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 「あ。黒斗君も今帰り? もしよかったら青依と一緒に帰らない?」

「畜生! 靴がねえ! 真白のやつ先に帰ったな!!」

「………………」

 昇降口付近で待ち伏せしていた二ノ宮さんは黒斗に華麗にスルーされていた。

 そんな全力ダッシュで去っていく黒斗を見送りつつ、引きった笑顔を張り付けている二ノ宮さんに気付かれないよう校舎を出る。

 心晴れやかに思わず部活で練習中の曲を口ずさみながら歩いていると。

「ほう。そんなに俺と一緒に帰らないのが嬉しいのか」

「!? 黒斗帰ったんじゃないの!?」

「外履きも無かったが上履きも無い。じゃあ、まだ外履きを持って校舎内にいるって事だろ」

「あ、しくじった」

「そんなに俺と帰るのが嫌なのかよ」

 オーバーリアクションで頭を抱える私に溜め息を付く。

 気を取り直して。

「てかさ、あんた状況理解してんの? 昇降口に例の転校生いたよ? しかもあんたと一緒に帰るために」

「あのなあ。あいつの家逆方向だぞ? 何でわざわざ真逆に行った後に戻って来なきゃなんないんだよ」

「三国なら余裕でする」

 プレイボーイだしね。

「……ああ、三国黄壱か。何? お前ああ言うのがタイプなの?」

「いや。ただ三国みたいに黒斗も上手くやってくれないかなー、って思ってさ」

「……何を?」

「周りの女の子の牽制」

「……何かされてんの……?」

 あ、またしくじった。なんか今日は調子狂うな。

 「いや、別に。たまにトイレに呼び出されるだけ。それもこの頃は無いし」

「何だよそれっ……。聞いてないぞ!?」

 誰が言うかバーカ。

「だから私に構わないで彼女でも作れってーの」

「じゃ、お前がなれ」

「アホ。より悪化するだけだろ」

「じゃあどうしろってんだよ」

「中学のときみたいに適当に可愛い子見つければいいじゃん」

「あのなあ。あの頃は、いや、今でもだけど恋愛なんてさっぱり分かんねーし、女なんてさらに難解だよ。目を潤ませて体くねらせながら『付き合わないと許さない』みたいな雰囲気出すんだぜ? やってられるか、全く」

「……だから付き合ったの?」

「ああ、そうだよ」

「好きでもないのに?」

「好きとかどうとか、あの頃は分かんなかったな」

「……あの頃はってことは今は分かるんだ」

「……いや。今でもよく分かんねー。そういう真白こそどうなんだよ。中学んときはお前もよく告られてただろ」

「…………私も、分からなくなっちゃったよ」

「……」

「……」

 七瀬黒斗と共にいる利点とはこのように会話が無くなっても気まずくならないことである。

 お互い十年以上の付き合いなのでこの程度のことで気を使ったりなどしない。その関係が居心地よくって何時までもこの微妙な位地にしがみついている私。諦めるならすっぱりと諦めてしまえばいいのに。

 一緒の登下校は嫌がる癖に朝、ホームで遠くから走ってくる彼を目で追ってしまう。彼女を作れと言っておきながら幼馴染みなのをいいことにお互いの家でゲームをする。……そして。隣は諦めたくせに側には居たがる。

「お前さ、昔みたいにお洒落しねーの?」

「へ?」

「いやさ。中学の頃のお前可愛かったな、って思って」

 そう言いながら黒斗は駅の構内を歩く女子中高生や所々にあるアクセサリー店や服屋のマネキンなんかを見ている。

 てか、今の台詞と自然さ三国みたいだな。

「………………」

「そういえば。前から気になってたんだけどどうして高校に入ってから突然そんな格好するようになったんだ? ……あれ? いや、その前に中学で……」

「…………いで」

「? 真白、何か言ったか?」


「人の気も知らないで好き勝手言うなっ!!!」


「え? あ、真白?」

 掴んで来る黒斗の腕を振り払い、某洋品店に逃げ込む。黒斗は追って来はするが。

「おい、待てよ。真白っ……て、えええええ!?」

 私が逃げ込んだ、洋品店。それは女性用下着売り場、でした。

「卑怯だ!」

 フッフッフッ。ここなら追ってこれまい。それにしても。こういう専門店だと私みたいなサイズでも可愛いのあるんだな……あ、でも値段が凄く高い。残念。

 とまあ。商品を物色しながら黒斗が諦めて帰るのを待っていると、さっきまで店先でうろうろしていたのが何かを決意したかのように拳を握り。

「おーい、真白。決まったか?」

「何ナチュラルに入ってきてんだぁぁぁ!!??」

 まさかここまで変態だとは思ってなかった。

 その後すぐに私達は不審そうにこちらを見る定員の目を避けながら店を出た。

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