小春静雨
苦しさが鼓動を打って動脈を波立たせ、
あなたを探す静脈がのびてゆく
どうか、わたしの苦しさをあなたにはわかってほしい
どうか、あなたの苦しさをわたしには教えて
ケヤキの梢はまるで静脈のように延びていたんだ
細やかな手探りで、空へ空へと
きっと目には見えない根は力強く地中へ深く深く
空を見上げれば白い飛行機と黒いカラスが交差した
カラスの飛行の静かさにはっとする
ゆうくりと夕焼けに帰ってゆくんだ
かぁ、かぁ、かぁ、、かっ、あぁ、苦しい、
とあなたを呼ぶよ
苦しさが鼓動を打って動脈を波立たせ、
あなたを探す静脈がのびてゆく
どうか、わたしの苦しさをあなたにはわかってほしい
どうか、あなたの苦しさをわたしには教えて
どうか、わたしの手を握り、わたしを離さないで
柔らかな地中から小さな手を伸ばすように
梅花黄蓮の群生が咲く
福寿草の小さな黄色の花が咲く
どの花を見ても、あなたを想った
小さな小さな春だった
小雨が降る、高い杉並木の合間、向こう空に降る雨は
微かな陽に照らされて、小雪が舞うようにみえた
静かな静かな雨だった