなんだって感じだけど、特定の集団には好かれてはない。なかには仲間うちでこんな感じであからさまにからかってくる奴までいる。

 「おい、武田~次あいつだぜ…」

てめぇ~。って思ったし。死ねばいいのにとも思っただけど、他人をそのように見下す奴は大体同じような扱いをどこかで受けているのだ。(そのことに本人が必ず築いているわけではないようだけど。)でも、俺自身その人が好きではなかったし、簡単に受け流せるほど大人ではなく、精神的に未熟なので思いっきりやり返した。

 

 話を聞いてもらえるだけでも有難いのかもしれない。生きてるだけでもありがたいことなのだ、しっかりしなければ。有難いとゆう言葉は今じゃ尊いって言葉と同義語のように

使われているけれど本当はとても低い確率のことを単純計算で示したような言葉なんだと。

死にそうだ…。


六月後半 遅れてやってきた梅雨どうやら高気圧に邪魔されてバスに乗り遅れてきたようだ、でもまぁそのバスもたまたま遅れたようで学校に連絡が入って遅刻は不問…、よくあるよくある。五回たまると職員室で尋問だ。四回目の遅刻のとき、「あと一回で親呼ぶから、これ以上余分な仕事を増やすな。」ごもっとも。んー一生忘れられなかったらどうしよう。俺へたれなんだもん。先生怖すぎです。まぁまぁ予習を忘れて授業に出てごらん。生きたこ落ちなんてもそんなレベルの話じゃない。 教室だって何が起こるかわからない、職員室なんて虎穴なんて騒ぎじゃない。体育準備室はどうだろう。ま、触らぬ神にたたりなしってことで。

 失いかけた命の火をともそうと俺が古典の辞書に必死にしがみついて頭は清げなりの終止形でいっぱいのそのとき、鐘が響いて授業はおしまい。助かった~。

 「終わり。予習してこいよ。」 「キリーツ、レイ 」 「あリがトうござぃました」

なんど、聞いても思うけど、どうして終礼の感謝の念ってこんに歪に聞こえるんだろう。

 そのときそのときノルマをこなして生きてる俺には次のことしか頭になくて、時間削って人生削って教えを叩きこんでくださっているプロの言葉もこころに受け止める余裕がないんだと思う。 先生たちの授業を受ければよく分かる。同じ空間を共有すれば体感できる。同じ階のふた隣さきのクラスから先生の一生懸命な授業がきこえてきたり、生徒の笑い声と一緒に先生のネタが聞こえてきて、思わず噴出したり。こんなに先生たちは教師って自分たちが選択した人生を必死に生きてる。でも、俺たちはどうなんだろう。教育問題をえさにTVは視聴率をつるけど、大人の言葉が響かない子供にだって問題があるような気がする。でも、そうやって俺らが自分の身を守っているのも確かななのかも知れないけど。今日もどかで親が子供に殺された。昨日は小さな子供が親に、三歳の子はオヤジに置き去りにされたって。関係ナイ。確かにそうだ。新聞なんて、テレビなんて、メディアに触れなきゃそんな事実は目の前にフッテ湧いてなんてこないし、電源つけなきゃ一生きずかないかもしれない。そんなことどうだっていいことだ。俺の人生にはなんら関係ない。

 同世代の人間が人殺そうが、子供産んで捕まろうがちょっと危機感感じるか、バカな奴って思うくらいしか、感じない。中学の時は面接で使える時事問題拾うのに必死だったけど、今はそんなんどうッでもいいし。赤点候補がそんなんで足掻くだけ無駄なのだ。

 世界で何が起きようと、俺の価値観は壊れない。世界は変わらない。そう思ってたのに。


 ある日、突然自分の世界を、信じてたもんを失ったら俺は生きていけるんだろうか。


 もう、なんかだめな気がする。人としての規格を逸脱してるのだ。しかたないあきらめよう。


 雨天、兄貴と親父を怒らせたんで、俺はまた居場所を失う。あまりにも二次元にはまりこむので、LANを切られてしまった。もちろんこの無駄に消費されるエネルギーは本来の業である学業勉学に向けられるべきであってこなすべき課題も当然ながらやまずみになっている。オフラインでただノートPCに向かいただ見たくもない自分の内面に向き合って妄想の羽を狭い液晶の画面にぶちまけたところで、たいした脳のスペックも回転数もない俺がいかに空想の羽をはばたかせたところで自由な空を飛べるはずがない。

 時間の流れは速すぎる。引きこもり志望の俺の前、ちゃりで全力疾走していく感じの勢いで、どんどん、置いていかれてる。そんなん自分でもわかってんだけどな。

 なんとなくしかわかんないけど、どう想像したって俺の人生平凡にしか思えない。

平凡だからといって、こぎれいな平和な家庭の中にいるようでも、会社勤めに明け暮れて

同じような仕事を淡々とこなしていくようにも思えない。今でさえ、三下の自分自身の人生が、これ以上輝きを放つことなんて二度とないだろうと思ってた。こんなものを輝きと呼べるなら、五本で100円くらいのシャーペンが蛍光灯を反射する光で僕は失明できるような気がする。いま青春真っ盛りってことになってるけど、それっぽいハプニングもないし、ただ学校にいって赤点すれすれさまよって、適当に友達の話に乗ってるだけだ。大体僕に話をあわせるような友達と呼べる存在は地球上には存在しないのかも知れないけど。

