表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/11

01

最初は、ただ温もりだけがあった。 それは暖炉や毛布を連想させるような抽象的な概念としての温かさではなく、唯一無二の、すべてを包み込む現実であった。自己の意識が芽生える前、そこにはリズムがあった。存在の境界を定義するような、ゆっくりとした、揺り籠のような揺らぎである。意識は目覚めの瞬間のように突如訪れたのではなく、生まれたばかりの赤子の脳という柔らかく未形成の粘土の中に、奇妙で重苦しい自覚が根を下ろし、ゆっくりと開花していったのである。


ガズ・ミュリエルという名は、彼の骨の髄に刻まれていた。その名がどこから来たのかは分からなかったが、それが自分自身の鼓動と同じくらい確実に自分のものであることだけは理解していた。


ようやく目を開けたとき、世界は強いコントラストの図形と、フィルターを通したような光の霞の中にあった。彼は無染色のリネンに包まれていた。ざらついていて清潔で、日に干した繊維の匂いがした。小さな体が動くと、彼を抱く腕が熟練した手つきで引き締められた。それは意識的な思考というよりは、繰り返される労働から生まれた強さであった。彼はその女性の胸――母の胸から伝わる鼓動の振動を感じた。ドクン、ドクン。それは生存のメトロノームであり、捕食者は遠くにあり、寒さは遮断されていることを約束する脈動であった。


彼らは移動していた。足を踏み出すたびに、ガズの背骨に穏やかな衝撃が走った。彼は沈黙を守っていた。重く、反応の鈍い鎧のような体に閉じ込められた乗客のようだった。彼は泣かなかった。赤子にしては鋭く、奇妙なほど冷徹な本能が、泣くことは生命エネルギーの無駄遣いだと囁いているようだった。代わりに、彼は観察した。


カユカザ村は、息づいていた。


村の全容を見ることはできなかったが、その魂の音を聴くことはできた。それは生存のための摩擦によって定義されたコミュニティだった。重い木の扉が石の敷居を擦る音、一日の労働の前に点検される鉄の道具が触れ合うリズムの良い音。どこか遠くで、家畜が鋭くパニックに陥ったような鳴き声を上げたが、すぐに静まり返った。


空気は辺境特有の匂いに満ちていた。薪の煙、湿った土、そして川辺の湿地のわずかな金属臭が混ざり合っていた。赤子の霞んだ視界を通しても、必要性に迫られた建築様式は明らかだった。石造りの家々は暖を取り防御を固めるために密集し、その壁は不揃いのモルタルと苔で補修されていた。屋根は低く、風に茅を奪われないよう重い川石で押さえつけられていた。


遠くには、監視塔のシルエットが朝の空にギザギザの歯のように立ち並び、「既知の地」と「魔物の草原」の境界を示していた。


母、エラーラは近所の人々と立ち話をしなかった。彼女の足取りは集中しており、村の中心にある唯一の切り石造りの建物、「計量の教会」へと向かっていた。


教会の内部への移行は、感覚への攻撃だった。太陽の温もりは消え去り、よどんだインクと古い羊皮紙の匂いがする、突然の刺すような冷気に取って代わられた。カユカザの雑多な生命力は、記録管理の重圧によって抑え込まれ、無機質で静まり返った環境がそこにはあった。


エラーラは彼を小さな四角い部屋へと運び込んだ。中央には、数十年の使用で傷だらけになった巨大な木の机が置かれていた。その後ろには、壁と同じ灰色の石でできているかのような男が座っていた。彼は「計量の司祭」、魂の会計士であった。


「名は?」男が乾いたガラガラ声で尋ねた。


「ガズです」エラーラが答えた。彼女の声は赤子の背中に低く響いた。「ガズ・ミュリエル」


司祭の視線に慈しみはなかった。それは農夫が家畜の群れを見るような、潜在的な収穫量を評価する目だった。ガズはリネンの温もりから抱き上げられた。突然の接触の喪失に肌が粟立ったが、彼は不気味なほどじっとしており、その暗い瞳で司祭を無機質な、静かな強烈さで見つめ返した。


