(危険因子編)集合
「あら、予定よりも大きくずれたわね。勇者の目の前に降りるはずだったんだけど」
みてみると遺跡の前に降ろされたらしい、ちゃんと自分で歩けということかしら?
面倒なことこの上ないわね。
と早速中へと進もうとすると弾丸がこちらへ飛んできた軽く体をずらしてよける。
「危ないわね」
すると、脇を金色の波が通り過ぎていって、遺跡の中へと入っていった。
あれは、双銃使いの危険因子かしら?
そういえば、随分と沢山の危険因子……というよりほぼ全員がこの遺跡に集まってるわね。
どういう事かしら? いよいよ、怪しいにおいがしてきたわね。
もしかしたら、神様の情けと称して危険因子を殺す勇者を送り込んでいる理由が分かるかもしれない。
俄然やる気がでたかしら?
早速遺跡の中に入ろうとすると今度は、誰かに服を掴まれた。
振り返ると今度は、自然を操る危険因子の少女がいた。
本当に沢山危険因子が集まってるわね、私が知らないだけで危険因子の人気スポットだったり。
「あの、この中は危険ですよ。大規模な戦闘が中で行われています、怪我をしてしまいますから近づかないほうが……」
言葉が途中で切れてしまったが良いですよとでも言うつもりだったのだろう。
でも、何で私を見た瞬間に言葉が途切れるのかしら?
もしかして、今の姿が変だということ?
今回は、急いで仕上げた割にはうまくいったと思って。自信作だったのに。
これすらだめだったら、私にはもう、挫折の道しか残されていないわ。
いえ、落ち込んでいる場合ではないわね。なにか言葉を返さないと。
「そう言うあなたこそ危険な場所に行って、何をするつもりかしら?」
「それは……」
少し挑発的に返してみると言葉に詰まって俯いてしまった。
押しに弱いのねこの子……キャラ的には中々一般受けしそうよね。
あらやだ、腐女子フラグが立ったせいで思考回路がオタクっぽくなってる。
「――グルル」
「あら?」
妙な唸り声が遺跡内部約500m前後から聞こえてきたようなので(なんで分かるかは私が天使だからよ)注意を払う。
黒い獣のようね、これって確か閻魔が地獄で飼ってたペットよね?
危険因子に召喚されたようだけど、いくら危険因子だとはいえ人にペット召喚された上に利用されるって大丈夫かしらあの死後の裁判官さん。
もう少し閻魔にはきちっと頑張って欲しいわ、仮にもいけすかない変神――じゃなかった。
神様の攻め相手候補なのに、間抜けだったら問題よね、言葉攻めを期待してるのに……。
……腐女子フラグが立ったからって考えてることが不謹慎すぎるわね。
丁度閻魔のペットが襲いかかろうとしてるようだし、軽くいなして地獄まで放り返してやりましょうか。
鼻先を叩いてやろうとするまえに奇抜な格好をした異形の手に獣が吹き飛ばされていた。
「大丈夫?」
三度目の正直とでもいうのかしら? 魔王の妹こと、異形の腕を持つ危険因子が明るい調子でそう言う。
なぜかリリアは、低いうなり声を上げて威嚇しているドラゴンを連れていた。
その様子を見て目を丸くしていた、ソフィーが気を取り直したように姿勢を正した。
「あの、この奥は大規模な戦闘が行われていて危険――」
「そんなの知ってるよ、だから、お兄様の手助けをと思ってここまで来たんだから。皆、ここから変なのが出てきたら噛み砕くか炭にしてあげてね」
私に言った内容と同じものをソフィーがリリアに言おうとしたが、言い切る前に彼女はそう返して遺跡の中へと消えた。
おそらく、前半はソフィーへ、後半はドラゴンに向けていったのだろう。
「あっ、そんな本当に危険なんですよ!!」
それをソフィーが慌てて追いかけていく。
なんだか、お祭り騒ぎね……。
軽く肩竦めて、自分も中へと入り込んだ。
熱意とは裏腹に、執筆速度が落ちる今日この頃