 家に帰れば、帰ったで、息が詰まるような気がして、何もできないのにどこかに逃げ出したような衝動に駆られるのだ。「ただ、毎日を生きる。それがどんなにつらいか」

これは、中学の先生が言ってたことば、俺、ちゃんと受かったよ高校。塾で言われたとおりにテキストやったし。あんま、頑張った感じしないけど、受かった。すれすれで。

 でも、なんかよくわかんないけど、穴開いてるみたいな気がして、生きてる実感が無いんだよね。ただ生きるのってつらいって言ったけど、先生、俺今幸せなのかな。

 

 すごい、贅沢なこと言ってるのはわかってる。でも、そんな無理して頑張んなくたって

それなりに、今は生きていける。多くを望まなかったら大人が親切に引いてくれた順路道理に寄り道しないで階段登っていけば、それなりの平凡な人生は与えられるのだ。

 今の俺に足りないものって前を見る力なのかも、システムの中に組み込まれてれば頭なんて使わなくたって生きていける。なんで、俺はここにいんだろう。考えるたびに頭が痛くなる。 

 こないだ、準備室で、「俺の人生ってなんなのかね。」って友達と話してたんだ。そしたら、その年で人生なんて考えなくてもっていわれたさ、これってどうなんか。

 

 こんな奴が?って思うような奴が意外に勉強しててテストの点数もぎ取ってく、俺と違ってみんな努力してるから。

頭の中じゃやんなきゃいけないことなんて分かってる。でもそれから逃げてる自分がいる。特にテレビが見たいわけじゃない、漫画が読みたいわけじゃないけど、勉強と関係ないことをして時間を潰してる自分がいる。

 自分のために、勉強しないと。夢のために将来のために…。みんなそうけど、高校に入学できたのだって塾が仕込んでくれただけだし、絶対この学校に入りたいそう思って入った奴はそこまで多くないはず。大体高校に入ったのだって、

進路希望調査で四年生大学って書いたのだって、そう書くのが当たり前だから。高校に行って大学にいって就職するそれが一般的なルートだから。誰かのために頑張るんじゃない、自分のために頑張るのだ。強いて勤めるからこそ得られる人格があるのだと。でも、俺の中にはなから自分なんてものはあるだろうか。どうせ俺は社会の規格から外れてるだって、箱庭の中でさえ、ほんの小さな教室という社会のなかでさえ適応できてない自分がいる。そこからも逃げ出そうとしている自分がいる。だから、きっと社会じゃ生きてなんていけないのだ。僕は立派な大人になんかなれはしない。

 どんな社会にだって自浄作用があるはずだ。りんごの中にひとつ腐ったものがあれば全体が腐されてしまう。

同じような規格を選び抜いたその中に不安定要素などあってはいけない。がん細胞は免疫機能に取り除かれる。教室だってそうなのだ。俺はがん細胞だった、どんなに良性だと取り繕ったところで見え透いてる。本来ならもっとはやくに

取り除かれるべきだったのに僕は残ってしまった。どうして僕がこんな目にあうのか、何か僕が悪いことをしたのか。

そう辛く思ったこともある、けれども仕方が無いのだ社会に適応できない人間は遅かれ速かれ死ぬのだから。僕は普通が良かった。両親もそれを望んだ。でも僕はそうはなれなかった。だってしっかり規格検査にひっかかったもの。偶然じゃない、この世は必然だもの。

 僕は、僕の存在こそが罪だったのだもの。


 こいつの日記はひとまずここで白紙になっていた。近眼の目には野外の街燈の下での読書は目に触る。すこしこめかみのあたりが鈍く痛み出している。ただ、それ以上に晩秋の寒さがこたえる。本を読んで時間を潰さなければ耐えらないような気がした。もう、帰ろう帰って寝よう。たぶん今日の分の予習は昨日のノルマで足りるはずだ。もういいや、誰かにノート借りよ。ベンチの後ろに倒してあったちゃりを押しながら俺は、たった一人街燈もまばらなただまっすぐな道を延々と一時間歩くはめになった。


ある日、頭が痛かった。いつもみたいに晴れない気持ちを落ち着かせたくて、引き出しからカッターを取り出す。愛称「ピーちゃん」。ピーちゃんを左手首に当てる、刃に触れる部分が血の気が引いて白く変色するくらい力強く、するとその場所がしびれてくる。だんだんと感覚が無くなってきたら、もう一度力を右手にこめてゆっくりと刃を滑らせる。刃と接触する部分が焼けるように熱く感じる。いつの間にか、刃を当てたときの冷たい感触で切れ味が分かるようになっていた。傷の深さも、ちから加減や刃を当てて部分に感じる熱さで分かるようになっていた。でも、普通の人が暮らすような日常の中で、平凡に笑うようになってだんだん何も感じないようになっていった。周りの人はリストカットを逃げだといい。友達はこの話題に距離を置いた。当然のことだと思う。僕も、だんだんと落ち着いて悪いことだと認識した振りができるようになった。しばらく、使ってなかった。いつものように刃を当てる。でも、普段と違って体がずんと重くなるような低いテンションも、カッターを持った右手に力を加えさせる胸がギリリとする嫌な事柄も浮かんではこなかった。 