彼は冷たく硬い机の上に置かれた。顔のすぐ前には、水で満たされた白い陶器の器――マドラ・ボウルがあった。水面は鏡のように静止していた。


司祭は手を伸ばし、二本の指で水面に軽く触れた。一瞬、世界が息を止めた。


その時、空気が変わった。単なる気温の低下ではなかった。現実が希薄になるような感覚。ガズの胸の中央で引きの力が爆発した。それはまるで、彼の骨の髄から糸が解きほぐされるような感覚だった。器の中の水はただ凍ったのではない。それは「反応」したのだ。


接触点からギザギザの結晶構造が噴出し、上方へと砕け散った。氷は乳白色の濁った白で、亀裂と閉じ込められた気泡に満ちていた。霜は器の縁を乗り越え、机の表面を駆け抜け、瞬く間に暗い木の色を白く変えた。


室内の空気は、司祭の吐息が濃い霧となるほどに冷え切った。司祭は感銘を受けた様子はなく、むしろ苛立っているようだった。彼が指を引くと、霜の浸食は止まった。


「空間共鳴か」彼は重い台帳に手を伸ばしながら呟いた。「反応性は高いが、封じ込めはゼロだ」


羽根ペンの先が羊皮紙を掻く音は、骨を削るナイフのようだった。


「この子はふるいだ」司祭はエラーラを見ようともせずに言った。「マナを保持できず、置換してしまう。空間適性の中でも最も不安定な形態だ。十歳になる前に自壊するか、一生をかけて偶然左に十五センチ瞬間移動し続けるのが関の山だろう」


彼は台帳を回した。そこには鋭く事務的な筆致で、最終的な宣告が記されていた。


判定:ゴミ(育成不能)


その言葉はページの上で、暗く重く鎮座していた。価値が共同体防衛への貢献度によって決定される神権政治において、その言葉は社会的野心の死刑宣告に等しかった。司祭にとって、この少年は統計的な失敗作であり、壊れた道具に過ぎなかった。


「この診断により、」司祭は続けた。「この児はすべての義務的な魔法供託、指導、監視から公式に免除される。最低層の平民である。この子は国家ではなく、村に属する。意味するところは分かるな、エラーラ?」


「分かっております」エラーラは言った。その声に震えはなかった。


彼女は毅然とした、力強い手つきで彼を抱き上げた。再び彼女の胸の温もりに包まれたとき、ガズは彼女の鼓動を感じた。それは安定しており、強かった。


彼らは再び太陽の下へと歩き出した。カユカザ村の光は、今は違って見えた。それはもはや揺り籠を照らす光ではなく、修練場を照らす光だった。


ガズは母の肩越しに後ろを振り返った。血に汚れた鎧を纏って帰還する狩人たちと、轟音を上げ始めた鍛冶場のふいごが見えた。システムは彼の血の不安定さを見て、ただの壊れた氷の器だと判断した。彼らは、彼を監視する価値はないと結論づけた。彼らは、彼の奇妙で急成長する精神が望みうる最高の贈り物を与えてくれたのだ。すなわち、「不可視性」である。


カユカザの中心で、監視塔の影の下、ガズ・ミュリエルの人生は本格的に始まった。体は小さく、魔力は「不安定」だったが、その集中力は絶対的なものだった。彼は狩人たちの足運びを学び、司祭が「制御不能」だと断じた空間の秘密を解き明かすだろう。


世界は彼を計り、不足していると断じた。「ゴミ」のような魂を持って生まれた少年。それこそが、完璧な始まりだった。

皆様、第一話を読んでいただきありがとうございます! この素敵な物語の世界を楽しんでいただけたでしょうか? 完結まで走り抜けたいと思っていますので、ぜひ最後までお付き合いいただけると嬉しいです! 応援よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
今回は期待が高いんだ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