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「……ねぇ、この中で近くて洗面所を自由に使える家の人っていたりする?」
放課後。
他クラスに乗り込み、半ば拉致るようにして連れてきた十門さんと彼女を追ってきた一条赤里さん、四崎緑さん。それから校門で合流した五倉紫織ちゃんと六井橙子ちゃんの五人に私は聞いてみた。
本当は私の家が良いんだけど、生憎電車で3駅向こうだ。だから取り合えず図々しいのは承知で駄目元で聞いてみたのだが。
「あの、私の家なら大丈夫だと思いますわ。車で30分ほどかかりますが、この人数なら問題ありませんし……」
以外というかやっぱりというか十門さんがおずおずと提案した。
「えっと、アクセサリーの類いも買いたいんだけど……そういう店、近くにある?」
「アクセサリー、ですか? それならわざわざ買わなくてもうちにあるのを自由に持っていって下さって構いませんわ。お恥ずかしながら一年ほど前に沢山買ってしまって私一人では持て余してましたの」
金持ち発言キター。
「……そっか。じゃあ、お言葉に甘えて」
「ええ。車はこちらに待たせてありますわ。……それと、八神さん」
「ん? 何?」
「……先程は有難う御座います。それと今までご免なさい」
「……気にしてないよ。慣れてるし。蹴るのはさずがにないと私も思ったし。こっちこそ、急なお願いなのに有難う」
「いえ。それこそ気になさる必要はありませんわ。……あの、もしよろしかったらこれから真白さん、とお呼びしてよろしいかしら?」
「うん。いいよ。私も灰音ちゃんって呼んでいい?」
「勿論ですわ」
これは所謂敵の敵は味方というやつだろうか。いや、そもそも私は敵対しているつもりなどなかったのだが。