 そう、癖になっていたリスカもなんだかできなくなっていた。きっといいことなんだと思う。

でも、結局また僕は生きている実感を失った気がする。

 「すっきりするの?切ると。どうして切るの?」中学の時、誰かに聞かれた。僕はそのときどう答えたのか、良く覚えていない。中三の夏休みごろに始めた。中三、高一の夏まではまだ気持ちは前向きだった。リスカに前向きも糞もあるかといわれるだろう。確かに。前向きな行動ではないけど、傷口に滲んだ血液の小さな珠を見て張り詰めた気持ちが落ち着いた、傷口から滲む血が、拍動のたびうずく痛みが胸に深くさっさった針を溶かしていくような気がしていた。むしろ、別に何か痛みを感じているわけでもないのに、リスカに逃げるようになった最近のほうが余計馬鹿なことをしていると自虐的な気分に堕される。手首に傷をつけたところで、市販薬を一瓶たった六十錠ほど飲み込んだところで、死ぬ事なんてできやしない。単に苦しいだけだ、用法を守れというあのCMはかなり適切だと身をもって体感した。まず、一瓶なんて飲み込めない。空腹ならなおさらで、水で十錠単位流し込もうとするが、飲み込めずもたもたするうち口のなかで溶け出し、その苦さで死にそうになる。飲み込めたとしてもちろん身体は自然と毒を出そうと吐き気をもようす、眠気で意識が朦朧としていても、胃腸は単独で毒素排出のミッションをこなす意識が朦朧とするような深い眠気の中でも吐捨物は出る。うつぶせで寝ていて、腹部の収縮で上半身が尺取虫のように折れ曲がったそして、毒素が胃腸から分泌液と共に、口からシーツの上へ流れ出す。あの気持ちの悪さは半端ではない。胃洗浄なんて簡単にしてくれないし、洗浄だって苦しいという、薬事法は守るべき。基本取扱説明書は守ったほうがいい。

 夏休み前のある日部室にこもって「俺の人生なんなのかな」そうため息代わりに吐き出した言葉を、

「たった、十六で人生のことなんて考える必要ない」

 くすみがちな僕の視線をいつも気に留めてくれる友達がそういって受け止めてくれた。

だけど、僕の自身の中ではいつも光の中で輝くように生きてる彼らがうらやましくて、

どこか憎らしくてたまらない気持ちになるのだ。同じだったはずのスタートラインでもこの時期になれば、差は歴然なのだ。どこの世界にも頑張ってる奴はいて、そんな人たちが大きな流れにほんのすこし巻き込まれていく。僕はその流れにはとっくに置いていかれてたし、努力とかはなからどうでも良かった。所詮自分は社会の最底辺にしかいられない。昔も今も、地べたから、ずっと遠くの高いとこにかすんで見える小さな光を眺めていたのだから。

 こうやって、とりとめもないことをTV画面前で電磁波を無意味に浴びながら考えていた、このころにはもうゴールデンと呼ばれる時間帯はとっくに過ぎてチャンネルを回しバラエティーを梯子する必要もなくなっていた、課題終わらせなくてはとぼんやり考えながら、親の忠告を聞き流していたらもう、時間は深夜だった。本当は夏課題をやるべきでノルマだって当然用意されているだけど、「この夏は英語を何とかするって息巻いていた良い子の自分を半ば監禁して、深夜僕はTVの画面にかじりついていた。流石に、ほぼ一日何らかの画面の前にかじりついていれば飽きる。それに、うちにはアナログ一家だから、深夜になれば通販番組しかやってない。そろそろやろうかと英語のワークを開いたとき、聞きなれたアニメソングがテレビから流れ出した。

「こんな時間にやってたのか。」

 PC画面の小さな動画に流れていた、一度聞いたらしばらく耳を離れない軽快なオープニングもTV画面を通じてみると、新鮮だった。なんで、こんなにはまってしまうのか。

アニソンで育ったゆとり世代、しかたないってことにしておこう。繰り返し聞いて、歌詞も覚えたアニソンも通常のテンションで聞くとそのあまりの電波度に驚かされる。あまりにも二次元に理想を求めてしまう自分の危険性を突きつけられたような気がした。

