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放課後。
吹奏楽部の活動場所である第一音楽室へ向かう私の耳に、最近よく聞くポップスを奏でるトランペットの音が聞こえた。
さらに音楽室へ向かって廊下を進むと騒ぐ女子と時折はしゃいだような男子の声がする。
「……はぁー、またか……」
軽く頭を振り、気合いを入れるようにドアを勢いよく開ける。
「三国、また練習サボって女の子はべらせてるの?」
「よ、真白。丁度良かった。デュエットの練習しようぜ」
飄々と女の子の輪の中からトランペットを掲げ、制服をだらしなく着こなした派手な男子が言う。
そんな子とデュエットなどして周りから恨まれないかって? 心配ご無用。私以外にもよくメロディーを担当する楽器の子なら何人かやったことがあるし、本人がこんな誰にでも優しい、もっとはっきり言ってしまえば軽い性格なのでそんな面倒なことはない。
まあ、たまに部員以外の子から嫌がらせはあるがそれは部内の女子同士でカバーしているし、酷いときには入部してもらって、本当に単純に実力で選ばれていることを分かってもらう。
「私はまだ楽器も出してないっての」
最早飽き飽きしたやり取りに私は背を向け楽器庫サックスを取りに行っった。
「……なあ、何で真白ってわざわざあんな格好してんだろうな?」
「だよねー。真白ちゃん本当は可愛いのに」
「お洒落の仕方が分からないとか?」
「まさかー。『あの』真白ちゃんに限ってそれはないでしょう」
「いや、案外他人のことは分かっても自分のことはってやつじゃない?」
「? 先輩方何の話してるんですか?」
「ああ、一年はまだ知らなかったね」
「ね、歓迎会の時の私達って覚えてる?」
「はい。あのときの先輩達はとても可愛かったです」
「あれね、全部真白ちゃんがコーディネートしてくれたのよ」
「え……『あの』真白先輩が?」
「そうよ。『あの』真白ちゃんが」
「だから私達吹奏楽部員の間ではお洒落のことは真白ちゃんに聞くのが一番ってことは常識なの」
「噂じゃ七瀬君も髪型の相談してるっていうしね」
「ま、本人があれだから他の子に言ってもいまいち信じてもらえないんだけどね」
「本当、何であんな格好してるんだろ?」
「顔出すだけでも大分違うだろうにね」
「ねー」