悪魔と作戦!
投稿が遅くなってしまってすいません。
次回からはいつものペースで投稿します。
「逃げるって言っても、どうやって逃げるの?」
何とか封印を外したとはいえ、ここには無力な悪魔の子供とパン一のユニコーンしかいないのだ。どうやって逃げるんだよ。
「君は悪魔なのだから、見張りの男の精神を支配すればいい…。」
「無理だよ!!まだ私は妖術が使えないんだから!……それよりリシューさんこそ怪力で鉄格子を破壊すればいいんじゃないの?」
「怪力や俊足は馬の姿に戻らないと使えない…。それに今は腹が立っているから、元の姿に戻ったら箍が外れてしまいそうだ…。」
「……。」
私たちどっちも使えね~。そんなことしたら逃げる前に見張りのオッサンにバレてしまうよ。今は奇跡的に、封印を取ってコソコソ話しているというのに怪しまれてないが、さすがに大きな物音を立てたらバレるだろう。というか、何やってんだ、見張り。
今まで牢屋の奥の方でコソコソやっていたが、あんまりにも見張りが反応しないので様子を伺ってみると……なんというか、脱力した。
確かに見張りのオッサンはウロウロと歩き回りながら見張っている。見張ってはいるのだが、その対象は階段の下の部屋なのだ。どうやらこの牢屋は二階にあって、一階では私たちを拐った盗っ人どもが宴会を開いているみたいだ。役目を放り出して羨ましそうに階下の宴会に気を取られている見張りも見張りだが、捉えた私たちを売り払う前に前祝いで騒いでいる盗っ人どももヒドイ。ホント、何で私たちはこんな奴らに捕まったんだ……。
「じゃぁ、君は妖術をまだ使えない年齢なんだね…。しっかりしてるからそうは思わなかった…。でも、それなら君の保護者はどうしたの…?」
「見失ったと思ったら捕まっちゃったから分かんない。多分、今頃捜してくれてると思うけど……。リシューさんこそどうして捕まっちゃったの?」
「……朝市に夢中になって買い物をしていたら油断して本性に戻りかけちゃって…。」
「……。」
人のこと言えないけどさぁ、ドジだね!ユニコーンって。それともリシューさんだけ?うーん、どっちかって言うと後者な気がするけど。でも、潔癖性で人との接触を本能的に嫌がるユニコーンが何で朝市に夢中に?
気になるっちゃあ気になるけど、今はそんなことより、
「で、どうやって逃げるの?」
「……。」
リシューさんはあからさまに視線を背けると黙ってしまった。
……どうしよう。にわかに逃げられる気がしなくなってきたぞ☆
これ、お父様たちが駆けつけて来てくれた時にはすでに手遅れでした☆パターンじゃね?
や、やめろよぉぉぉぉ!!!今世は絶対に幸せになって長生きするって決めてたのにぃぃぃ!!!せめて、せめて私が術の一つでも使えれば、こんなところすぐに抜け出して……
……ん?そういえば、何で私は術が使えないのに封印されてたんだ?
「あのさ、いい考えを思いついたんだけど。」
リシューさんに考えを話して修正を加えてもらい、約30分後。私たちは思いつきを試してみることにした。
「はぁ~~~。」
おれは気が滅入っていた。なぜなら、久しぶりにいい金になりそうなモノが手に入ってみんなで前祝いの酒盛りをしているというのに、おれだけはその金になりそうなガキどもの見張りをやらされているからだ。最初はもう一人見張りがいたんだが、このガキどもは大人しいから見張りは一人で大丈夫だと決めつけて、ヤツはさっさと下に降りて行ってしまった。てっきり下の連中に追い返されてすぐに帰ってくると思っていたが、まだ戻ってこないところを見ると、うまく潜り込めたんだろう。まったく、忌々しいほど要領の良いヤツだ。
それに比べておれは本当に運も要領も悪い。おれも最初はまっとうに働いていたが、賃仕事をしていた飲食店が強盗にヤられて潰れて、職を失ってからは真面目に働くのがバカバカしくなってしまった。もともと手先は器用な方だったし、スリをしたほうが楽に暮らせるだろうと踏んでここの盗賊団に加わった。ここは盗賊団なんて名乗ってはいるが、ボスのようなまとめ役はいないし、仲間内での格差は少なかったので最初のうちは気楽だった。仕事はほとんどがスリや置き引きなどで、人さらいや強盗などといった荒事はほとんどなかったという面もある。だいたい、今回のガキの誘拐の件はイレギュラーなものなのだ。だから、仲間たちはこうして騒いでいる。
しかし、気楽な生活も長くは続かなかった。ある日、いつもどうりにスリを働いたのだが相手が悪かったらしく、気づかれた上に反撃をされてしまったのだ。その場はなんとか逃げ切ったものの、反撃された傷から悪いものが入ったらしくて、自然にある程度は治ったが、細かい動きができなくなってしまった。もともと相手を見誤ったおれが悪いので仲間の対応は冷たく、当然治療のための金などもらえないので手はそのままとなってしまった。追い出されなかっただけまだマシだろう。
それからはスリができないので置き引きをやったり、みんなの雑用をしたりして暮らしている。正直、スリができなくなってしまったおれは厄介者扱いなので、下に行ったヤツを羨ましく思っても下に加わることなどできない。ヤツもそれがわかった上で見張りを抜けたんだろう。ますます忌々しい。
それでもおれが未練たらしく下の様子を伺っていると、不意に背後から小さな衣擦れの音がした。
「ねぇ、おじさん。取引しない?」
びっくりして振り返ってみると鉄格子の際に女の子がいた。捕まえたガキはどちらもそうだが、人間離れしているほど整った顔をニッコリと笑ませてこちらを見ている。何も知らない奴が見れば思わず絆されてしまいそうな愛らしい少女だが、頭と背中にある不自然な膨らみが人間ではないことを示しているので寒気しか湧かない。急に現れたので驚いたが、頭には封印がついたままなのでホッとした。
「何言ってんだ、小娘。おとなしくしてねぇと痛い目に合わすぞ!」
「おじさん、話くらい聞いてよ。私は牢の中にいて術も封じられてるんだから、何もできないよ。それとも、悪魔とはいえこんな小娘と言葉を交わすのが怖いの?」
おれが凄んで見せたというのにそのガキはビビるどころか余裕な態度でこちらに話し続けている。どう見ても5,6歳のガキがだ。ガキにしては理知的すぎて気味が悪かったが、ふと、悪魔との取引ではどんな願いもかなうということを思い出した。
悪魔とはいえ、人間に捕まるような未熟なガキだ。うまくいけばこっちがだまくらかして、魂を差し出さなくても済むかもしれない。取引に乗るか乗らないかは別として、とりあえずおれはガキの話を聞くことにした。