 空を眺める人は向上心のある人です。小さいころから洗脳を浴びている。単にテレビを見ていた、いつもの戦隊モノかアニメだったはずその合間に流れる美しく彩られた言葉に悪意なんて感じなかった。いつの間にか、青い空がまぶしくて眼に刺さるようで見上げることもできなかった。校舎の窓から眺める五月の日差しにただ碧く染められた空は澄んでいただろう。僕は、青空を地上に求めるようになっていた。にわか雨がしゃんと駆け抜けいった水無月の朝のまるで清潔そうな大気のなか、じっとりとぬれたアスファルトの中に、ひとつの青空がただただ淡くそっと閉じ込められているのだ。見つめることもできない青空は小さな小さな水鏡に映りこんで、その不可思議な水銀に溶け込んだ光はそのときの僕にはほんとうに心地がいい美しさだった。

 

 リスカの描写を書いてそれを人のところに押し付けていく奴の気が知れない。それをしっかり読んでる俺もまた異常なのかも。昔からこうだった。だから人に嫌われるのだ。でも、最初はただイラついただけの他人の日記だけど、あっけなく終わったあいつの人生を破片を俺は見ていることになる。何か受け止めてやらなければいけないのかもしれない。


 また、数ページの空白を残して、文章が自堕落に続く。大体一人称がバラバラなのがきになって仕方がない。これは日記と呼べるものなのかと疑問が浮かぶ。このさい多少読み飛ばしたって、アイツは仕方がないと笑うだけだろう。コイツと俺は正反対だとみんないうけど、俺はずっとそっくりだと思ってた、だから妙に気持ちが悪くて、避けてた部分も当然ある。でもやっぱ違う、奴はしんで俺は生きてる、残った俺は何をするんだろう。

ノートを閉じると、手紙が入っているのに気がついた、ま、内容で手紙って判断したんだけど、バツが大きく書かれて、これはどうやら書き損じらしい。

そう、ずっと君に言いたかったことがある。変な意味じゃないし、深い意味もないからそう変に取らないでね。君も知っての通り僕はとても口下手だから、あんまり口頭ではいいおしゃべりができない。だから、こないだ君が本屋で声を掛けてくれた時すごくうれしかったし、信じられないような気持ちだった。会いたいなと、顔が見たいなとちょうど思っていたときだったから。

 もともと僕はマザコンの気があるのかも知れない。必要以上にべったりだなって思うときもあるし、うちの親は過干渉な癖に気分屋だから進路だったり成績だったり結構大事なとこで無責任だったりする。二人ともね。小さいころから兄と比べられるのが大嫌いだったし、僕は独占欲の強い人間で小さいころは母が兄ばかりかばうようで、それが絶対許せなかった。でも、高二の今でも僕は愛されているのか不思議に思うときがある。もちろん親に心配とか迷惑かけどうしだから、母が嫌になる気持ちも分かるのだ。僕だって自分が親の立場だったら、僕のような人間はさっさと見限っているかも知れない。高校に入って昔以上に頻繁に母方の祖母の家に出入りするようになって気がついたのだけど、最近顕著

に母と祖母が似てきているのに気がついた。正反対のような気がしていたのにそっくりで、

祖母は昔から僕に良くしてくれる。小遣いをせびるうるさい孫を可愛がってくれる。僕は対して対価を払いもせずにいるのに。血縁の怖さなのか、それとも孫という概念がよりよく事実をゆがめてくれているのか。祖母は母が好きだ。僕が孫として可愛がられているのは単に僕が母の子供で祖母の孫だからなのだ。こんなことを悩むのかと君はいぶかしかも知れない。あたりまえのことだろうという、祖母も母も。でも、僕はそれが、母が祖母が僕に向ける言葉に違和感を覚えてたまらない気分になる。母も祖母も本来なら僕とそりが合わないはずなのだ。祖母も母も普通のおとなしい子が好きな、思慮深くて礼儀正しい優しい子。でも、僕は昔からそんな子ではなかった。この前、祖母が僕に「昔はもっと明るかったのに…」祖母は暗い子は嫌いだと静かにそういったんだ。僕がなぜだか、胸がつまって目頭がじんと熱くなった。

僕だって、おぼろげだけど、ずっと昔もっと明るくて毎日がたのしくて、生きているの本当に嬉しかった。そんなころが確かにあった。いくら僕の記憶力があいまいだからといっても、確かに君にあったばかりのころの僕は写真のなかだって笑ってた。いつの間に写真が嫌いになったのか。たぶん、昔を見れなくなったとき、自分を直視できなくなったとき。

