切れる鉄扇
下書きが消えたのでこんなに遅くなったと言い訳してみます。
更新速度はこれから落ちると思います。今回はすごく短いです。
「そういえば、禊が昨日から帰ってきてないらしいぞ。師匠が言ってた」
樹の作った朝食を寝ぼけ眼で少しづつ食べていた葵はポツリとつぶやいた。樹は食事の手を止めずに言う。
「禊なら何があっても大丈夫だよ。なんていったってあの森宮夫婦の息子だよ?前も外国でサバイバルさせられたらしいし、きっと叔父さんが修行って言って禊をどこかに置いてきて、そのまま忘れてるんだよ」
「そうだな。前もそんなこともあったしな。心配する事は無いか。ご馳走様」
葵はすべて食べ切り立ちあがる。
「今日もゲーム?」
「ああ。ソロだから人よりも回数をこなさないといけないんだ」
「へぇ、頑張ってね」
「ああ。っと、そうだ。今度期間限定ダンジョン行かないか?」
「ナニソレ?」
「お前、公式サイトも少しは見たほうが良いぞ。今回の期間限定ダンジョンはスタートダッシュのために用意された他よりももらえる経験地が多いダンジョンだ。レベルを上げるにはうってつけ。ただし、誰かがダンジョンボスを倒したらダンジョンは消える。あと、ダンジョンを最初に攻略した奴にはプレゼントがあるらしい」
「そんなものがあるんだ。いいよ、何時にする?」
「そうだな、現実の時間で午後1時っていうのはどうだ?」
「分かった。じゃあ今日はお昼一緒に食べる?」
「ああ。」
「了解。2人分作っておくね」
「ありがとう」
樹は家事をすべて終わらせログインした。
* * * *
今日の目的は葵とのダンジョン攻略のために武器を新調すること。そのためには大量の鉄鉱石が必要だ。
イツキはウルカの北にある鉱山に向かう。
鉱山は人がいなかった。それをいいことにイツキはどんどん奥へ進んでいく。幾つか目の分かれ道を進んだすぐ後のことだった。イツキは微かな音を感じて振り返る。
「蛇?」
坑道の壁に目を凝らすと、壁と同じ色の蛇がくっついていた。これだけなら倒さなくてもいいかとイツキは先に進む。
イツキが進むごとに後ろから聞こえる音が大きくなっていく。
さすがに心配になったイツキが振り向くと、壁一面に擬態した蛇。もう数え切れないほどだ。
「そろそろ不味いか」
イツキは鉄扇を取り出す。それとともに、イツキが歩んできた道からまるで流れる水のように大群の蛇が這ってくる。
「これは不味すぎる!」
イツキは天井から降ってくる蛇を払いのけ、壁から跳んでくる蛇を鉄扇で払い、地面を這う蛇を踏み潰す。しかしこの蛇はロックスネークだったようで一撃では葬れない。イツキは何度も繰り返す。
「長かった……」
坑道に立ち尽くすイツキ。坑道の床はロックスネークの破片が覆い、層になっている。
イツキはメニューを開き、ドロップアイテムを確認する。するとずらりと鉄鉱石が並んでいた。
「手間が省けてよかった」
イツキは気分良く坑道を抜け、トーイ老の鍛冶場に向かった。
トーイ老に一言断り、鍛冶場を借りる。
イツキが欲しいのは切れる鉄扇。師匠が使っているものと同じものだ。この日のために師匠から作り方を教えてもらってきている。といっても、OLO内では省略される作業がほとんどなので、あまり刀と差が無かったが。
イツキは鉄鉱石をインゴットにし、薄い鉄の板を作っていく。出来る限り薄く、5枚ほど作る。そしてその板の下部に要を入れる穴を開け、天を見栄え良く丸くし、切れるように研磨する。最後に要をはめ、完成だ。
試しに開いてみると、何も問題は無い。使い勝手を確かめるために振っていると、店のほうからトーイ老が顔を出した。
「鍛冶場の中で暴れないでくれよ。壊されたらかなわん」
「あ、すみません。すぐに出て行きます。ありがとうございました」
試し切りがしたくて仕方が無いイツキはすぐに荷物をまとめ森に向かった。
ついでに何か食材でも取ってこようか。そう思いながら歩くイツキに出会った運の悪いハニーベア。
イツキはこれ幸いとばかりに襲い掛かる。
ハニーベアがイツキに向かって動き出す前に、イツキはハニーベアに向かって走る。そのまま急所、首を狙って扇を一閃した。ハニーベアの首が飛ぶ。
……飛んだ?え、ハニーベアってこんなに弱かったっけ。
イツキは疑問に思うも、ハニーベアを解体する。ハニーベアの肉は甘く、デザートにうってつけだ。カリンさんのところに持ち込んで何か作ってもらおうか。
疑問を忘れてしまったイツキは大漁と鼻歌を歌いつつ、ウルカに戻っていった。
森宮禊
樹や葵の従兄で森宮夫婦の息子
ちょっと思考がおかしいが森宮夫婦の英才教育という名の刷り込みのせいだと思われる。
禊の常識は樹や葵が教えたものなので一般的な常識とはいえない
実は樹よりも禊のほうが好きという罠。
つい樹をおろそかにして禊書いてます。