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とある悪魔の転生記  作者: 柚花
第一章 幼少期
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悪魔と作戦2!

「で、話ってのは何だ?」

「ふふ。おじさんと取引をしようと思って。おじさん達は私と向こうのユニコーンを売り払うつもりなんでしょ?それで、そのお金をみんなで分けるんだよね?」

「ああ、そうだが。」

「私はそうなったら金持ちに買われるか、下手したら聖騎士に見つかって殺されちゃう。でも、こんなところは術を使えば一瞬で抜け出せるけど、油断して私の保護者たちとはぐれちゃったし、封印をされちゃったから無理なの。だから、本来の悪魔の取引では対価として魂をもらうけれど、今回は私の封印の解除を対価としてあなたの望みを一つ叶えてあげる。もちろん、あなたの身の安全も保証しましょう。」


封印を外さないと取引ができないのは不安だったが、封印を取り外しても至近距離にいるから妙なことはできないし、いざとなったら力づくで取り押さえられる。もう一人のユニコーンも封印のせいか元気をなくしていたから大丈夫だろう。そう判断しておれは取引にのり、牢の扉を開けた……。



「ふぃ~~。第一作戦成功~~。」


私は後頭部をぶん殴られて気絶している見張りのオッサンを見下ろした。チョロいもんだぜ。

下の部屋を恨めしそーに見てた見張りのオッサンは単純そうだったから、破格の悪魔の契約をしてやるって言ったら乗ると思ったんだ。もちろん契約の話は嘘だ。まだ私は術が使えないからそんなことできないし。

でも、そんな未熟な私に封印を付けてたから、この人たちは私がまだ術も契約もできないなんて知らないんじゃないかと思ったんだよね。予想が当たって見事に騙されてくれて良かった、良かった。

後はまんまと牢の中に入ったオッサンを、待ち構えていたリシューさんが殴って気絶させるまでが第一作戦だ。


「さーて、次の第二作戦スタート~。」

「……たった5,6歳ですでに人を騙すとは、恐ろしい子…!」

「何か言った?」

「いや、何でもない…。」


ちょっとリシューさんが青ざめてる気がするのは寒いせいだろう。今は春くらいの気候だけれど、さすがにパンツ一丁では風邪を引いてしまう。そう言う私も薄着だから、人のことは言ってられない。早く作戦を成功させて帰らねば。


「というわけでお願いします、リシューさん。」

「やっぱり僕がやらなきゃいけないのか…?」

「だって、術を使えるのはリシューさんだけだし。ここから出るためには仕方ないことだよ。」

「……。」


リシューさんはオッサンの下着を裂いて紐にし、手足を縛っていたが、その手を止めて非常に嫌そうな顔をした。作戦を話し合っていた時にもごねていたけど、穏便に済ますにはこの方法が一番いいのだから仕方がない。それでもリシューさんはしばらく逡巡していたが、やがて大きな溜め息を一つ吐いて目を閉じた。


「分かった…。ちょっと下がってて…。」


リシューさんの言葉に従って一歩後ろに下がると、リシューさんは目を閉じたまま立ち上がった。角が真珠色に輝いて、体全体もぼんやりと光って見える。牢の中は薄暗いので、私にはリシューさんのシルエットしか分からない。そのまま息を飲んで見つめていると、リシューさんの体の輪郭が縦や横に伸び、光が消えると気絶しているオッサンそっくりになったリシューさんが現れた。違いは服装くらいしかない。

……あれだ、前世で見てた魔法少女モノの変身シーンにそっくりだ。きゅぴーん☆なんていう効果音が付いたら完璧だろう。変身後はかなり残念ではあるけれども。

完璧に変身できたというのに、リシューさんはぶすくれたような顔をしている。馬の姿から人化する要領で変化する術をやってみて欲しいと頼んだら、予想以上にうまくいったというのに何が不満だというのだ。でも、その表情は変身前だったら美少年だから許せるかもしれないが、今はムサいオッサンの姿なので違う意味で破壊力がある。早く止めさせなければ。


「さっすがリシューさん!このオッサンにそっくり!…あとはこのオッサンの服を着て、恨めしそうな表情を取り繕ったら完璧ですとも!!」

「褒められてこんなに嬉しくないのは初めてだよ…。あと、やっぱりこの、汚れが付いてて、首元にフケが溜まってて、全体的に垢じみてて、どことなく汗で湿ってて、汗臭というより最早異臭レベルの臭いがして、ところどころほつれてて、雑巾のほうがまだマシな服を僕が着なきゃいけないの…?」

「うん、相当嫌なことは分かったよ……。でも、今の格好のまま出て行ったらただの変質者だからね!ほんの少しの間だから我慢してください!」


そう言って宥めると、私の発言にショックを受けたらしくてスゴスゴとオッサンの着ていた服を身に付けた。でもすっごく嫌そうな顔である。私から見てもオッサンの服は汚かったのでそれ以上は何も言わずに下へと向かった。


でも、これからの作戦にはリシューさんの力が必要なのに大丈夫なんだろうか?




まだ宵の口だったが、日が沈む前から前祝いの酒盛りを始めたのでみんないい加減に酔っ払っている。少し前に加わってきた見張りの一人も、口とおんなじくらい酒が回りやすい質なせいでみんなと変わらないくらい酔っていた。

と、そこに、階段の方に面したドアから、もう一人の見張りまで入ってきた。


「何かあったのか?見張りの仕事はどうしたよ?」

「おい、おめぇまで来ちまったらガキを見張る奴が誰もいなくなっちまうじゃねぇか!!」


と宴にいた連中が口々に問いかけると、もう一人の見張りは申し訳なさそうに眉尻を下げ、


「ガキどもはさっきまでなんとか封印を解こうとしてたみたいだが、疲れちまったのか今は眠ってておとなしいもんだ。特に、ユニコーンとかいうでかい方のガキは苦しいのか、起き上がりもしねぇ。……それに、見張りのところには何もないからどうにも喉が渇いちまってなぁ。」


と言った。見張りの男は手の怪我のせいでスリができなくなってからは雑用が多く、分け前も人よりは少し減っている。もう一人の見張りだった奴が、確かに力が強そうなユニコーンの方はぐったりとしていたと証言したので、追い返すのもはばかられて酒盛りに加えることにした。

見張りの男は周りを気にしてか、酌をして回り、自分ではあまり飲んでいない。周りの者はもうほとんど潰れかけていたので、顔さえ赤くしていない見張りに飲ませるが、ちっとも酔わない。


「お前、こんなに強かったか?」

「ちっとも酔ってねぇじゃねぇか、さっさと飲め!」


周りの者たちはさっきまで見張りを酒盛りから除外していたことも忘れて、躍起になって見張りを酔わせようと飲ませたが、見張りはまるで酔わない。ついには見張りの男以外は全員酔い潰れて眠ってしまった。

最後の一人は意識が落ちるとき、素面のような顔のまま、気持ちが悪そうに顔を歪める見張りが見えた気がした。


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