もともと見えてなんかいないのかもしれない。きっと見上げた空の青さが、本のちょっぴりつらくなってきたころ、僕は自分のことが大嫌いになったんだ。

 最近、母と距離を感じるようになったんだ、自分がとるようになったのかもしれない、母は必死だよ、僕のことでも兄のことでも。でもなんか違うんだ、僕は心配を掛けるけど、母の好きな僕にはなれないけど、でも僕のことを分かってくれなくてもいいでもまっすぐみてほしかった。僕だって自分のこと全部受け止められるわけじゃないけど一緒に分かって欲しかったでも、母の僕を見る眼は僕が望んだそれとは違ってた。これってやっぱり僕が傲慢なのかな。僕が母すきな風な普通の子供になれなかったからかな、やっぱり僕が変な子だから。こんなことは君に話すべきじゃないことぐらい自分でも分かっている、けど話さずにはいられないんだ。君には本とに迷惑な話だけど。甘えている、自分でも分かっているんだ、もっと頑張るベキなんだ。でも、できることもしないで僕がだらけているから。母の言葉が刺さるんだ。すっと力が抜けてなんかどうでもよくなるんだ。外のことが多少なんとかなるようになったから今度は内のことに逃げているだけなのかも知れない。仲がいい友達と話してても友達のちょっとした話の中に母の陰がみえてはっとするんだ。僕と母のつながりは単に血だけなのかも知れない、友達との絆もただ友達って言葉が支えてくれてるのかも知れない。どんなに頑張って全部の悪いこと元凶が僕な気がする。でも、それも自分が自分の状況を変えられないことから逃げるための口実かもしれない。自分らしくありたかった、いつだって。母もそれをのぞんでると思ってた。小さいころ、テレビをみる時間や本を読む時間が多かった。興味のあることは結構ぱっと覚えてた。そうして、はいった難しいことを母にはなしたり、クイズ番組の答えをすっと言うと母はほめてくれた。喜んでくれると思ってた。学校のみんなも僕の自分なりを分かってくれてると思ってた。でも、全部僕のおしつけでみんなには煩わしかったんだ。今だってそうだ。

 あの時、本屋で君が僕と気がついて声を掛けてくれたこと、今でも涙から出るくらい売れしい。昔の友達に本屋で会った、それだけのことだけど、僕にはそれ以上の意味があったように思えた。君が僕に気がついてくれたこと、それだけのことが僕には本とに本とにうれしかった。もちろんそんなことはあり得ないことで、可笑しな話だけど君が僕に気がついてくれたことがまるで君が僕のことを全部分かってくれたような、自分でも肯定できないような存在をまるで肯定してくれたような…、こんな重いこといってるから母も疲れてしまうのだよね。僕はどこかに母の影を追いかけているのかも知れない、最近そうはっと気がついてすっと寒気が走ることが多いんだ。土日は寝てばかりいる、ただ眠いんだ。

 勉強しないとまずいのだけど、近頃じゃ危機感も湧かなくて、なんだか力が抜けてしまって、少し情緒が不安定かもしれない。何も無いのに泣きたい様な気分になったり、笑顔がとんと消えてしまったり、なんだか二次元の中にいることが多くなったよ。

 この前のことだけど、大体二、三週間前のことかな。珍しく習字教室に行ったんだ。小学校のころから通っててでも、あんまりまじめじゃないからすごくなーなーでやっつけでおわらせることがすごく多いんだけど、でもずっと通ってたんだ。籍だけなあ親も持ってるし。月謝がもったいないからって母が五月蝿いんだ。でも、たまに筆に心傾けてみるとこれが結構すっきりするんだ。それなりに、挨拶だったり言動にも注意を払う必要があるから、この場所での僕が一番まじめかもしれない。そんな中でも、習字って字にこころ映えするらしくって、その日の体調、気分、悲しかったら、かなしいまんま字に現れるらしくって。 大人って見てないようで意外に子供のことに注意向けてたりするじゃない。そこの奥様もそんな感じで、日常会話以上に話すことは少なかったと思うし、意図して関わったわけじゃない。でも、小さいころから出入りしているからなのか、精神的なぶれとか全部わかってたみたい。親でも気がつかないのに、他人て結構きがつくよね、先生とかも。

 こないだ、教室に行ったときのことなんだけど、いつもみたいに、ま、その日は比較的まじめに書いてはいたんだけど、ノルマこなしてTVアニメに間に合うよう終わらせて、片付けをして、挨拶済まして帰ろうとしたんだ。

 そうしたら、奥様が僕の名を明るい声で呼びかけ、僕は引き止められた。

 奥様は全部ご存知のようだった、もちろん僕は自分のことなんてはなしてなかったけど。隠してもいなかったからずっと前から手首の傷はご存知だったのかも知れない。(毛筆を書くときには両腕とも腕まくりする、小さいころからのことだったから袖をまくらないとどうにも気持ちが悪いから)夏休みの前からずっと心配していた、高校を辞めてしまったらどうしようと思っていたと奥様は僕におっしゃった。そして、僕の両肩に手をそっとおくと、もう大丈夫だとそうっおっしゃった。僕は泣きそうになったけど、なんだかとってもおかしな気がしてぐっと我慢した。本とに知らなかった。こんな不意打ちはこまってしまう。教室からの帰り道、僕は白く光る月が何故だが眼にしみるように熱くて、ぐっとかみ締めて家に走ってかえった。アニメに間に合わないし、なんだか胸がいっぱいだったんだ。

 人間関係が得意じゃないのは君も知っての通りだけど、やっぱり人間って好きじゃないような気がする。どこまでも利己的でいつまでも個人の利益を追求しつづける。僕の後ろで廊下を歩きながらクラスメイトが僕の悪口を言うのが聞こえる。僕は地獄耳なところがあって、それは本当に僕の悪口なのかといわれれば確証はないかも知れない。けど、被害妄想に取り付かれがちな僕には十分な言葉がぽろぽろ零れ落ちる。

