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(パニック編)情緒不安定な勇者様

「草木ひとつ生えていないんだな」


目の前に見える景色について一言正直な感想を述べてみる。


「ここら辺りわね~。レメイルも、もっと北に行くと緑で溢れかえってるところもあるんだよ」

「ふ~ん」


まぁ、そうだろうと思う。ちなみにレメイルって言うのはこの世界というか大陸で一番面積を取っている地域らしい。

そして、それぞれの国を区切るようにある、山脈との事、というかレメイルが区切るようにあるから、自然にそこが国境になったらしい。

それで、俺たちは魔国ヘルメイアに行くためにこの山を渡るのだが疲れそうだ。

恐ろしく急なわけでもないのだが、坂が延々と続いている。

深くため息をついた。


「もう、セイヤくん? こんな所で精神力削ってたら、絶対に頂上までなんていけないよ」

「そうだよな~」


パシパシと自分の頬を叩いて気合を入れなおす。


「疲れたら、背負っても良いが?」

「ぶはっ――」


入れた気合が見事に吹き飛んでしまった。


「いや、大丈夫、絶対に大丈夫だ!」

「異様に絶対を強調するね~、というか顔真っ赤~――きゃふっ!?」


取り合えずいらない事を言うセシルの頭を思い切りはたく。

というかブラッドイキナリそういう発言はやめてくれ心臓に悪すぎる。

俺はそんな羞恥プレイに喜びを感じるほどMじゃないし。

何より、一部の素敵なお姉様たちを喜ばせる趣味は断じてないんだよ。

まぁ、ココにはそんなお姉さまはいないか……。

変わりにそれをからかう馬鹿者が二人ほどいるが。


「ていうか、セシルも懲りないね。聖将軍なのに学習能力無いの?」

「元・聖将軍だし。というか分かっていてもからかいたくなるんですよ。本能には逆らえないものですよ」

「確かに、打てば響く反応するからな、セイヤ」


取り合えず馬鹿な会話が聞こえてきたので今度はリオネル、セシルにまとめてこめかみ辺りを拳を当てて思い切り押さえつけようとする。

拳に恐ろしく固い感触を感じた。


「へぇ、結界かなるほどさすがは元・聖将軍。瞬時に張るなんて中々だね」」

「でしょ、だけど、この結界長くもちそうにないな。多分数十秒後には、壊れると思う」

「じゃあ、逃げるか……」

「まぁ、この前のこともあるし逃げるときは能力前回じゃないとやばいかも?」


逃がすかと力任せに結界を壊す頃にはもう二人ともその場所にはいなかった。

しかし、まだ見える。この前と同じ要領で捕まえれば大丈夫だろう。

セシルの前方へと瞬時に移動してセシルの首根っこを捕まえる。って、いない?

伸ばしたては空を切った。セシルは近くには見当たらない。

今度は、リオネルに視線を向けて、動きを縛る鎖をイメージするが。

捕まえたと思った瞬間にリオネルの体が闇に包まれ、また、何でも無いように逃げて行った。

ギリギリと歯軋りをした。

ブラッドが何でもなさそうな様子で一言漏らした。


「あの二人もかなりの実力者だからな、二度も三度も同じ手には引っかからないということだろう。今回は全力で逃げてるようだしな」

「っ!!」


なら、余計に捕まえてやると激情に身を任せ、二人を追ってレメイルへと入った。


○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●


「もう後ろから追いついてきているぞ」

「ふえ? うわ、ホンとだ物凄く早いね」


後ろから壮絶な表情をした、セイヤが追いかけてくる。普通に怖いな、あれに捕まったら何されるか分かったものじゃない。

脚の動きをさらに早める、隣のセシルも同じように速度を上げた。

さすがは聖将軍もこのスピードでも、らくらくついて来ますか。

それにしても、後ろから感じる殺気……、なんか、最初にセイヤにもったイメージとかなりかけ離れているのだけど。

試しに隣を伴走しているセシルに尋ねてみる。


「う~ん、確かに言われて見れば恐ろしく暴力的になってるかも? 前から、照れ隠しに頭叩いてきたりしたけど、殺気は感じなかったからな~」

「何か、心当たりとかあるか?」


背後から放たれる炎槍やら砲撃やらを闇で消し去りながら、質問すると全力で走りながら腕を組んでうなりながら考え始める。


「……あっ、もしかすると蛇女が原因かも」

「蛇女? ああ、あいつか俺と同じあだな付けてたんだな」

「リオくんも? へぇ、奇遇だね」

「そうだな。で、あいつが原因ってどういうことだ?」

「いやね、あの人僕たちに精神に圧力かけてたんだよね。それで、セイヤくんって普通の人間だったらしいから、精神への圧迫を防ぐ方法なんて知らないよねって心配したんだけど。その時は平気そうだったから特に何も無かったんだけど。それから、急に暴力的になったんじゃないかな?」


