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(ヘルメイア編)勇者と天使と聖剣?

食事中の色々な騒ぎを経て、俺は案内された部屋のベッドの上にいた。

薄着でいかにも今から寝ますと言う格好をしているが、寝るわけではない。

じっと、目の前にある白銀の剣を正座してただ見つめる。


「う~ん、シャーロットが何か名前をつけておけとか言ってたけど……いいのが浮かばないなー」

「あら? 呼んだかしら?」


首を捻っていると急に背後から声が消えたので即座に振り返ると見知った天使がそこに居た。

強張っていた肩の力を抜く。


「イキナリ、出てくるなよ。ビックリするじゃねぇか。それと呼んでないぞ別に」

「あらそうなの? でも、私みたいな美少女が出てくるなんて嬉しいでしょ?」

「自分で言うのか……自分で」

「もしかして思わないのかしら? 私を見て思わないということは……もしかして、男色――」

「違う!! 絶対にそれは無い!!!」


うん、そうだ! 誤解しているやつのためにもう一度確認しておくが。

俺は違うぞ!! ちゃんと、シャーロットのことはかわいいと思うし、勿論胸はぺったんこより豊満なほうがいい。

……なに言ってんだ、俺?


「冗談はさておき」

「冗談だったのか!?」


思わず身を乗り出して突っ込みを入れるとシャーロットが一房自分の髪をつまんで指でもてあそび、そしてさらっと髪を流した。


「六割がた本気だったかも知れないわ」

「半分以上、本気じゃねえか!!」

「必死になるあたり怪しいわね。本当にその筋だったりして……」


それを聞いて即座に口を閉じた。


「そういう行動が必死だと思うのだけれど……話がそれたわね。あなたは今何をしているのかしら?」

「…………」

「必死と無言は違うわよ、喋ってくれないと誤解してしまうかも」

「剣の名前を考えていました」

「なぜ、敬語? まぁ、良いけれど。そんな事をずっと考えていたの? あなたがベッドに上でそうしてから、もう三時間以上はたっているわよ」

「なんで知ってんだよ?」


俺そんなに考えていたのかと驚きつつ、なんでシャーロットがそんなことを知っているのかと思うとさらりと答えた。


「天使だからよ」

「それ、絶対に理由になってないだろう」


そうシャーロットに突っ込みながら再び剣に目を向けて、考えをめぐらせる。


「いいのが思い浮かばないな~」

「その言葉、今ので47回よ」


だから、何で知ってるんだろうと心の中で突っ込む。

声に出さなかったのは、出しても天使だからよといわれるのがおちだからだ。

だから、その代わりに今手伝ってほしいことを口にする。


「名前考えるの手伝ってくれよ」

「嫌よ」


即答されてしまった。心がぴしりと音を立てた気がするがまだ大丈夫だ。


「なんで?」


今度は理由を聞いてみる。


「面倒だから。ただ、それだけ」


ポキッと心の中に音が響いて、頭ががくーんと下がった。

ハートブレイク っていうやつだな……たぶん。

頭がダラーンと下がった俺をシャーロットは眺めると口を開いた。


「傷心中のようだけど、名前を考えたいなら、本人に聞いてみればどうかしら?」

「なに、本人って?」

「剣のことに決まってるじゃない」

「剣?」


なんだ? シャーロット頭の中大丈夫なのだろうか?

そう思った瞬間に純白の羽が頬をかすめ冷たい感触を感じた。

なんだろうと手で頬を撫でるとぬるっとした感触がして、視線を向ける。

……これって、血?