 気分がずんと塞ぎこんでしまって、授業どころではなくなってしまった。保健室で少し休んで、涙ですこしストレスが緩和される。入れ違いにさっきの子らがはいってくる。どうしてそんな言葉が飛び出ししてくるのか、本当に驚かされる。「大丈夫?」いったいこのお方は僕の何に対して大丈夫と言ったのだろう。体調?頭?(ええ、問題ないです。僕とっくに壊れてる。)「大丈夫。」理想を語れば、にっこりと笑って、ありがとうの一言でも言えれば、それが一番望ましい。ただ、思いもよらぬ人の言葉に僕はただ面食らってしまった。


 宿題はいえに持ち込まない主義、やりたくないけど、怒られるのは避けたいのでなんとしよう、そして生み出されたのがこの居残り勉強。そして、宿題の合間の休憩に本を読むのが一年のときからの習慣になっていた。

「おい、雄也まだ残ってんのか、暗いぞ電気つけろ。」

「はい、すいません。ありがとうございます。」

 放課後、予習も片がついたので、おれは例のノートを取り出す。昨日の手紙は誰宛だったんだろうか。なぞの小包の正体は一冊のノートあいつが俺に残していった、たった一つのアイツの記憶。

@E

  「聞いて欲しい話がある。」どんなに善良ナ人間を装ったところで僕の現実が消えてなるわけではない。どんなに頑張ったって何か成果があるはずも無い。苦しむくらいならなんで頑張る必要があるのか。 あなたの人生を生きろとはなされたところで私に何ができるだろう。誰も私に必要性なんて感じてないし、意味なんて無いことなんてはなからわかっていたことなのに、それでも人の優しさにしがみついて生きてきた。私がしていることは、違った視点から見れば単に、自分のわがままを突き通しているだけなのに

何でいかされてるのか、何で生きているのか、何で私は私として存在するのか。

 病気で苦しんでいる人が画面に映れば、僕は心から安堵できるだろう。物語を眺めるようにそっと「かわいそう」とつぶやいて。その人の不幸を心のそこで甘美に味わっているのだ。いつだっていい。別に死んでもかまわない。殺してくれるのであれば、誰かに殺されてしまいたい。開放して欲しい。でも、生きてる。死にたいくらい逃げたい。もしかしたら、誰かが僕のために涙をながしてくれるかもしれない。

 僕は愛されている。いつのまにか、誰か他人のこころのぶれに入り込むようになっていいた。それを人が呼称するなら私は悪魔なのだろう。善人の振りをしながら、人の心の弱さを攫んで、じわじわと苦しめていく。あぁ、この人は私のために苦しんでいる、私のために悩んでいる。それだけ、私はこの人の心の中にいる、そう思えることで初めて自分が愛されていると実感することができた。人を苦しめずには、私の心に平穏はない。どこかに痛みが無ければ私の心は正常には機能しなくなっていた。死ねばいい、消えればいい。

 私が消えるか、世界がなくなるか。見えてはいない真実だけれど、私の中にはこの二つの選択肢しかのこらなかった。別に何か特別なことが起きたわけでもない、誰かの目に留まったときに、誰かがの心を締め付けるようなそんな、エピソードなんて何も無い。

 もっともっと、つらくてもがんばって生きてる人はいるのだ。だから私の今がある

もっともらしい模範解答を並べながら、私は画面に向って、心の中でほくそ笑む。

 まだ、大丈夫。

人の不幸を食らって自分の今の糧にする。

 闇の中にうずくまって静かにほほを伝うあたたかな感触に意識を向ければ、小さな光は失われただ深い闇が広がる。そして私は闇に溶け込んでいくのだ。 


 こっちまで、暗くなりそうなものを残さないでいただきたかった。こいつの人生に光はなかったのか。それとも光は当に受け付けられない体質になっていたのかも知れない。暗いところに目が慣れすぎるといざ光のもとに戻ったときにまぶしくて目が開けられなくなる。寒いところに長くいて、あたたかい場所にもどったとき、冷え切ったからだがむずがゆくて居心地が悪い。みんなの輪の中で、冗談をいってわらいながら、あいつはどこかでそんなそぶりをみせなかっただろうか。


 九月!ひっやほう。新学期。こいつらみんな消してやろうか。もちろん二次元依存症な永遠の厨房がいくら妄想を展開したところで、世界が変わるわけじゃない。高一のとき、タルム飲んで死ね、といわれた僕は何気にあのおねぇ様が嫌いじゃない。好きでもないけど。文化祭で展示物を夢中になって作っていたときだ。僕は、モチーフに手を選ぶことが多かった。描き易いのもあったし、それなりにこの曲線が気に入っていた。僕の手は綺麗ではなかったし、傷も多くて晒すような代物ではないけど、美術館で見た手のオブジェは

