(ヘルメイア編)自然に愛されし少女とお色気お姉さん
「やっと新しい町につきました」
荷物をストンと地面へ置いて、たどり着けた事の安心感に深く呼吸をした。
耳を澄ませると風たちのささやき声が聞こえた。
『ちゃんとつけたんだねソフィー、そうだ聞いて聞いて、レメイアの方ですごい騒ぎがあったんだよ」
妙にワクワクしている風たちのささやき声に首をかしげて、どんな騒ぎですかと聞く。
『強い人たちが大暴れしていたの、この前フィーリアに集まっていたぐらいの人たちがレメイアに集まったんだよ』
なんで、そんな事に? と聞こうとしたら風たちは『分からない、分からない』と言って再び流れていった。
何でそんなことになっていたのだろう、もしかしたらその人たちってセイヤさん達の事なのだろうか?
「みにゃぁ」
「きゃっ、くすぐったいですよ」
猫が首筋に体をさすりつけることで、私の思考は止まった。
猫をそっと抱き上げて、頭を撫でるとうれしそうな唸り声を出す。
この子は、セイヤさんと出会ったときにセイヤさんが抱いていた猫でそれからずっと私と一緒にいる。
撫で続けていると不意に猫が手の中から逃げて、地面に着地するとスカートの袖をグイグイ引っ張り始めた。
「早く行こうって事?」
「にゃあ~」
そうだよ、とでも言うように鳴いた猫を抱き上げる。
「確かに、そろそろ宿屋を探さなければいけませんね」
荷物を担ぎ上げると人の流れに沿って歩き始める。
こうやって、歩いていればそのうち町の中心につくだろうという考えだ。
宿って言うものは大概は中心の方にある。
そうやって、人の波に揉まれながら町の中心まで辿りつく。
宿屋はどこにあるのだろうと見回してみたがどこにも見当たらない。
どこにあるんだろうと立ち尽くしていると風たちがソフィーに話しかけた。
『宿屋のある場所を案内してあげるよ、教えてあげるからそのとおりに進んでね』
分かりましたと風に伝えると早速指示が聞こえた。
その通りに足を進めていく。
真っ直ぐ、右、右、左、真っ直ぐ、左、右、左……
足をひたすら動かしていると周りの景色が徐々に変わってくる、明るいところから暗いところへ。
風たちを疑うわけではないが、本当に大丈夫なのだろうか?
不意に肩が何かとぶつかった。
「ごめんなさい」
慌ててそう謝ると同時に深く頭を下げた。
「あぁ、良いぜ~、むしろラッキーだ。こんな所でかわいいお譲ちゃんにあえたんだ」
嫌悪感を感じる声が聞こえて、顔を上げると声にぴったりな形の悪い顔面があった。
他にも後ろにそんな感じの人間が数人いる。
そして、肩をぶつけてぶつけてしまった男が自分の肩にいやらしい感じで触れてきた。
どうしましょう……こんな事になってしまいました。う~ん、風に手伝ってもらいましょうか。
地に頼ったりしちゃうと地形が変わってしまいますからね。
早速、風に目の前の人たちを吹き飛ばしてもらおうと意識を集中すると、予想外の出来事が起きた。
いきなり、白くて、綺麗な細い腕が現れ、目の前にいる男たちのうちの一人につかみかかった、そして、つかまれた男は綺麗な弧を描いて吹き飛んだ。そして、次に綺麗な金髪が目の前でサラリと流れた、メキとかバキとか危険な音が響いて、男たちが倒れていく。
それを眺めて、感心していると自分の肩にかかっている手が小刻みに揺れていることに気がつく。
怯えているのだろう、最後に金髪がサラリとまた揺れ振り返ると美しい顔があらわになって自分のすぐ横にいた男の体も吹き飛んだ。
一瞬の出来事に呆けていると目の前で豊満な胸が揺れた。
私の胸より、二倍ほど大きそう、いえ、三倍かもしれません。
「大丈夫だった?」
自分より、少し高いところから聞こえた声に頷いた。
「そう、なら良かったわ」
そうやって微笑む目の前の女性は大人の色気を漂わせていた。
綺麗でかっこいい人だなと思っていると不意に目の前の女性が困ったような顔をした。
「ところで……宿屋の場所って分からないかしら?」
「宿屋、ですか?」
困ったように、少し恥ずかしそうに女性が頷いた。
「それなら、私と一緒ですね、私も宿屋を探していたんです。良かったら一緒に探しませんか?」
「そうだったの? 一人で探すより楽しそうだし、そうしましょう」
女性が笑顔で頷き、私はまた風に案内をしてもらいながら足を進めた。
えっと~、このお話は、サイドストーリー的なものです。