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(旅の始まり編)謁見

「気が重い……」


俺は今、謁見の間とか呼ばれている扉の前に立っている。

セシルが帰ってきた途端、「謁見だよっ、謁見!!」とか言ってきたからだ。

それだけならともかく、セシルはこう付け加えたのだ。

下手すると、一生この国の良いように使われるかもしれないから気をつけて、と、そのせいで俺の心拍数はやばい事になっている。心臓を吐き出してしまいそうだ。

セシルも謁見に立ち会うとは言っていたが、助けは、あまり期待はしないでね言っていた。

嘘でも良いから、そこは絶対に大丈夫僕が助けてあげるから安心してっ!! と言うぐらいは言って欲しかったのだが。


「準備が出来たようです。お入りください」

「あ……はい」


兵士が無機質に告げるので緊張感が増す。

両開き扉が軋んだ音を立てながら開くとぎこちない動きで中へと入った。

部屋の中は、予想通り赤を基調とした豪華な内装だ。それのいたる所から一斉に視線が自分へ集中するのを感じる。

注目を浴びる機会が無かったので一度は浴びてみたいと思っていたけれど、初めて浴びる注目が、こんな鋭い針を刺されるような視線を向けられるとは、理不尽だと思う。


「顔をあげよ」


重苦しいその声を聞いて自分が俯いていた事に始めて気がついた。

のろのろと顔を上げる思ったとおり周りの目は鋭い、まるで品定めをするかのようだ。

それから目を逸らすと、セシルと目が合った。にこりと笑顔を見せてくれる。

それのおかげで少し緊張が解れる。


「お主が、セイヤ エイリか」

「あ、はい……」


そこから、王様の話がだらだらと続く。

俺が勇者だと思われていることだとかその他諸々の良く分からない事。

最初の方は、自分が勇者だと考えられていること、モンスターを倒した俺に感謝していると言うこと、特に重要に感じられる事が無かったので、殆ど聞き流していたが。

途中から王様の話していることが微妙に脱線し始めた事に気がつく。

なんと言うか、この国には素晴らしい事がたくさんあるとか、何かの勧誘みたいな話だ。



「だから、お主には城下に屋敷を経てようと思う、この国のために貢献して欲しい……」

「ちょっと、待ってください」


さっきの話は、明らかに俺をこの国に留まらせようとしている事が伺える。

セシルの方をちらりと見るとこくりと周りに気づかれないようかすかに頷いた。

この国に良いように使われるなんてごめんだ。

だからと言ってはっきりと、あなた達のいう事はとてつもなく怪しいので遠慮させていただきますと言うわけにもいかないだろう。

間違いなく不敬罪か何かで、捕まえられる。

まぁ、逃げ出すことは出来そうだけど、無駄なスリルは感じたくない。

あくまで平和てきにだ。

なにか、良い方法が無いかと考えをめぐらせる。

王様が不審な顔で、こちらを覗く。

こうなったら一か八かハッタリだっ!!!


「俺は言われたとおり実は勇者です。そして神様からある事を告げられ、何かは聞かないでください言うと破滅に関わる事だと聞いています……滅びたくは無いでしょう? ……ですから、自分は今すぐ旅に出なければいけない立場なのです。行かせてもらえませんか……?」


まぁ、勇者というのはうそではないし良いだろう。神様がそう言っていたからな。

そのとき、不意にかちりと音が聞こえたかと思うと、自分の周りの空気がざわめき始めたような気がする。

なぜだろう、まわりの人間たちの表情が引きつって感じる。


「しっ、しかし、なにか礼をせねば示しがつかん」

「礼なn」

「僕が彼の旅のお供をしましょう。彼は異世界から来たと聞きます。ならばこちらの事情に詳しい者が良いでしょう、それに彼は強大な能力の持ち主です。半端な者をつかせるよりは、自分の方が適任だと思いますが?」

「……分かった。ならばそうしよう」


初めて口を開いたセシルが王様に一気に畳み掛け、納得させた。

その後何か会話があったが良くは分からない。

話はすぐに終わり、俺はセシルの自室ではなく、新たに客室へと案内された。


「はぁ、すごく緊張した」


客室にあったソファへとへたれ込む、二度とあんなことをするのごめんだ。

しばらく、ボーっとしているとだんだんと足音が聞こえ、勢いよく扉が開いた。


「セイヤくん!!! すごいよあれ、それと一応聞くけどあの話本当?」

「勇者ってまでは、本当だな。ここに飛ばされる前にそういわれたし」

「ふ~ん、そっか」


セシルは俺のことを凄いと言ったが、さっき凄かったのはセシルだと思う。

俺の言った滅茶苦茶な事を王様に納得させたのだから。

それを言うとセシルはブンブン首を振った。


「違うって、それはセイヤくんがあのタイミングで魔力を開放したから、納得したんだよ」

「魔力を開放?」

「あれ? もしかして無自覚? まぁ、良いやとりあえず凄いよセイヤくんは、でもその魔力は隠しておかないと色々面倒くさいから隠しておこう」


そう言ってセシルが俺の額に触れると周りでざわついていたものが静まった。

城に来る前も同じようなことが起きたが

もしかして、この周りでざわついているものが魔力だろうか?


「これでよしっ、じゃあ、今度は旅についてのお話でとりあえず明日でよう」

「えっ、明日? 早過ぎないかそれ?」

「ぐずぐずしてると引き止められるだろうと思うし早いに越した事は無いと思うけど」

「あぁ、それは面倒だな」

「でしょ? ならさっさと休むと良いよ、明日早めに出ようと思うから、……準備もあるし自分はもう行くね、バイバイ」

「分かった、また明日な」


セシルが部屋を出ていくと言われたとおり休もうとベッドに向かう。

とそこで自分は気づいた元の世界で着ていたのと同じ服を着ている。

つまり、ジーパンとTシャツで謁見をしていたという事になる。

これってどうなんだろう?

ついに旅が始まります。

なんか、勇者って要素がこじつけ的な感じになってるけど

気にしないでください。

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