綺麗だと思った。そんなときまたニュースを聞いた。息子が母親を殺したのだと。彼も手をモチーフに何かしたらしい。僕はどきりとした。かわいそうなことだと同情した。けれど、その反面僕はうらやましかった。彼は、よくも悪くも彼自身の手で世界を壊した。僕がやってもできないことをやり遂げた。それは決してほめられるようなことではない。罪は罪。だけど、立ち止まったまま何もできない僕なんかよりはるかに人生を生きている。

 苦しみを示すこともできず、自分を偽って、逃げて、甘やかして、むしろ苦しんでる振りをしているだけだ僕は。自分が思うような人生を生きられないことを、自分ために努力しない怠慢を人のセイにして、社会のせいにして誰かのせいにして、逃げてるだけだ。


 ここまで読むと、その先には何もかかれてはいなかった。毎日毎日少しずつ読んできたこいつの日記。ここから先が書かれることは永遠にありえない。だってご本人様はもうこの世に存在しないのだから。なくなった一つの遺品。消えたノート。俺はそれを覗き見ている。ただわかることは、この人の命日と俺の誕生日が一緒なことぐらい。


 気がつくととっくに門限を過ぎている。また、携帯取り上げられるかも知れないな、lっこれ、条例で定められた外出時間まではもう一時間を切っている。こんな田舎道だからそうそうにパトロールに出くわすことはまれだけれど、こんなご時勢ルールを守れない奴は強制的に法によって管理されることになる。

 ただ今この国の憲法には戦争はしないと書かれている。そしてそれを塗り替える可能性を持った僕らはこの自分自身の明日で手一杯。大体ゆとりは関係ないことは考えないように生きてきたはず、めんどくさいことには頭が働かないんだ。

 考えることに疲れた大人は僕らの投げかける無常を「今の子って難しいから」って固唾ける。けど俺らはどうすればいんだ。中途半端に子供、中途半端に大人、義務の無い代わりに権利もなくて才能も実績も学歴なんかあてになんなくて、やりたいことも興味も夢もなくて、意志とか野望とか大望なんてのはかったるくて、画面の向こうの大人の茶番に踊らされたり飽き飽きしたり。小3ぐらいに始まったゆとり教育はもうすぐ息の根を止められる。そして俺らはゆとりの称号を得る、成長が鈍った完成から崩壊に向う社会、孤立しながらも、世界の隔壁に必死にすがり現実逃避が蔓延ったこの国のなかでどう渡り歩こう。

 潰れるならはやいうちに潰れよう、何もできない自分を受け止めるだけの器が欲しい。才能なんてもてないから。そう頭のなかで考えを丸め込みながら、アイツの日記を机にしまった。教室は斜陽をうけてノスタルジックに朱に染まる。ぐったりとした僕の心地と机の影、誰もいない校舎の陰が妙にダブって意味の分からない不安が頭をもたげてきて俺はなんだか、助けを求めたくなった。

 

日記の終末は俺に受験シーズンの到来を告げた。毎日すこしずつ読んできた日記、よみはじめてから今日が一年。これを読み終えたらきっと勉強しようと決めたいたから、だから勉強しなければいけない。皆が通る道、アイツが拒んだ道、あいつ等が歩めなかった道。

 誰かが敷いたレール、脱線してばっかで組織の安定感にはなじめないし、いつまでももやもやした疑問符が消えなくて息が苦しくなってくる。でもこれは俺が自分で選び取った道。だから、倒れても、休んでも、最後は行く。僕はいつか死ぬ、そのいつかに逝き付くまでは行く。いままでもそうだったこれからもそう。誰もいない廊下を全力で走る、階段を駆け下りてほほに風が謳う、体の中で鼓動が暴れる。職員室につついた廊下で息を整える、ゆっくりと深呼吸しながらまた一歩を踏み出す。目をやるとちょんと剣が峰が顔をだす。なんか安心する。苦しいししんどい、それにかったるし、やっぱだるい、けどどっか楽しい。よくわかんなくても、きっと大丈夫。もう一度息を思いっきり吸い込んで、吐き出した。「失礼します。」ドアを開ける。

 鍵を戻して職員室を出る、すると先生が声を掛けてきた。

「雄也、まだ残ってたんだ。なんかいい顔してんね、なんかガンばってんじゃん。」

「なんか、すっきりしたんですよね。」

そうだ、自分は自分のためにしか生きられないかもしれない、自分が幸せってことは誰かの幸せを奪ってることかもしれない、けどそれでもいい。

 俺は生きてる、だから一歩だけでも前に進む。それでもいんだきっと。


 上様(アルバイトに奔走且つ多重債務者、破産申請中)と柳の会話

 『ネェ、こんなんで御終い。鬱くしかな人生じゃんこれじゃー。なんか企画書と打ち合わせ違うんだけどー。いくら天の声がすくなかったからって可笑しくね。(笑える)』

『えーてか、カミサマがちゃんと働かないから(本業で)だからユーザー減るんですよ人間界。てか、地獄での生き返り希望者殺到で悪魔が下界から消えるってどういうことですか。』

