(ヘルメイア編)異形の手
「……沈め」
少女を箱庭の中へと隔離し、何十倍、何百倍の重力で箱庭もろとも押しつぶす。
深入りするようなことはせずに、できるだけ大きく間をとるために身を引いた。
大きく穿たれた地面から少女が飛び出し、大きく異形の手を振り上げ、横に払う。
間一髪、ギリギリで避けながら次の一手に考えを巡らす。
相性の問題もあるとはいえ、素直に強い。連続的に撃つ攻撃は異形の手に打ち消され、一発の破壊力に特化したものを撃てば今度は、身を引き避ける。
接近戦に持ち込まれれば、身体的能力差からして破滅に向かうのは目に見えている。
……魔力の低いことが唯一の救いか。相手はほぼ接近しなければ攻撃ができない。例外で拳圧による衝撃波があるがこれはどうにでもなる。
異形の手が振り下ろされるのをギリギリで避け、虚無の箱庭を何十にも発動させ少女を隔離し、再び間をとる。
同時に魔力の流れに意識を傾け、強力な魔法を構成させていく。パリンと箱庭が壊れる音が聞こえると同時に魔法が展開される。
空と地に向かい合うように魔法陣が生まれ、様々な光を放つ鉄槌が降り注ぐ。
空から舞い降りた鉄槌は地に描かれた魔法陣の中へと吸い込まれるように消えていく。
効果が破滅的過ぎるので自分や周りを巻き込まないためのものだ。
バックステップを踏んで距離を広げる。この攻撃を受けて無事でいられる者などあり得ないのだが、仕留めていないという確信があった。
魔法が消え、土ぼこりからゆらりと少女が現れる。流石に幾つか擦り傷や火傷が出来ていたが、それだけだ。
虚ろとした目を中に彷徨わせ、唇が小さく動いた。
「勇者を倒さなきゃ……勇者はどこ……」
異形の手が振るわれる、衝撃波を放つ、つもりかと身構えるが放たれた衝撃波は大きく外れた。
その後、勢いよく地を蹴り異形の手を直接ぶつけようと振るわれる。
今までよりも弱く手が振るわれたので疲れてきたのかと思いつつ簡単に攻撃を避ける。
そんな攻撃を連続で仕掛け、不意に身を引いた。その時に置き土産だと言わんばかりに衝撃波を放った。
今度は、それることもなく真っ直ぐにこちらへ向かってくる。先ほどまでの攻撃とは違いものすごく重い衝撃波だ。
同じく衝撃波を放ち相殺する。そのときに何かが崩れるような音がした。
まさかと思ったときにはもう遅く、巨大な建物の残骸が崩れ落ちてくる。
それらを破壊するための余裕はなく、周りは壁で塞がれていて唯一つの道には大きく異形の手を振り上げている少女がいる。
打つ手なし……。
視界が残骸に埋められた。
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「撒けたか?」
『その様だな。その逃げ足の速さ素晴らしい。流石は主だ』
「なんかそれ、ものすごく微妙だよ」
息を整えると近くにあった建物上へと飛び乗る。あたりがどんな様子か確認する為だ。
あたりはボロボロになった建物がそこら中に散らばっている。人の気配は感じられない。
ブラッドは、どこら辺にいるのかと見回すと光の鉄槌が現れ、地面を突き立っている。
「ブラッド……?」
『その様だな。それにしても随分と強力な魔法だな……追い詰められてるのか?』
「追い詰められるって。そんな事あり得るのかよ、あのブラッドが」
『セシル殿やリオネル殿、程の能力を持ち尚且つ状況的に不利な立場に追いこれれば。あり得ないことは無いな』
「嘘だろ……」
地を蹴り、光の鉄槌が現れた場所へと全力で走る。
しつこく宣伝します、作者です。
ヘルメイア編が終わったらいったん生き抜きに番外編(小ネタ集)を書くのでネタがあればどうぞ~。
て言うかください、お願いします><