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とある悪魔の転生記  作者: 柚花
第一章 幼少期
8/18

悪魔の家出!

本文中に食人について不快に思われるような記述があるのでご注意ください。

この後待ち受ける地獄の日々を思い描いて少々意識を飛ばしてると、お父様が慌ててフォローしてくれた。


「そんなに怖がらなくて大丈夫だよ。この本は一年かけて覚えてくれればいいから。」


そっかぁ。それなら大丈夫そうだね。安心したぁー。

……なんて言うわけ無いだろうがっっ!!!コレを一年かけて覚えろ、とか何の刑罰!?もう、嫌がらせの域を越えてるからね。この状況を地球のPTAが見たら憤死するからね。

お父様に突っ込みたい気持ちを抑えてとりあえず目次を見てみると、いろいろな種族名が載っていた。これがこの世界に住んでいる種族の全てらしい。


「…ねぇ、お父様。これがこの世界に住む他種族なんだよね…?」

「そうだよ。どうかしたのかい?手が震えてるよ。」


そりゃ、震えもしますよ。こんだけ物騒な名前ばっかり載ってりゃねっ!!

なんなんだよこの世界、住んでる住人のほとんどがモンスターで有名な方々ばっかりじゃないか!こっちは妖精とかエルフとか期待してたのによぉ!!ヒュドラとかヘルハウンドとかモー・ショボーとか、ほとんど魔物じゃん!

ニンフやペガサスなど、穏やかでファンシーな生物の名前を血眼になって探していると、やっと見つけたのはセイレーンとユニコーンだった。おお!どっちも期待できそうだ!

ちょっとテンションを戻しつつセイレーンとユニコーンの生態のページを開いて……すぐに閉じた。

どちらもとても美しい挿絵が描いてあったのだが、セイレーンは食事シーン(ご飯=人間)でユニコーンは怒り狂って人間と闘っているシーンだったのだ。あれ、おかしいな。こんな生き物だったっけ。


「勇ましい種族が多いね……。」

「そうかな?普通だと思うけれど。」

「だって人肉食の種族が多いし。普通の動物は滅多に人間を襲わないでしょ。」

「まぁね、動物はそうだね。でも人間は捕まえやすくて量もあるから食物として安定してるんだよ。数も増えやすいし。他種族は悪魔も含めて数が少ないから、バランスはいいと思うよ。」


そ、そういう問題なのか?いや、深く考えちゃダメだ。別に悪魔を食べる訳じゃないし、そんなに悪いようにはならないと思っとこう。あんまり考えるな、私。


「四時間経ったから今日の勉強はここまでだね。お疲れ様。明日も頑張ろうね。」


お父様は時計を確認すると微笑みながら私を解放してくれた。はぁーー、結構しんどい。こんなにぶっ続けで勉強するのは前世の受験勉強以来だ。しかもお父様は勉強中は一切休憩を挟んでくれなかった。ホント、悪魔みたいだよ。……あ、悪魔か。

お父様が持ってきてくれたドーナツをもぐもぐと食べながら、お父様にバレないようにサボる方法を真剣に考えることにした。



お勉強が始まってから三ヶ月が経った。この世界についての知識はかなり学ぶことができたけど、お父様に対するささやかな抵抗は全て潰されている。

お父様が教えてくれた内容を書き写すフリをして歌の歌詞やら物語を書いたり、本の挿絵に落書きしたり、お父様の話を真剣に聞いているフリをしながら今日のおやつは何かを考えたり、という古より伝わる学生の必殺技が全て見抜かれてしまったのだ。居眠りなんて言うまでもない。おそるべし、悪魔。

しかもお父様のペナルティがえげつない。私が他事をするたびにおやつを抜くというのだ。私は諸事情により、肉料理は食べられるようになったもののいまだに苦手だ。特にミートボールは前世に読んだある漫画を思い出してしまって食べることができない。だからおやつは私の最大の楽しみなのだ。そしてお父様は絶対に分かっていてやっている。

……見てろよ。いつか絶対にバレずに他事をやってみせるんだからね!あれ、なんか趣旨がズレてね?


「あ、またセーラは勉強以外のことを考えていたね。今日のおやつは没収だね。残念、今日はセーラのリクエストのエクレアなのに。」


なにーーーーーっっ!!!またかっ!!読者の皆様のために回想をしてただけなのに!厳しすぎだろ!

もうキレた。ブチギレちゃったぜ、私。今までは私が言い出したから、って我慢してたけど、明らかに厳しすぎだ。勉強のせいでお昼寝ができなくなっちゃったし、そのせいで勉強中に眠くなっちゃっておやつは没収されるしでいい加減ストレスが溜まってる。中身はどうあれ体は四歳児なんだ。こんな無理はそうそう続かないんだよ。地球だったら児童相談所にちくるレベルだぞ。

もうこうなったら最終手段だ。


「さぁ、あと30分頑張って…」

「もう嫌!!こんなに勉強できないよ!もう耐えられない!!」

「セーラ!!?」


私はお父様の制止の声を振り切ると、部屋を飛び出した。そして生まれて初めて玄関の扉の向こうへと出ていった。



………皆さん、私が家出でもしたかと思いましたか?そんなことする訳ないよ。だって私は現代っ子でもやしっ子でチキンな悪魔だもの。攻撃力、防御力ともに1しかないのに敵だらけのお外になんて行くわけないよ。

というわけで私は家の屋根裏部屋に居る。外から家の外壁によじ登って入り込んだのだ。家の屋根裏部屋は物置になっているんだけど、跳ね戸は上げてあっても窓に鍵はかかってないのだ。

私がやっとくぐり抜けられるくらいの小さな窓に鍵をかけると、しまってある古い絨毯の上に横になった。夕ご飯の時間になったら降りて謝ろう…。

絨毯も部屋も埃だらけで寝心地は悪かったけど、疲れていたせいかあっという間に眠ってしまった。目をつぶる直前にお父様が私を探す声が聞こえたような気がした。

本文に出てくる種族は伝説の生き物を参考にしてはいますが少し変えています。下に設定を書いてあるのでお暇な人はお読みください。


セイレーン

上半身が人間の女性で下半身が鳥の姿をしている海に住む種族。美しい歌声で航海中の人間を惑わせ、難破させて食べる。最近は人間が陸伝いだけじゃなくて沖合も航海するようになったので、難破させにくくなって悩んでいる。


ユニコーン

額に螺旋状の筋の入った真っ直ぐな一本角と二つに割れた蹄を持ち、紺色の目をした美しい白馬の森に住む種族。非常に獰猛で気位が高く、処女にのみ触れられることを許す。角には毒を中和し、水を浄化する力がある。


ヒュドラ

九つの蛇の頭と犬のような巨大な胴体を持つ水辺に住む種族。口から毒を吐き、体内にも毒が流れていて、頭を斬られるとそこから二つの頭が生える。主食は人間。毒舌なので、よく頭同士で喧嘩している。


ヘルハウンド

燃えるような赤い目に、黒い大きな犬の体を持つ種族。人間の間では見た者に死をもたらす不吉な犬とされるが、主食が人間であるので当たり前。それに犬ではない。割と穏和な性格。


モー・ショボー

普段は美しい少女の姿だが、食事時は頭だけ鳥になる森に住む種族。旅人を誘惑し、油断したところを襲って脳髄だけ食べる。ヒグマも真っ青な贅沢食いをする、グルメな種族。

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