そう!僕は悪徳貴族。
その勇者の伝説は一人の村娘を助けることから始まる。
村娘はとても美しい娘だ。その村娘は好色な領主に召し上げられ様としていた所を救われる。
その勇者はこの世界では変わった名前でまた、変わった思想を持っていた。
勇者は民を愛し弱者を救い。悪徳を憎む。
勇者は村娘と旅に出た。
時には税を横領する悪徳領主を斬る。
時には街に潜む邪教徒を壊滅させる。
時には村を盗賊から守る。
時には人を攫うドラゴンを討伐した。
勇者は強い。バッサバッサと悪を斬り背に民を守る。
旅が進むに連れて多くの者が勇者を殺そうとした。
盗賊の女。大聖堂の聖女。勇者を狙った暗殺者。放浪の騎士など。
勇者はその深い優しさで許し旅の供にした。
敵対した者たちはその優しさに感謝して心を入れ替える。
勇者は国を腐敗された王を討つ。
王は後の世に「魔王」と呼ばれた。
魔王の娘。姫は勇者に感謝を表す。
国を救ってくれて感謝します。父の愚行に諫めてくれたことも、しかし、私も王族の一人。最後はあなたの手でこの首をはねてくださいと。
勇者はその深い優しさで姫をも許す。
そして、勇者は姫と旅の仲間を娶り、王となる。民のため。
各国の王はこれを支持し勇者に姫を送る。
貴方の偉業に役立て下さいと姫もまた勇者の前でその偉業に触れることをお許し下さいと頭を下げる。
勇者はこれを受け入れ民の前で誓う。
いつか、この国を民主主義にすると。
「勇者の伝説」冒頭より抜粋。
「はぁ。まぁ、表だけみればね。」
僕は、バタンと今、この国で聖書より売れてると言われる「勇者の伝説」著者、第二王妃(元村娘)をため息をはきながら閉じる。
やぁ、自己紹介が遅れたね。僕の名前はセフィーロ・ド・ドバス。この勇者の国の東の大貴族、ドバス公爵家の現当主で勇者の言う悪徳貴族だ。まだ20歳だよ。
親父は2年前に死んだ。表向きは病死。実際は勇者に斬りかかり逆に斬り殺された。勇者の嫁の1人の僕の姉が奮闘しお家取り潰しは免れたが、一時は本当にやばかった。
勇者は強い。圧倒的強者だ。世界を相手どっても勝てるだろう。
勉学もできるんだよ?数学とか学者並だし、兵法とかも奇抜な発想ですごいことするしね。勇者曰く前世?の知識とかいうアホな所もあるけど。民を思う心もある。
こう見たら最高の王だろ?でもね、如何せん頭が弱いの。勉学とかじゃなく、人として。
横領禁止、賄賂禁止、民の税収率軽減。
いやぁ、素敵だね。ぶん殴りたくなる。
勇者の野郎はこの国の領主が使う税率の内訳知ってんのかね?王国献上6割、領主4割だよ?
ただでさえ低いのに税率さげられたら領地運営できんわ!
大体王国が実際、管理してるのなんて王都とその周りだけだろが!ウチの領土の方が広いわ。
そら、横領するよ。しないと部下に給料まともに払えないもん
。こっちは領主としての一応の格好と生活、そして数千の文官と私兵を雇ってんだよ。
お前んとこと変わんねぇだろ?だって、人口の割に領土広いんだもん。
給料を削れって?アホか!ボクは当然貴族の対面やらで、金は使わなくちゃならない。舐められると最近勇者のせいで調子に乗り過ぎた民に領地攻められたりするからね。
お前達のせいで俺たちは苦しい税を払うんだってね。その税金使ってるのほとんど勇者の奴だからね。
兵にはちゃんと給料と生活の工面を出さないと民を守れないだろが!誰か薄給で自分から命の危険がある仕事につくんだ。
まぁ、いいや愚痴を言っても始まらない。
次はどうやって横領するか考えねば……税の移送中、山賊に襲われた事にするか?いや、でもこれは前に使ったしな。
「コンコン、領主様、王がお見えになりました。」
来たよ来た。これだよ。王なら城でどっしりしてれば良いのにコイツ強いからってフットワーク軽すぎだろ。
「お入り頂け!」
今度は何の用だろね。まさか、横領が暴露た?いや、その辺は完璧に誤魔化してるはず、税収官にも賄賂を渡してる。
そうこう考えれるウチに勇者が入ってくる。
ふんふん、今日のお供は女騎士団長にメイドさん1人ね。齢40を超えた癖にお盛んね。
「陛下、この様な所までご足労いただ、」
「よいよい、その様な前置きなど要らぬ。余が来たのは他でもない。バラン男爵の事じゃ。どうして、あの様な最低な男がまだ処罰されて居らぬ。主に一任した筈じゃ!」
ん?あぁ、あのバラン男爵が女に性的な暴行を働いたってやつね。確かにバランは内の派閥だし勇者もそろそろ来ると思ってました。
「はい、それに付きましては調査の結果、無罪にいたしました。」
「何故じゃ!ワシはそのオナゴに会うてきた泣いておったぞ!奴は己が権力を盾に守るべき民を傷つけたのじゃぞ!」
マジかよっアホか。大体それ位で一々出て来るなよ。もっと重要案件山程あるだろが。
しかも、出てくる時は絶対女絡みだな。知ってる?最近王都で美しい少年を攫う貴婦人がいること!犯人お前の嫁の1人だよ!
