(ヘルメイア編)魔王の過去
セイヤを連れて自分は、城の資料室に来ていた。
ここへは自分の許可が無いと入ることが出来ない場所なので、セシルとリオネルは来ないと言うとセイヤはお前は良い奴だと抱きつかれた。
と言っても来たのは何もセイヤのためというわけではなく、調べ物があったからだ。
それで、さっきから資料を漁っているのだが、鬱陶しい。
資料を取り出すたびに沢山の埃が舞って、それを払って目は痛くなるし咳き込むので喉も痛くなる。
今度、人を集めてここを掃除させるか、念のために勝手に資料を持ち出せば焼死体になると脅して。
「なぁ、ブラッド」
「なんだ?」
そんな事を考えているとセイヤに肩を叩かれた、目を合わせて返事を返す。
「えっとさ、俺でも暇つぶしに見れるような本とかない?」
そう言えば先ほどから暇そうにしていたな、文字が読めないらしいから絵が多いものが良いか……。
少し考えてから数冊の本を呼び寄せた。それをぽかんと眺めていたセイヤヘ渡す。
「魔物図鑑だ。写真つきだからそれなりに暇つぶしになるんじゃないか?」
「そっか、ありがと。つか、こっちにも写真ってあったんだな。やっぱ、カメラを使うのか?」
「写真はあるが、カメラというものは知らないな。写真は、魔法で一部の空間何か紙に模写するが」
「やっぱ、そこも魔法なんだ~」
妙に感心した様子で頷くと開いた場所で図鑑を広げ読み始めた。
それを確認すると資料を漁るのに戻る。
調べている内容は、異形の手を持つ少女のことだ。
あの、異形の手には心当たりがある。けれど、まだ確証があるわけではないし、自分でも信じられ無い部分がある。
「どれも、同じことばかりだな……」
辺りにあるページが開かれたまま宙に浮いている。形容の仕方はそれぞれ違うが開かれているページの見出しは全て同じ意味で始まっている。
――魔を破壊する異形の手。
ヘルメイアに居る、変化能力をもった種族の中でも一部の人間だけが持つ力。
その手は、強大な力秘め、力だけで魔を破壊することができると言う。
要は魔法の類を全て壊す力を持っていると言うことだ。
それでも、限界はあるだろうがあの手は自分の魔力を確かに破壊した。
それだけならまだ良いのだが、純粋に破壊力も高い。
片手を滅茶苦茶にされたのでそれはハッキリと断言できる。
ただこの異形の手を持つものはもう居ないはず……。
そこで思考を停止し、資料室の奥へと向かう。
一番奥の棚、そこの資料をまとめて引き抜き奥に隠された一枚の紙切れを抜き出すと資料を棚へと戻す。
紙の表面に積もっている埃をそっと払う。そこに浮き上がったものに目を細めた。
そこには、4人の親子の姿が映っていた。
厳しい顔をして、妻の隣に立っている父。
その隣で慈愛をたたえた顔でそっと微笑んでいる母。
二人に挟まれて楽しそうにしている妹。
そして、無表情にたっている兄。
最後にそれを見て、笑い声が漏れた。
紙の中の小さな空間に居る。家族は自分の幼いころの思い出――自分たちの昔の姿だ。
自分はこの時からずっと。いや、生まれたときからずっと無表情だったらしい。
決して、感情が無いわけでもないし、故意に隠しているわけでもないが、いや、故意に隠すことはたまにあるか。
何故か、表情を作るのがあまり得意ではなかった。
続いて、母へと目を移した。
肌は自分と同じで透けるように白く、瞳は綺麗な紅色をしていた。
純粋な吸血族でヘルメイアで一番美しいとされていた。
優しく、料理が致命的に下手だったのが印象的だった。
自分はおそらく母に似たのだと思う。
吸血族の独特の甘い香りがするし、何より吸血衝動に駆られるのが何よりもの証拠だ。
次は、父に視線を動かす。
彼は先代、魔王だった。
そして、魔を破壊する異形の手の最後の継承者と言われている。
父親に対する思い出はあまり無い。
ただ、ひたすらに力を求めていたのは覚えている。
最後に、妹へと目を向ける。
兄の自分が言うのもなんだが、可愛らしく、とても無邪気だった。
殺伐としたヘルメイアの中でとても明るくて、いつもお兄様と呼ばれていた記憶がある。
どちらかと言うと幸せな家族だったと思う。
そう、幸せな家族だった……。
丁度、この写真を作ったすぐの事だっただろう。
父が力を求めるあまり、一つの禁術を発動させた。
禁術は、制御ができずに暴走し悲惨な結果を生み出した。
発動させた父は当然死に、それを止めようと飛び込んだ母も死体となって見つかった。
妹は、見つからなかった。
父と母の死体が見つかって埋葬される中、妹の死体だけは見つから無かった。
城の者が、禁術を使っている部屋の中に飛び込んだのを見たとのことだったので、妹も同じように死んだものとして妹の持ち物が死体の代わりに埋葬された。
妹が死んでいると言う事を疑ったものは誰も居なかった、自分も含めて。妹は四歳だった。
その後、自分が父の後をついで魔王の座についた。七歳だった。
子供が王の座に着くなどありえないと沢山の講義が飛び交ったが、ヘルメイアの決まり事で一番力の強いものが王になると言う物があったので欲望丸出しの者達を王にするぐらいならと自分以外の魔王候補を叩き伏せることで納得させ。そして今に至る。
そして、今日戦闘をした、異形の魔の手を持つ少女。
父という線はまず無い、相手は少女だし、死体をちゃんとこの目で見た。
もしあるとすれば……。
「あれは、妹……リリアだったのか?」
今、自分の歳は20、生きているとすればリリアの歳は17だ。
丁度、あの少女と年代が重なる。
「なに独り言、言ってんの?」
とっさに写真を袖の中に隠し、振り返った。
「いや、なんでもない」
「そうか……?」
「あぁ、それよりもそろそろ食事をしたほうが良いだろう、さすが、あの二人も手は出してこないんじゃないか?」
「そうだな、腹減ったし」
きずかれなかった事に安堵を覚え、そっと息を吐いた。
……なぜ、安堵を感じるのだろう?
ふと、そんな事を思う。
巻き込みたくないからだろうか……。
口が緩むのを自分でも感じた。
巻き込むのをいやだと思うぐらいにはセイヤのことを大切に思ってるということだろうか?
地の文ながっ!!!
これが、この文章を読んだときのレンレンの感想ですww
こんな風に、魔王さんに過去話をさせると不自然だったかな~っと思うんですけど。
皆さんはどう思います?
感想いただけるとうれしいです。
それと、小ネタいまだに募集中です。
キャラ崩壊ドンと来い!!www