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で、翌日。
「八神さん、ちょっと良いかしら」
「今日も懲りずに縦ロール来襲」
「聞こえてますのよ?」
七瀬黒斗ファンクラブ会長、みたいな立ち位置にいる十門灰音が取り巻きを連れて今日も私の前に立ちはだかっていた。ちなみに場所はお決まりのごとくお手洗い。……それにしても。
うーん、モデル体型。
縦ロールとか勿体ない。
「ストレートでハーフアップ? 前髪は斜めに流して……いや、緩いウェーブをかけた方が……?」
「あの、八神さん? 八神さーん。無視しないでいただけませんか?」
「あ。ごめん、ごめん」
「ごほん。では本題に。昨日七瀬君と一緒に帰ってらしたんですってね? 前にも忠告しましたでしょう?彼女でもないのに幼馴染みというだけで七瀬君と親しくしないで頂きたいと。それも、よりによってあなたみたいな……えー相応しくない人と」
十門さんは所謂お嬢様で、こんな虐めの見本みたいなことをやっててもどこか抜けているところがある。
まあ、相手が私ってのもあるかもだけど。
現に、今。
「て、何人が話しているときに携帯を弄ってますの!?」
「ん? 録音中?」
「ちょっと、そ、それをまさか七瀬君に……っ」
「正確には黒斗と七瀬おばさんに」
ま、そんなこと実際にはしないけどね。
だけど十門さん達は「きゃー、お義母様に!?」とか、「止めて!七瀬君に嫌われちゃう!!」とまあ、阿鼻叫喚だ。
そんな彼女達の間をすり抜け、私は女子トイレを後にした。