(観察者編)神の娯楽
「なんだか、ものすごく大変だったみたいね、勇者は」
情緒不安定になったり、土砂に流されたり、ドラゴンに剣を持っていかれたり、中々に大変時間を過ごしたようね。
剣を渡す場面のこと、もう少し考えてあげたほうがよかったかしら? でも、あの時間以外、他の誰かとほとんど一緒に居たしね。
仕方が無いということにしようかしら?
と丁度その時カツカツと足音が聞こえてきた。
どうやら、またここへ来たらしい。
「どうかしたんですか? 神様?」
「あぁ、どうかしたぞ、勇者の冒険を覗きに来た」
そう言って、私の隣に並び、世界を覗き込んだ。
なんだか、最近では、この覗きが神様の娯楽の一つになっているらしい。
今まで、勇者を使わしたときはこんなこと無かったのにどうしたのかしら?
「それは、今までの勇者より、行動が面白いからだ」
「人の思考、勝手に読まないでくれますか?」
「あぁ、すまん、ついな。許せ」
許せとか言っている割に神様は尊大な態度をとっている。
まぁ、神様なんだから仕方が無いわよね。
「ほほう、今度は、仲間と喧嘩したのか? しかし、すぐにともに行動しているな」
「神様には、これが喧嘩に見えるんですね……」
「違うのか?」
「いや、別に……」
今初めて思ったが神様って意外と天然なのかもしれない。
見た目やくざなのにね、ならず者なのにね。
「うん? なにやら、失礼なことを考えなかったか?」
「それは思考を読んでそう思ったんですか?」
「いや、勘だ……」
勘……、そうきたのね、まぁ、神様の勘はほぼ当たるからね。
まぁ、神様なんだから当然よね。
「そういえば、勘といえば。あの勇者もしかしたら、危険因子を殺さないかもしれないな」
「それも、勘ですか……?」
「あぁ、まぁ、そうだな……」
ふ~ん、そうなのね、神様の勘はもう、人間がよくする先見、なんかよりも確実だからね。
少し、期待してもいいのかしら?
「まぁ、そうなったら。少々考えなければならないのだがな」
「何をですか?」
「色々だ」
「色々ですか?」
そういうと、カツカツと足音を響かせながら、遠ざかっていく。
そして、いきなり足を止めてくるりと振り返った。
もう、なんだかパターン化されてるわねこの動き。
「そう言えば、シャーロットよ。今度勇者に会うときがあれば、この本を渡しておいてもらえぬか」
そう言って、神様の放り投げた本が、自分の腕の中に納まった。
前に渡せと言われた剣と違って軽いので助かった。
それにしてもこの本、なんだか、妙な気配を感じるわね。
見た目も剣と同じで細かな模様が描かれていて綺麗だし。
「これは何の本ですか?」
「あぁ、あやつに与えた力で扱える、神の力についての説明だな。そうだ、渡すときには読むときには一緒にいる危険因子にでも手伝ってもらえと言っておいてくれ。それかあれに渡した剣か」
「えぇ、分かりました。…………えっ!? あの勇者は神の力が扱えるんですか!?」
「あぁ、どうやらそのようだ、もしかしたら、神にする筈だった魂に間違えて人間の器を与えてしまったのかもしれないな」
勇者、江入星矢……あなた、意外と滅茶苦茶だったのね。
神様も神の魂を間違えて人間の器に入れてしまうなんて、いい加減だわ。
「まぁ、そう言うことだ、取りあえず渡しておいてくれ……」
そう言うと神様は、姿を消した。
「はぁ、江入星矢が危険因子にイキナリ襲われなかったのはその魂が神の魂だったせいかもね……まぁ、一部例外はいたけれど」
神「あとがきに現れた神だ」
作「はう!? 後書きに神様が現れるなんて!? なむなむ……」
神「そんなに畏まらなくてもいぞ」
作「!? そうだよね~、思えば所詮あなたも僕の妄想のさんぶt」
神「そう言われるのは、それでイラつくな、古傷がうずいてきた」
作「えっ!? ちょっと、神様? そのバチバチいっている、左手はいったい……」
神「逝け」
作「ギィャャャァァァァァァ!!!!!!」