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とある悪魔の転生記  作者: 柚花
第一章 幼少期
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悪魔の怒り!

なんとなーく寒気を感じて目を覚ました。目を開けると至近距離にものすごく綺麗なお顔がある。

……あれ、おかしいなぁ。私、こんなお人形持ってたっけか。

私が持ってる人形は夜見るとちょっと怖いフランス人形のサチ子さんと、もふもふしいテディベアのクマ美さんだけだ。本当はテディベアの方はくま左右衛門と名付けたかったのだが、なぜかお父様に却下されてしまった。なんでだ。

だけど目の前にある超美形なお人形さんは妙に既視感があるけど、男性だからサチ子さんではないはず。そこまでボーッと寝起きの蕩けた脳みそで考えていると、急に気がついて覚醒した。

……まさか…!まさか、まさかのお父様!?

そこには無表情だけど、すごく冷たい怒りを露わにして目を開いたバージョンのお父様がいた。


ひ~~っっ!!!お父様めっちゃ怒ってるよ!!怖っ!!前に目を開いてもらった時なんて比べ物にならないくらい、怖っ!!

がたがた震えていると、お父様はすっと目を細めて低い声を出した。怒鳴っていないのにものすごく迫力がある。


「お父さんは前に言ったな。絶対に外に出てはいけないよ、って。言い付けを破ったのは分かっているね。」


お父様がすっと動いたので、私は反射的に目を閉じた。

ひぃ~~、私が悪うございました。だから打たないでください~!!せめて、お尻ぺんぺんくらいでご勘弁を!

叩かれるかな、と思って身構えているとお父様にぎゅっと抱きしめられた。えっ?ナゼ??


「……すごく心配した…!もう、絶対に外に出たらダメだよ!!」

「………ご、ごめんなさい。もうしません。」


お父様は私がいることを確かめるようにぎゅーっと抱きしめた。ちょっと中身が出そう。

今さらながら、私のせいでお父様にいっぱい迷惑と心配をかけてしまったんだな、と思うと鼻の奥がツーンとした。私としては子供のちょっとした反抗のつもりだったけど、お父様にとっては違ったんだね。話し合いとか、他の方法はたくさんあったのに無用な心配をかけてしまった。お父様に謝りながら、もう心配をかけないようにしようと思った。



その後、通常バージョンに戻ったお父様との長い話し合いの結果私の勉強は一日二時間、お昼寝付きに決まった。お父様も私に無理をさせているという自覚があったせいか、かなり譲歩してくれたのだ。まだ四歳児には勉強時間が長すぎるような気がしたけれども、お昼寝があるならいいんだ、それで。

私への罰は三日間おやつなし、だった。なんか甘すぎる気もするけど、下手なことを言って余計なおしおきをもらっても困るので黙っといた。言わぬが花、って言うしね、うん。

そういえば、やけに私を見つけるのが早かったけどどうやったんだろ?私が家を飛び出してから見つけられるまで二時間くらいしか経たなかった。あの屋根裏部屋はずっと放置されていたから、見つからない自信は結構あったのに、ちょっと悔しい。


「そういえば、私をどうやって探したの?あんなに早く見つかるなんて思ってなかったからビックリした。」

「それはね、愛の力だよ。お父さんは愛するセーラの場所をびびっと感知して……じゃなくて、モズに探してもらいました、はい。」


お父様はどうやら私が睨んでいることに気づいたらしい。そういうあまあまなセリフはお母様にだけ言ってよね。砂吐くぞ。……ん?モズがどうしたの??


「モズってお父様の象徴の動物だよね。それがどうして?」

「あれ?話してなかったかな?悪魔は自分の象徴となった生物を召喚して使役できるんだよ。あの時セーラは森に行ったと思っていたから、モズたちを呼び出して探すのを手伝ってもらったんだ。」


まじか!象徴生物ってそんなことができるのか!!ますますミナミゾウアザラシが象徴の悪魔の人が可哀想になってきたな。……今日から毎晩私の象徴の生物がヘンなものじゃないように祈っとこう。

というか、お父様が小鳥を呼び出して頼み事をするのか。すごく和む絵だな。今度、呼び出してくれるようにお願いをしてみよう。



それからあっという間に月日が経ち、私の五歳の誕生日が来た。もう私もすっかり悪魔ライフに慣れきって、多少のことじゃ全く動じない。私が仔犬を飼いたい、って言ったときにお父様がオルトロスの子供を連れてきた時も動じなかったさ。はっはっは(遠い目)。てか、どこから連れてきたんだよ。

去年と一昨年の誕生日プレゼントはそれぞれサチ子さんとクマ美さんをもらったから、今年はお人形じゃないよね。我が家では、誕生日プレゼントはサプライズで渡すので当日まで何か分からない。生き物はやめて、ってお願いしたから他種族の方ではないと思うんだけど。ないといいなー(不安)。

ちなみに私からは去年からお父様にプレゼントを渡すようになって、去年は肩たたき券をプレゼントした。まだ幼児だから大したものはあげられないんだよ。でも、お父様はとっても喜んでくれたから本当に良かった。

プレゼントにワクワク(戦々恐々)しながら買い物に行ったお父様の帰りを待っていると、玄関でお父様の声が聞こえた。お。噂をすれば。


「おかえりなさい、お父様。……えっ?」

「ただいま、セーラ。誕生日ケーキとプレゼントを持ってきたよ。」


お父様は大きな包と見知らぬ男の人を連れて帰ってきた。



男の人は薄茶の髪と薄茶の目をした20代くらいの人で、女性のように整った顔をしている。男の人なのに可愛らしい、という言葉がピッタリな見かけはお父様とは違う意味で警戒心を解いてしまいそうだ。

初めてお父様以外で家に訪ねてくる人を見て、私は混乱してしまい、思わず変なことを口走ってしまった。


「……プレゼントって、コノ人のこと?」


するとそれを聞いてお父様とその人は笑い出してしまった。お父様は苦笑、訪問者さんは爆笑という感じだ。…失礼な。そんなに笑わなくてもいいのに。

ちょっとムッとしながらもお父様を見上げると、お父様は分かってくれたようでいまだに爆笑している失敬な訪問者をたしなめてくれた。(さん付けなんてしてやるか!)

この世界では他種族の人々は言葉を話せますし、ほとんどの種族が人間の姿をとれるので、セーラちゃんは誤解してしまいました。


オルトロス

黒い双頭の犬の姿で、鬣の毛と尻尾が蛇の種族。落ち着きがなくせっかちで、ちょっと挙動不審に見える。割と短気なので、間違ってもペットになどしてはいけない。

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