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森宮道場

本日二話目



 朝、葵が朝食を食べているとき、樹は言った。

 

 「葵、今日師匠に呼ばれてるから準備しといて」

 「えー樹だけ行けばいいじゃん」

 

 不満げに葵はいう。今日もOLOをするつもりだったんだろう。

 

 「二人ともって書いてあったんだ。きっと叔父さんが手合わせでもしてくれるんじゃない?」

 「よっしゃ!」

 

 とたんにやる気に満ち溢れる剣術馬鹿。

 はやる葵を抑えつつ、二人は道場へと向かう。

 





 「やり直し」


 師匠に会った瞬間、道場を追い出された。

 

 「言ったでしょう。入れ替わるなら完璧に最後まで。中途半端は駄目よ」


 そういってぴしゃりと戸を閉められた。

  

 「一回撤退しよう」

 「うん」

 

 二人で近所の公園のトイレに入る。

 

 「たぶん今回叔母さんが気に入らなかったのは樹の口調と私たちの服装だと思う。後は声の高さ」

 「声の高さって……。葵はともかく俺はきついと思う」

 「樹。私な。()はいけると思う。樹声変わりしてもあんまり変わらなかったし」

 「それはいわないでほしかった」

 

 反省点を指摘しながら樹と葵はお互いに服を交換する。

 

 「あー、声高くなってる?」

 「ああ、いけてる。さあ、行こうか」

 

 もう一度戸をたたくと、今度はにっこりと笑った師匠に招き入れられた。

  

 「いらっしゃい、葵さん、樹君。樹君は主人が桐の間でまってるから行ってあげて頂戴」

 「はい!」

 

 葵は元気に返事をして去っていく。

 

 「葵さんはこっちよ」


 師匠についていくと鏡の間に案内される。

 鏡の間につき、振り向いた師匠は話し始める。

 

 「葵さんはいつもズボンばっかりね。たまには叔母さんにスカートをはいた葵さんを見せてくれないかしら」

 

 ため息をつき、じっと樹を見る。

 明らかにからかっている。

 コレに屈するわけには行かない。というか行きたくない。女装はゲーム内だけで十分だ!

 

 「そんなことよりも師匠、早く手合わせをしましょう」

 

 笑顔で誤魔化し、壁際の棚から鉄扇を取り出す。

 師匠はいいことを思いついた、というように手をたたき、 


 「じゃあこうしましょう。手合わせて私が勝ったら午後は私とお買い物ね!」

 「え!?」

 「可愛らしくしてあげるわ。大丈夫。嫌なら勝てばいいのよ」


 師匠も扇を手にする。樹はいつ始まってもいいように集中する。

 

 「いくわよ」


 そして彼らは動き出した。

   





 扇が樹の首にぴたりと当てられる。

 

 「……参りました」


 樹がそういうと師匠は笑って扇を下ろした。


 「そろそろ葵さんも私と同じ鉄扇でやってみない?」

 「流石にちょっと……。私まだ人間やめたくないので」

 「あら。言うようになったじゃない」

 「恐れ入ります」


 師匠の鉄扇は特別製である。なんと檜扇の木簡部分が鉄でできている。そして、天の部分が研いであり、切れるようになっているのだ。こんなものを練習でも振り回す師匠はもうすでに人間ではない。

 見た目はほっそりとした大和撫子だが、中身はきっとゴリラだと昔から常々思っている。


 「葵さん?何を考えたのかしら」

 「いえ。何でもありませんよ」

 「そう?じゃあ、午後からは買い物ね。私、娘も欲しかったのよね。もちろん服代は私が出すからまた着てきて頂戴ね」

 「……ありがとうございます」

 

 樹が苦虫を噛み潰したような顔で礼を言ったがそれも仕方が無いことだろう。


 「そうだ、葵さんもVRゲームを始めたんですって?どうかしら、楽しい?」

 「はい、とても。ゲームの中にも鉄扇があったのでそれを使っています」

 「それはよかったわ。実践の機会が増えるわね。樹君から主人に『ゲーム内で森宮流を使って良いか』って言う相談が来たの。葵さんもぜひ森宮流扇術をゲーム内で使ってね」

 「いいんですか?」

 「ええ。そのほうが面白いし、あなたも森宮流扇術の継承者だもの。好きにしていいのよ」

 「ありがとうございます」

 「さて、お昼まで稽古しましょうか」

 「はい!」






 師匠に振り回され、気づけば森宮家で夕食まで取っていた樹はふらふらと歩いていた。

 

 「大丈夫か?」

 「コレが大丈夫に見える?」

 「いや、見えない」

 「女の子の買い物の大変さ、思い知ったよ」

 「そうだな、みんな選ぶのが長くて待つのが辛いし、まずあのテンションについていけない」

 「分かるよ」

 

 大量の服の入った袋を持ち、とぼとぼと歩く樹。

 あまりにたくさん買おうとするので金銭面から服を遠慮した結果、古着屋でかわいらしい服をたくさん買われてしまったのだ。しかもその前にはたくさんの服屋に連れまわされ、試着をしている。

 もう、精も根も尽き果てた樹を見かねて荷物を持とうと葵が提案するが、にべなく断られた。

 

 「女の子にこんな重いもの持たせられないよ」

 「そうか」

 

 葵は恥ずかしそうにそっぽを向く。

 ぼんやりとした街灯の明かりが二人の行く道を照らしていた。




 「あ、そうだ、葵」

 「どうした?」


 お風呂セットを持って階段を下りてきた葵に樹は言った。

 

 「この服、俺の部屋に置きたくないんだけど葵の部屋においてくれないかな?」

 「断る」

 

 葵はさっさと風呂に入り、ゲームをしに自室に上がっていった。

 樹はこの服をどうしようと思いつつも、服などを洗濯機に放り込み、タイマーをかけておく。

 そして、風呂に入り、髪を乾かしてから樹もログインした。


自分でも分かりにくくなってきたので説明。


樹の一人称は俺

葵は私


師匠=二人の叔母は二人が入れ替わって稽古していることを知っています。

そして、やるなら完璧にと徹底させています。


どこかで入れられたら良いなっていう設定。

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