(危険因子編)勇者VS堕ちた聖将軍
「あぁ、もう数多すぎなんだよ!!」
襲い掛かってくる獣の多さに辟易してそう叫ぶ間にも大量の獣が襲いかかってくる。
またそれを切り裂き、なぎ払い、焼き焦がし、道を作る。
いい加減に飽きた……。
お願いだから隠れてないでさっさとセシルに出て来てもらいたい。
――セシルくーん、怖くないからでておいで。
馬鹿みたいだな……。
『あはははは、私の刃に切り裂けぬものなどない!! さぁ、肉片となるがいい!!』
「あのさ、大丈夫?」
『悪い、少しハイになっていた』
気を取り直して道を作っていっているとまた剣が不気味の声を上げ始める。
『……ハハハハハハハハ!!!!』
うん、なんかもう良いや。
色々諦めてひたすら獣を切り裂き続ける内に襲い掛かってくる獣の数が減り始める。
「よしっ、このまま一気に……風の刃、数は100!」
残っていた獣たちは、風にとらわれてその身を切り裂かれ消えていく。
その様子をみてほっと息ついた。
やっと、終わったこれでセシルを探しやすくなる――
「グルァァァァァァ」
うん? なんかものすごく不気味なうなり声が聞こえた気がするんだけど。
頭を少しずつ上げていくとまず、白い大きな塊が見えた。なんだろうと首をかしげながら頭を持ち上げていくとグロテスクな色をしたなにかが白い塊に引っ付いていて……完全に上を見上げると――。
無理無理!! グロすぎるこんなの言葉にできねぇよぉ!!
つか怖すぎる、なになんていうかドラゴンを骨だけにしたやつに気味の悪い物体が絡み付いてるっ……ギャァァァァァァ!!
「炎槍、衝突時爆発、数は1000!!!」
無数の炎で出来た槍が回りに現れドラゴンを狩るために放たれる。
――その時。
「解除」
見知った声がりんと響いた。
だけど、いつもより冷たくて無感情な響きをもっていた。
「……セシル?」
俺の呼びかけてもセシルはうつむいたまま何かを言っている。
耳を澄ませて見るがあまりに声が小さくて何を言っているかわからない。
「くっ……」
そんなことをしている間にも骨だけドラゴンが怪しげな色をしたブレスを放ったり、尻尾で払おうとしてくる。
無茶苦茶に襲い掛かっているようにも見えるがセシルの方へは全く被害が出ていない、という事はおそらくこいつもセシルの召喚したものだ。
「おっ、おいセシルこいつを止めろよ!!」
俺が思い切り叫ぶとやっとセシルは顔を上げた――
「…………えっ?」
思わず声が出てしまうほどにセシルの顔はらしくなかった。
表情は完全に消えていて、口もだらしなく開いたまま。
綺麗に澄んでいた瞳は赤く血走っていた。
そして、あまり敏感じゃない俺にも分かるほどの強烈なさっきが全身から出ている。
「――――」
「えっ? なんて」
「すべてを壊す……壊したらあそこに戻れるんだ……」
「せっ、セシル?」
戸惑った俺の声なんて聞こえてないみたいに、いや聞こえていないのだろう。
セシルは叫んだ。
「壊す壊す壊す壊す壊す壊す! 皆、全部、なにもかも、壊れてしまえ!!」
その叫びと同時に黒い獣立ちが視界を埋め尽くした。
のろまだな~と思いながら更新
変なところがあったら、遠慮せずにたたいてくださいね。