期間限定ダンジョン3
お久しぶりです。
まだ読んでくれている人がいることを願って。
セイにどんな女の子をロールプレイするか叩き込まれイツキはふらふらになりながらセイについてフロアを出る。
あの時間で有益だったのは鉱石が取れたことぐらいだ。
セイについて歩いていると分かれ道の先、行き止まりに宝箱がおいてある。
明らかに罠だろう。
宝箱を開けようとするセイをイツキは押しとどめた。
「明らかに罠だよ、開けないほうがいい」
「俺もそう思う。だがな」
「うん?」
「漢なら逃げたりしないもんだ!」
セイはイツキの横をすり抜け宝箱を開けた。
中から黒い煙があふれ出る。
退路を、と振り返ると入ってきた道は壁でふさがれており、閉じ込められてしまっていた。
「イツキ、すまん」
「行き止まりになってる。どうやら閉じ込められたみたいだよ。この煙は?」
「あー、とても言いたくないんだが」
「さっさと言って」
イツキがセイを睨み付けるとしぶしぶとセイは言った。
「ゴーストの亜種だろう。敵だ」
ゴースト。コア以外の体を持たないため、魔法で攻撃することが定番であるモンスターだ。
イツキは嫌な予感を振り切るようにセイに聞いた。
「セイ、魔法は?」
「使えたらもう倒してる。聞くって事はイツキも魔法を使えないんだな?」
「うん」
黒い煙で相手の顔も見えないくらいの場所。こんなとこで動き回る核を探さなければならないなんて。
「いいか、あんまり息を吸うなよ。この煙はたぶんゴーストの体だ」
「死ねってか」
精神的にくる状況で2人はコアを探し続けた。
……見つかったのは二時間後だった。
ゴーストのコアを壊すと煙はすっかり消え、ふさがれていた通路も元に戻った。
行き止まりから出て、もう一方の道を進んでいると、唐突にファンファーレが鳴った。
『おめでとうございます。ただいま期間限定ダンジョン、鉱脈窟がクリアされました。現在ダンジョンにいるプレイヤーは30秒後、ウルカに転移します』
「あーあ。クリアされたか」
「僕はもう疲れたよ……」
紫の輝きに包まれ、二人はウルカへと転移した。
「ありがとな、イツキ。楽しかったぜ」
「セイもゲームばっかりしてないで勉強しなよ」
「わーってるって」
セイは振り向かずにひらひらと手を振り去っていく。
イツキはそれを見送り、カマノナカへと歩き出した。
イツキは自分の不甲斐なさを痛感していた。
攻略が進まなかったのは俺のせいだ。セイはずっと俺のテンポで進んでくれていた。
良く考えてみると、いや、本当は考えなくても覚えていなければいけなかったことだがセイは発売されてからずっとゲームに入り浸っていた廃人だ。
高レベルプレイヤー。あの程度のダンジョンなんて楽に攻略できたに違いない。
ゴーレムにも楽に勝っていたことだし。
セイがレベルを上げ、強くなっている間。俺といえばずっとこの町でプレイヤースキルを磨いていただけ。
悪いことではないけれど、一緒にプレイするには同レベルぐらいまで上げておくのがマナーだろう。
地力の差がはっきりと現れていたから、あんなに攻略が進まなかった。
俺が足を引っ張っていたんだ。
……強くなりたい。
イツキは決意を新たにカマノナカの扉を開けた。
リュカとカリンにこの町を出ることを告げ、二人に応援され、店を出た。
教わるだけじゃ駄目なのだ。自分ひとりで実践してみなければ。
そんな風に妙に気負ったまま、イツキは何の用意もせずに町を出た。
……このあたりからもう駄目駄目である。
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新連載。水と暮らす、始めました。
この話に詰まっていた間に書いていたものです。