「いえ、王よ。お言葉ですが、調査の結果2人は同意の元で金銭のやり取りのある身体の関係であったようです。証言も取れております。ですが女が更なる金欲しさの為被害者として訴え出たようでして。」
「なに?信じられぬな。大体、余は女を金で買う奴が嫌いなのじゃ。何故愛を育まぬ。」
ここで吹かなかった僕を褒めて欲しい。
何を言っているのかこのアホは、お前の嫁は村娘出身の奴以外お前を好いてる奴はいねぇよ!
元聖女はお前の圧倒的力に教会が潰されぬよう人身御供になり、元放浪騎士も元暗殺者も元盗賊も各派閥が、皆お前に差し向けた刺客で、捕まったあとお前から情報を引き出すためにその身を犠牲にしてお前に着いて行ったんだよ。
なんで知ってるかって?お前の元暗殺者の嫁はウチに代々仕えてくれている一族の現当主の元許婚だよ!
未だに謝罪と望郷の念を書いた手紙を送ってくるとこの前当主泣いてたぞ。
各国の姫だって勇者の脅威を自国に向けさせない為だしな。
あと、お前が今、手を出してるそのメイド!婚約者いたからね。お前はアプローチしたら受け入れてくれたと思ってるかもだけど、全然違うよ。絶対最強の王に迫られて拒めるメイドなんて居ないよ。お前の不興買ったら一族根絶やしにされるかもしれんだろ!
お前は今、自覚無いだろうが最初に救った村娘の所のゲスな貴族と同じ事してんだよ。
「えぇ、そうですね。余り褒められた行動ではありませんね。しかし、事実でした。複数の証言が取れております。その女は常々身体を売っていたようでして、お疑いの様でしたら此処に召還いたしますが。」
「いや、よい。今回はお主を信頼しておこう。」
前から思ってたけどお前ビッチさん嫌いねぇ。商売女って言った瞬間興味亡くなった目してるもんね。
「はっ、ありがたき幸せ。」
「うむ、一層励むがよい。しかし、困ったものよの。最近また貴族共から税率を上げろと苦情が来ておる。贅沢な暮らしをしておる癖に。ワシ直々に赴き徹底に無駄を排除してやったわ。そしたら案の定横領しておった。」
あっ、やべー、またどっかの領地潰れるぞこれ。ちょっと早めに手を打っておこう。
大体今の税率で領地経営むりだからね。賄賂と横領しなきゃ無理。
真面目になんかしてたら自分の所に残るの一般市民並よ?
僕のとこだって見える所は豪華だけど、生活してるとこなんて超質素だかんね。
お前みたいに一皿一口みたいな食生活絶対無理だから!
「そうですか。私の方でも手を入れておきましょう。」
「おお、済まぬな。主の親父と違い、主の忠義には感謝する。この際、不正などできぬようにもう少し税率を下げてやろうかと思うのじゃが、どう思う。」
あかんあかんあかーん!これ以上はアカンよ!っと興奮のあまり違う地方の言葉が出てしまった。
コイツ、僕たちを殺す気か!王都の文官や騎士の給料カットで国庫は潤ってるか知らんけどウチなんてヤバイぞ!この前金庫入って、あれ此処にボク住めるじゃん。ってぐらいスカスカだぞ。泣きそうになったわ!
