(世界の色々編)幻想の狩人
「ねぇ、ソフィーちゃん。これなんかどうかしら?」
「似合う……でしょうか?」
そういって勧められたのは、色々なところがヒラッとしていて可愛らしい物だ。
似合うか似合わないかが、はっきりと分かれそうだ。
着るのがなんだか怖いです。
「大丈夫よ、ソフィーちゃん可愛いもの」
「そっそんな、ありがとうございます――うわっ」
気がつくと私は、エリーズさんにきつく抱きしめられていた。
抱きしめられのは、良いのですけど。顔が胸に埋まってしまって息ができません。
あまりの苦しさにエリーズさんの背を叩くと、それ気がついたエリーズさんが拘束を解いてくれた。
「ごめんなさいね、あんまり可愛かったものだからつい。許してちょうだい」
「いえ、大丈夫ですよ」
すると、エリーズさんは微笑んでまた服を選び始めた。
今、私はエリーズさんと一緒に服を選んでいた。
エリーズさんとは、この町へついて宿屋を探しているところで出会った。
出会った場面が、人相の悪い男性の方々を蹴散らした所だったので強い人だなと思っていて。
その姿を見ているうちに綺麗な人だなと思って。今は、一緒に居て楽しい人だなと思っている。
今日ここに居るのも、エリーズさんが一緒に買い物に行きましょうと誘ってくれたからだ。
誰かと一緒に買い物をするなんて、ほとんど無かったからとても嬉しかった。
「う~ん、じゃあここではこれぐらいにしようかしらね。じゃあ、そろそろ行きましょうソフィーちゃん」
「あ、はい」
太陽が真上に上っていて、外は沢山の人で賑っていた。
そんな、大通りをエリーズさんと一緒に屋台を覗いたりしながら歩いていく。
「色々あるよね。今度はどこ行こうかしら?」
「私はどこでも良いですよ。……どこに言っても楽しいですから」
「嬉しいこと言ってくれるわね。じゃあ、期待を裏切らないようにしないと」
そう言ってどの店が良いのかと考えてくれているエリーズさんを横目に見る。
長く艶やかに輝いている綺麗な金髪が宝石みたい。
「あれ?」
「どうかしたんですか?」
なので、エリーズさんが困ったような表情をしたのにすぐに気がついた。
どうしたのでしょうか? エリーズさんがこんな表情をするなんて、もしかして私がいい加減な返事をしてしまったから?
それなら謝らなければと口を開こうとする、けれどそれよりも先にエリーズさんが声を上げた。
「人が居ないし、何だか迷ってしまったみたいだわ」
「迷った……?」
迷うといっても角を一度も曲がっていないのにそんな事を思ったが、景色は見覚えのないものになっていた。
人影も全くなくあたりは不気味な静寂に支配されている。
いやな予感が頭をよぎった。
それが何かと気がつく前に答えを風が教えてくれる。
「どうかしたの。ソフィーちゃん気分が悪い」
「いえ、それよりもここは――」
「ここは殺しの舞踏会場よ」
言葉を引き継ぐようにして第三者の声が響いた。
空間が霧に包まれたかのように見通しが悪くなるとすっと女の人が現れる。
「殺しの舞踏会場って……あなた、何のつもりかしら?」
「つもりも何も、言葉どおりよ。昇天させてあげようと思ったの」
エリーズさんが武器に手を当て警戒気味に質問すると、相手を見下すような笑いを浮かべて白い毒蛇は言った。
視線がこちらへと向けられる。
赤紫色の瞳に見つめられると動悸が知らぬうちに早くなる。
不安、恐怖と言った負の感情が大きくなる。
「久しぶりね、あの時はお世話になったものだわ」
心臓が大きく鼓動を刻んだ。
覚えられていた。やはり、私に仕返しをするためにここへ現れた……?
「ソフィーちゃん下がっていてね」
「エリーズさん!?」
銃声が大きく轟いた。