『え、だって向こうLAN引いてあるらしいじゃん、無線の、衛星回線から引っ張ってるらしいよ。』

『でも、そんな亡者が殺到してたら、通常業務で手一杯で悪魔さんとか鬼さんって営業回れんのかな。』

『あーでも、地獄一日見学ツアーとかはなくなったし、希望者殺到であとはまめまきとか鬼やらいとかピらミットのバイトとかじゃない。なんか富士kyプの病院のバイトで声潰したとか、左端が嘆いたたけどー、なんか、ニートしてぇとかいってた。』

『(なんで、局地的なんだろう。)』

『てか、あーラーメン屋どうしよう…鬱だ。』

『あ、ね原稿残ってるから、あの例の演説したら』

『てか、カミサマガちゃんと働かないから僕賽の河原じぇん蛾の予定だったのに、希望者少ないから、全力でミナライデスヨ。しかもないこの憂さ耳てか、うザ耳。萌え要員とか意味わかんない』

『だって、みんなあがってこないしすぐ生き返っちゃうし…腹減った。ラッメンセットーは売れないし…』

もう、キリがないんで勝手に原稿うp。


 みなさん、命は大切に。神だって、死んだって、むしろ生きてる方が楽しいですって。



P・S 狐憑き


 君は怪奇小説を読んでいる、僕は怪奇小説を生きている。それが君と僕の違い。

 この前の日曜ちっちゃいころ遊びにいったように、公園へ散歩に行ったときのことだけどね。その帰り道のことさ。ガソリンスタンドを過ぎてね、坂道をのぼるんだよ、ずっと考えながら歩いていたんだけどなんだか幸せで幸せでたまらないような気持ちになったんだよ、だから君に独り言を聞いてもらおうと思ってね。迷惑な奴だろ。

誰もいなくなった廃墟のホテルが丘の上で僕を向かえる。僕には世界がちょっとやさしいように見えるんだ。僕は近眼だから、眼鏡が似合うような土台は持ち合わせてないからあまり普段は使わないんだ、失くしてしまうしね。ドジかな…でもそう呼ばれるのは好きじゃないなやっぱり。

君は傾国を知っているかい、本で読んだんだ。国を傾けるほどの美人ほら誰だっけ、玄宗皇帝の后のようなひとさ、楊貴妃。

たったひとり僕は傾国を知っているよ、もちろん君の事ではないけど、君はどちらかといえば可愛らしいと思っている次第。そう、傾国。富士山だよ。こっち側では男神ではなく女神と理解する方が自然かな。楊貴妃とは全く違うタイプだよ、当然ただ男が骨抜きにされるというより、怒らせたら国が滅ぶっていう意味で僕はたとえたかったんだけどね。

僕の見る世界は、本当に美しく感じられるんだ、特に夕方なんか…僕はたった一人で家路へ向う。一番に夕焼けに染まるのは富士山、富士から藤へ藍から哀へそうっと染まっていくんだ。彼女に向き合っていると本当に時間を忘れてしまう。そして僕はなんて幸福なのだろうと涙が伝いそうになる。何千何万と彼女の姿を返り見てきた、僕にとっての富士山ってなんなんだろう、ちっちゃい時にはね、富士見風呂に入れたんだ、窓から富士がみえたから。裏山に倉庫が建ってできなくなってしまったけど…僕は彼女に惚れ抜いているのかもしれない、もっとどこか心の深いところで、当たり前すぎて忘れている幸せすべてを彼女が実感させてくれたから。

剣が峰の茜色がすべで藍に呑まれたころ富士の傍らでふわりと薄ぼんやりとしていた上弦の月が一瞬で真珠の輝きを身にまとうんだ。煌々と白くすんだ光。

月はそこにただあるんだね。誰も美しいなんていってくれなくても、見てくれなくたって変わらずに美しくあるんだよ。宇宙の法則とか数字が絡むような難しいことは好きじゃからわかんないけど、そんなもんはあとで人間が付け足した言い訳のようなもので、誰からも必要とされなくたって月はあの空に輝いてる。綺麗だとか必要だとか、そんなのは誰かが勝手に思ったり感じたりすることで、ただそこに存在してる。これって凄いことじゃないかな。

なぜ、そこに月があるかなんて考えたってしかたない、科学で説明できるかもしれないけど、それが正解なんてのはちょっと変だよ、それは人の理屈だよね。誰の役にたってなくても、そこにあるってことは必然なんじゃないかな。

それは月にも僕にもきっと言えることで、僕はなんでこんな人生になちゃったのかとか、

こんな人生生きてる意味とかあんのかなって死にたくなったりもしたし、悩んだけど、ここにこうして存在してるってことは意味がないようで実はたくさん意味があって、意味があるようでなくて、何が言いたいのか混乱したけど、僕はここにいていんだよね、きっと。

 頑張れないし、無駄に人生歩んでるかもしれないし、こういう変なことばっかかんがえ

やるべきこととかなんもできないけど、僕の見る、僕の感じることのできる世界は凄く綺麗なんだ。君にも見せてあげたいくらい。だから、きっとこうしていることだって凄く素敵なことなんだよ、たぶん。

 そう、あの綺麗な月が教えてくれたんだよ。





 


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