「ありがとうございます。いえ、恐らく陛下の理想の高さはその貴族共には分からぬゆえ、今それを実行すると反乱が起きるでしょう。陛下1人で鎮圧出来るとはいえ、多くの民が巻き添えになりますゆえ、此処は雌伏の時かと。」
「うぬ、そうか、しかしのう。どうすれば横領は無くなるのかの。」
いや、無くなんねぇよ。横領も賄賂も政治には必要な時ぐらいあらぁ、綺麗なだけじゃ回んねぇんだよ!
てか、しっかりしろよ。税率関係で調整を測ってんのは北の公爵家だろうに、ボクの担当は貴族達が潰れないようにフォローすることだぞ。そういや北の公爵さん最近胃が痛いっていってたな。
「ふむ、そうじゃの北の公爵はこの際税収の内訳割合を変えて5割5割にしようと言うのじゃが」
キーター!北の公爵さんゴメン!あんた超仕事してた。スゲーよ!ホント尊敬するわ!
「え、えぇ、それはいい案かも知れませんね。陛下の懐の深さを見せることで善政を敷けば褒美があると思わせれます。」
「ふむ、北の公爵と同じ意見じゃの。しかし、ワシもカツカツだからのぉ。」
嘘つけぇぇぇぇ!僕知ってんだぞ!お前同じ服2回着たことないだろ!一着幾らすると思ってんだ!それと後宮!何人囲ってんだ!全員の顔覚えてるかお前?解体してしまえ。めちゃめちゃ金喰ってんぞあそこ。
「へ、陛下の治世の手腕を見せつけてやるチャンスかも知れませぬ。」
「そうか、そうよの!では、そうしてみようかの!では、時間を取らせたな。さらばだ。」
「いえ、我が微力尽くたのでしたらこれ以上の喜びはございません。」
バタン。や、やっと帰ったー!毎度毎度疲れる奴だぜ。
いや、実際問題貴族は汚いよ?嘘をつかなきゃ生きてけないし、自分達の生活で贅沢しようとするし、民から絞れるときは絞る。でも、それはすっごい馬鹿以外は民の生活を苦しめない。だって、税払う人死んだら困るじゃん。反乱怖いじゃん。僕を守る私兵だって元は民だしね。
そして、何かあったときに領地を守れるだけの金を蓄えるためだ。
ちょっとぐらいの贅沢いいだろう?
それを守るため根回しの賄賂は必要だし、子飼いの貴族の細かい横領なんかは弱みを握るため放っておく。
いざというときの捨て駒にするため。
そんなことをソファでだらけて考えていると勇者が連れていた女騎士団長が入ってきた。
「あぁ、君かどうした?」
「セフィーロ様、この様なご無礼をお許し下さい。こちらに第一王妃と貴方様の姉上からのお手紙と預かりものをお待ちしました。」
「あぁ、構わないよ。どれ拝見させて貰おう。………あぁ、ありがとう。返事を直ぐに書く。待っていてくれ。……………はい、これ、君も大変だね。」
「確かに、いえ、私は女を捨て、婚約者も居りませぬゆえ。国の為になるならばと。しかし、サリー、先ほどのメイドは不便でございます。良く夜にうなされている様です。」
「そうだね。しかし、今は何もしてあげれない。支えてあげて。」
「はっ、それでは失礼します。」
姫と姉の手紙には、早く勇者を何とかしろとか。最近勇者が新しい側室を年に三人ほど連れてくるとか。願望やら後宮情報と一緒に金貨を大量に送ってくる。
僕はこのお金で貴族の救済を行い着々と傘下の貴族を増やしている。
勇者、僕は忘れてはいないぞ。賢王では無かったが良き人であった前王を一度の失敗で殺し、必要悪もあると説得した父を斬り殺したお前を。
必ず復讐してやる。悪徳貴族らしく、いやらしくな。
連載にしようと思って書いたのですが、やっぱりまだ練習が必要なのでとりあえず短編で出しとこうって事であらすじ詐欺となりました。
こうすればもっといいよなどの感想が有りましたら是非是非送って下さい。………………やさしめでね。