「ギャァァァァァ!!!」

「血ぐらいで騒いじゃって」

「お前のせいだろ!!」

「意外と冷静のようね」

「大体、なんでイキナリこんな事するんだよ」

「なんだか、失礼なこと考えられたような気がするからよ? それはともかく、その剣を握って魔力を流しなさい」


納得はできないが有無を言わせない物言いに仕方なく剣をにぎる。

とそこで、あることに気がついた。


「なぁ、シャーロット?」

「なに?」

「魔力ってどう流すの? ……そもそも何が魔力?」

「あぁ、あなたはそこからなのね」


ふーとシャーロットが息を吐いて、何かを呟いた。


「何言ってんの?」

「言ったところでどうせあなたは分からないわ、説明するのも面倒だから気にしないで」

「何気に扱いひどくない!?」

「あなたが無知なのがいけないの。じゃあ、まず目瞑って自分に集中しなさい」


何から何までひどいなと思いつつ言われたとおり目瞑った。


「そうしたら、自分の中に何かの流れを感じるはず、漠然とで良いからそれを感じて」


流れ、何かの流れ……

自分の胸の鼓動、血液流れていく感触。

違うこれじゃない。

ふと、自分の中にそれまでとは違ったざわめきを感じた。

今までにも何度か感じたことある、セシルが魔力を隠すといって額に触れたとき、リナリア聖王国の王と謁見をしたとき。


「もしかして、これ?」

「感じたなら、それを外に押し出しなさい」


アバウトな説明だと思いながら、それを外に押し出そうとする。けれど、流れは相変わらず自分の中を静かに流れている。

押し出すというのがいけないののだろうか? なら、流れを外へと向けて……。

瞬間、鈍く太い音が部屋に鳴り響いた。

驚いて目を開くと部屋がゆれている。


「え? えっ!? 何が起こってんだよ、これ?」

「混乱していないで暴れまわってる魔力をその剣に向けて流してくれるとありがたいわ。じゃないと大変なことになるわよ。きっと」


慌てて流れに集中をして剣へと流れを向けた。

部屋から騒がしい音が次第に消えていく、完全に音が消えて揺れも収まると肩の力を抜いた。


「あれ? 焦げ臭いにおいが……」


ジューンという音が聞こえる、なぜだろうものすごく手が熱い……。


「つか、マジ熱いって!!」


手にしていた剣を放り投げて、自分の手を見つめた。

すごく酷い火傷をしていて、皮膚がただれて赤黒い血がこびりついていた。激痛に叫びそうになったがすぐに痛みが引いていく。

事前に撮った映像を早送りしているかのように手の傷が治っていき、数秒後には跡形も無く消えていた。

俺の体一体どうなってんだよ……。

自分の自然治癒力にブルッと震えていると凛としたこえが聞こえた。


「自らの武器を放り投げるなんて、酷い方だ」


それは、女の声で。シャーロットってこんな喋りかたしていたっけと振り返った。


「……誰?」


しかし、そこにいたのは銀髪で髪が長く純白の翼を持った美少女ではなく。

少し薄い色の髪に強い瞳を持ち、しなやかな体を持った女性だった。

当然、知らない人なので疑問の声を上げると真横から返事が返ってきた。


「あなたの剣が人の形を取ったものよ?」

「シャーロット!?」


思ったよりも近くにいたシャーロットに驚いて身を引く。

そして、再び目の前の女性を見た。

さっきの剣がこの女の人?


「そうだ、主、私は主の剣だ」


首をかしげていると女の人がシャーロットの言葉を肯定する。

まぁ、そこまで驚かない。

ここはファンタジーな世界だし、めちゃくちゃな体験は沢山している。

一人頷いているとシャーロットにわき腹を突付かれた。


「ねぇ、あなた剣が人の形をとったんだから。聞きなさいよ、名前どんなのが良いか」

「あぁ、そっか……」


目の前の女性に向き直る。


「あの名前どんなのが良いですか?」

「名前?」


こくりと頷く。

なぜか、女の人は鼻で笑い足を大きく踏み鳴らした。


「名前などは、どうでも良い……そんなことよりもやっと私が形をとることが出来たのだ。早速、私の扱い方について教えよう」

「は?」


なんで、そんな展開になると抗議の声を上げようとするとシャーロットに遮られた。


「それなら、ついでにこの中に書いてあることについても教えてくれるとうれしいわ」

「おぉ、分かった」


シャーロットからなにやら本を受け取った剣(らしい)は力強く頷く。


「そう、なら助かったわ……じゃあね、江入星矢」


俺の方を見て、にこりと微笑みながら手を振るとシャーロットが部屋から消えた。

すると剣がこちらへと笑顔で迫ってくる。

なんで、ものすごい美女に笑顔で迫られてるのにこんなに恐怖を感じるのだろう。


「それでは、早速修行を始めるか」

「ちょっ、俺これから寝るとこ――」

「寝るのはいつでも出来る、さぁ、今すぐ着替えるのだ」

「えっ? ちょ!!?? ギャァァァァァァァァ!!!」

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