(旅の始まり編)魔王VS聖将軍
岩陰から襲い掛かってきた、どろどろしたものに炎の槍を放つ。
見事に中心部分にぶつかると蒸発して消え去った。
「さっきから、モンスターを全部一撃で倒してるね」
「て言うか、お前はもう少し働けっ」
さっきから襲い掛かってくるモンスターを倒そうともせずに、暢気に隣を歩いていているセシルの後頭部を軽く叩いた。
「もう痛いな~、勇者様の鍛錬に手を出しちゃ悪いかな? って思った親切心なのに」
「嘘だろ」
なんだか、痛いと可愛らしい仕草をとっているが構わず再び叩く。
以前なら躊躇していたが、あるセシルの独り言を聞いて、考えを改めた。
今朝、旅に出る準備が出来たかと聞きに行こうとしたときにそれを聞いてしまった。
セシルの独り言を再現してみるとこうだ。
っしゃあ、やっとあの禿げ親父どもから開放される。しかも、良い暇つぶしの相手になりそうな子と旅が出来るなんてめっちゃついてるし、あの禿げ親父どもにはさいごにいっちばんの悪夢をプレゼントしてから旅に出てこよう。
これを聞いた俺は、こんな、裏表が激しい奴を甘やかすのはいけない。
これはセシルのためにも厳しくしなければと父性に目覚め、今こうやって厳しく接しているのだ。
一人頷いていると今度は、蜂を巨大化したようなものが出てきたので先ほどと同じように炎の槍で焼き払った。
「にしても、さっきから雑魚ばかりだね~」
「そうだよな、多少は強い奴と戦ってみても良いような気もするし」
「そうだよね……あ」
「どうかしたか?」
いきなりセシルが立ち止まったので振り返る。
「なんか来た……」
「なんかって、なんだよ?」
「強い奴と戦いたいなら、相手をしてやろうか?」
見知らぬ声が聞こえたので振り返ると青白い光を放つ雷撃が襲い掛かってくる。
急な出来事なので避けるという考えが浮かばず、目を瞑る。
しかし、感じたのは痛みではなく、セシルの抗議の声だった。
「ちょっと、魔国だったら、これが挨拶なわけ?」
「……そうかもしれないな」
「魔王さんってひねくれ者」
目の前には、いつの間にか自分より前に出て、抗議するセシルとどこから現われたか謎の、夜色の髪で冷徹な感じのする無表情の男が口喧嘩をしていた。まぁ、セシルが一方的に怒鳴っているだけのような気もするけど。
どうやら、雷撃を打ったのは俺様男で、防いでくれたのはセシルだろう。
そう言えばさっきの会話の中に、勇者と言われたからには見逃せないワードがあったような気がするのは気のせいか?
「……そこをどけ。お前の相手をしたいわけじゃない」
「むむ、僕なんて眼中にないと? ふんっ、セイヤくんに相手して欲しいんだったら、僕を倒してからにすれば?」
「……そういう事ならそうさせてもらおう」
二人が戦闘モードに入ったようなので止めに入ろうとしたが、もう遅かった。
上空から無数の雷撃の槍がセシルに降り注ぐ、その様子にセシルは動揺するでもなくクスッと笑った。
槍がセシルに当たる前に何かに遮られるように消えていく。
不意に相手の男の近くの空間が歪み、象並みの大きい銀狼が出てきて鋭い爪で男をへと襲い掛かる。しかし、鮮血が飛ぶことは無く地面がつめの形に大きく抉れただけだった。
男は数歩離れたところで涼しげに立っていた。
「精霊獣か……通常のものよりかなり強力なようだな」
「言っておくけど、こんなものじゃないよ? 分かってるとは思ってるけど」
「それが?」
お互いに不適な笑みを浮べると銀狼が再び男に飛び掛かかった。
火柱が吹き出て銀狼の胴体を貫きその身が軽く飛ばされる。
次の瞬間には、20メートル程あったセシルとの間合いを一気に詰めた男が、どこから出したのか剣で切りかかる。
同時に宙から銀色に輝く槍が現われて斬撃を防ぐとセシルが空気に溶けるように消え、男の真上に砲台が現われそして光が男へと襲い掛かり爆発した。
土煙に包まれたその場所から、無数の刃が現れ周りを切り刻む。
再び地は抉れ、木々はみじん切りにされた。その内の一つからセシルが飛び降りる。
土埃が晴れると男は無傷でそこに立っている。セシルも同じく無傷だ。
お互いに見詰め合って、相手の出方を伺っている。
二人の周囲はすでに荒野と化していた
この、一瞬の隙に俺は、この戦いをどう止めようか思案する事にした。
さて、どう止めよう……
一つは、交渉をする。当然これは却下だ、二人がおとなしく聞いてくれるとは思えない。
もう一つは、力づくでだ。というかもうこれしかないだろう。しかし、こんな戦いでもお互いに本気を出していないのが分かるこんな二人を力づくで止めることが出来るのか?
でも、これしか方法が無いならだめもとでやるしかない。
覚悟を決めると、二人がお互いに相手に向かって走り出す。
即座に俺は二人の間に防壁を作るのをイメージする。
二人の間に巨大な防壁が現われた。期待以上の出来だ。
二人が、突然現われた防壁に怯んでいるうちに二人を縛る鎖をイメージする。
「っ!? 体が動かない……」
「束縛系の魔術か」
2人の動きが完全に止まったのを確認すると防壁を消し、動きを止められても気配を読みあってる2人の間に割り込んだ。
「2人ともとりあえず喧嘩終わり!!!」
「むっ、喧嘩なんていう安物じゃないよ、せめてコロッセオで見せられるようなすばらしい演技っていって欲しいね」
セシルがどこかずれた講義の声を無視して、襲い掛かってきた男を見る。
「とりあえず、話し合わないか?」
「了承しなければ、束縛を解かないのだろう?」
「そりゃあ、まぁ……」
「なら、話し合うしかないだろう、了承したから早く解け、縛られるのは好きではない」
こういうときでも上から目線なんだと思いつつ、開放した。
「それじゃ、ブラッドって魔王なの?」
「あぁ、一応そうだな、魔国を統治していたのだから」
俺の疑問にブラッド基、魔王があまり興味もなさそうに答える。
先ほどの銀狼がブラッドが声を出したのに反応して唸り声を上げる。
先ほど、火柱をぶつけられたのだから、当然の反応だろう。
それにしても何で、そんな位の高そうな人が俺たちに襲い掛かってきたのか気になる。
すると、ブラッドは再び気だるげに返事をした。
「暇だったからだ」
「は?」
「お前からは、滅多に感じない気配を感じる。それと戦えば暇つぶしになると思った」
「うわ、僕と同じような理由だ。戦おうっていう発想は無かったけど」
セシルにそんな発想は必要ないと言う、突っ込みも忘れて唖然とした。
そして、異世界に来て初めてぐつぐつと煮えるような感覚を覚える。
一気にそれが溢れてくる。
「おめぇら、人を何だと思ってんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
俺が怒号をあげたのにも関わらず、二人は至って涼しげに返した。
「僕の退屈度、安定剤?」
「暇つぶしの道具だな」
「……さいですかぁ」
もうなんか、色々疲れた……
そういえば、魔王って言えば勇者が倒すべき存在ってイメージがあるけど、こんなので良いのかな?
……まぁ、良いか。
う~ん、なんか毎回題名が変ですけど気にしないでくださいね。
て言うか、最近こっちばっかり更新してるな……
他も更新できるように頑張らなきゃです。