精神的への圧迫か精神に防壁を張らずにいたら確かに影響が出てもおかしくは無い。でも、あの女の精神圧迫は群を越しているから操られてしまうものなんだけど。

情緒不安定、程度で済んだというのは流石は勇者ということか。

でも、だからって頭ギリギリはたまったもんじゃないな。普通なら死ぬぐらいの強さでしてくるからな。

だから、どうにか解決したいのだが……。


「さて、どうしたものかな」

「取り合えず、限界まで暴れさせてみたらどうかな? そしたら、案外目が覚めるかもよ?」

「あぁ、確かに……やってみるか」


そうと決まればまず最初にトラップでも仕掛けるとしようか。

周りの魔力の気質を調べてそれにあった魔方陣を頭の中に描く。

そして、走り抜けた後にトラップを展開した。

セイヤたちを襲撃するときに使ったトラップだ。

フィーリアでは火の気質が強かったので煉獄の炎になったが、ココは地の魔力気質が強いようだ。

地の魔力気質が強いとどうなるのだっけ? と疑問に思うと背後から地響きが聞こえた。

ちらりと振り返ると地割れが起きてさらに土砂崩れが起きている。

道が少し塞がってしまったけど、通れないことは無いだろう。


「うわ~、リオくん鬼畜だ。て言うかあんなの受けて大丈夫なのかな?」

「直撃しても半殺し程度になるように調節したし」

「やっぱり、リオくん鬼畜だ」


全速力で走ったままそんな事を言い合っていると爆発音が聞こえてきた。

土砂崩れで積もった土砂が吹き飛んでいる。


「どうやら、無事だったみたいだな」

「流石は勇者様だよね、セイヤくん。手っ取り早くダウンしてくれてたら良かったのに……」

「セシル、お前も結構鬼畜だな」

「そうかな?」


セシルはそう返すと袖口から巻物を取り出して中身を広げた。

何か、絵が描かれている。


「何をするつもり?」

「うん? 四方位を守る守護獣でも召喚しようかと……、この巻物は召喚を早めるためのアイテムね。それでも、手間がかかるから滅多に使わないんだけど。セイヤくんをヘトヘトさせるにはこれぐらいやらないとね」

「四方位の守護獣ね。相手は一応戦闘初心者なんでしょ? ふざけた能力持ってるけど。 それでも最強って言われる精霊獣に相手をさせるって。やっぱり、お前鬼畜じゃない?」

「そうかな? あ、これから詠唱始めるから邪魔しないでね~」


そう言うとセシルは隣でブツブツと何かを唱え始めた。

あまりに早口すぎて何を言っているのか理解できない。

それにしても、走りながら詠唱ってかなり器用な真似をするな。まぁ、自分もさっきやったけど。

再び後ろから攻撃が飛んできたので闇で消し去る。

それを延々と続けていると横から不意にはっきりとした声が聞こえてきた。


「東の守り手、木々を司る春の象徴青龍よ。西の守り手、金を司る秋の象徴白虎よ。南の守り手、火を司る夏の象徴朱雀よ。北の守り手、水を司る冬の象徴玄武よ。我の呼びかけに答え。我を守護せよ!!」

「でっかい魔法陣……」



空中に魔方陣が現れて、それぞれ。青・赤・白・黒とそぞれ違う色をしている。

その魔法陣から、一体ずつ違う姿をした精霊獣が現れる。

皆、魔法陣に見合った大きさをしている。

それが一斉に後ろを追いかけてくる、セイヤへと襲い掛かっていった。

パタッとセシルが足を止めたので俺も足を止める。


「どうかしたのか?」

「えっとね、召喚者と召喚対象ってあんまり離れられないんだよね~」

「あぁ、なるほど……。じゃあ、ここで迎え撃ちますか」

「物騒なこと言うね」

「と言っても、ブラッド見当たらないしココで待ったほうが良いんじゃない?」

「俺ならここにいる……」

「「いつの間に!?」」


気配にも全く気づかなかった。セイヤの相手をしているからといっても、油断しすぎたか?


「ずっとだが……、というより何をしている? ついに勇者が邪魔になったか?」

「もう、物騒なこと言わないでよ。今は、セイヤくんの情緒不安定を直してみましょう企画を実行中なだけ」

「なんだ、それは?」







「成るほど、確かに様子がおかしかったな。……なら、俺も加勢しよう、そろそろ、襲い掛かってきそうだしな」

「えっ、何で?」


セシルが首を傾げると同時に衝突音が聞こえて振り返るとそこには、伸びきった白い虎の姿があった。

先ほど、セイヤと精霊獣が戦っていたうちの一匹だ。

戦闘が行われていた場所を見ると、すでに精霊獣の姿は無かった。

ということは、セイヤが全て倒したということか、恐ろしいな勇者。


「じゃあ、ブラッドとしては俺たちでセイヤを止められる思う?」

「どうだろうな……」

「というか、セイヤくんそもそも何で僕たちのこと追いかけてきたか忘れてるっぽくない? 目が血走ってるし。本気でやらないと危ないかも?」

「下手に刺激したのがまずかったのだろうな……」

「もう、リオくん駄目じゃん」

「むしろ、お前だろ聖将軍」


そんなこと言っている俺たちに光の一閃が襲い掛かってきた。

それを巻く切りにして、セイヤくんの情緒不安定を直してみましょう企画が始動した。

と言うか、この名前どうなんだろうか?

どうしてこうなった!?


見たいな気分の作者です。

どうして、こうなったんだろう?

なぞだ……。

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