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(パニック編)貧血の勇者

いい香りがする……。甘くてとろけるような香り……。

ゆらゆらよ揺れるような感覚がしてゆっくりと目を開いた。

ゆっくりと景色が流れていく、動いてるのか?

まだ、ボーっとしている頭でそんなことを考える。

流れていく景色の中に違う物が急に割り込んだ。


「あれ、もしかして起きた?」

「うわっ!?」


いきなりセシルの顔がドアップで見えたので身を引くと足が動かずに倒れそうになる。

とっさに手を伸ばして両手で何かに抱きついた。

あれ? なんか、暖かいして言うかこの感触。


「起きたのか?」


目の前には、ブラッドの顔があった。

て言うか、つかまってるのって首? えっ、もしかしてこれって……。

自分の今の状況を足元の辺りから確認してみる。

足先は? 見えません……。

太ももは? かろうじて見えます。というか掴まれている感触がします。

胴体は? 密着していますね、筋肉の感触がします。

腕は? 首に巻きついていますね、おそらくブラッドの首に。

顔は? 頬に髪の毛の感触がします、意外と気持ちいい。それといい香りがします。

つまり? おそらく、おんぶされて……


「ぎゃぁぁぁ、立てる!! 自分で立てるから!!!」


慌てて、ブラッドの背中から離れようと暴れて、どうにか手が外れる。

地面に足がついて着地する。妙な降り方をしたのでバランスが崩れる。

踏ん張ろうとしたが、今は寝起きで力が入らなかった。

当然倒れる筈だったのだが、その衝撃は訪れなかった。


「大丈夫か? セイヤ」

「えっ、あっ、うん」


いつも、無表情なブラッドが僅かに心配そうな表情を見せている。

さっきのおんぶもそんなに騒ぐほどでもなかったかと反省しようとすると。


「うわ~、セイヤくん積極的だ」

「そっちも行けたのか? いや、元々そっちだったのか?」


なんだろうこれは? 怒って良いよな? 叫んで良いよな?

まぁ、許されなくてもやるけどな……。

深く息を吸い込み腹に力をいれる。


「オマエラァァァ!!」

「おいおい、凄まじい殺気を感じるぞ」

「頭が陥没するのがいやなら、逃げたほうが良いかも?」

「そうだな」


二人が常人とは思えないスピードで逃げていく。

いや、実際常人じゃないのだろうが。

しかし、遅い!!


「逃がすかぁ!!」


瞬時に、セシルの前方へと移動して通りすがりに首根っこを捕まえる。


「ひゃう!?」


続けざまに動きを縛る鎖をイメージして、リオネルの動きを止めこちらも首根っこを捕まえる。


「さすが勇者様……」


さぁて、どうしようかなぁ?


「はう!? セイヤくんが病んでる人間よりも怖い感じの雰囲気を!?」

「邪悪だな……。死の宣告を告げる笑みだ……」



○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●


「うっ、うぅ、あたまがぁ……アタマガァ……」

「メキメキいっていたような気が……」


二人とも頭を押さえて呻いているところを見ると罪悪感がないわけでもないが、これだけしなければ絶対に改心しないだろう。

と言うかこれだけしても改心しないような気がするぐらいだ……。


「常人だったら死んでいそうだがな……」

「そうか?」


ブラッドの一言にそう返すとあぁ、と続けた。


「常人なら、頭がぐしゃっと潰れて脳みそg」

「いや、分かったもう良い……」


ブラッドは俺の言うとおりすぐに黙ってくれたが。

うっかり、想像してしまった。普通に怖いんだけど……なんか、寒気がしてきた。

気持ちを切り替えようかどうにも気持ちが悪くて仕方がない。

切り替えられるような事。なにか、あったかな?

……あぁ、そういえば一つあった。あまり触れたくないんだけどな。

でも、仕方がない。この気持ち悪さを振り払うためだ。


「えっと、ブラッドなんで俺背負われていたんだ?」

「それは……悪かった」

「は?」


急に悪いと言われてもどうリアクションすれば良いか分からないのだが。

訝しく思うと金色の髪がふわりと揺れた。


「それは、僕が説明してあげましょう~」

「お前、復活するの早いな……」

「元・将軍だからね~。と言うことで回想タイム!」


妙に元気な様子でセシルが語り部の真似事をしながら話し始める。


「それは昨日の真夜中の事でした……。僕は魔王さんが行き先について、二択で妖精の箱庭(フェアリーガーデン)魔国(ヘルメイア)かを聞かれて、魔国(ヘルメイア)と答えました。そして、魔王さんって魔王さんなんだから、魔国ヘルメイアの王様なんだよね!? すっごい優遇されのかなと話していると……」


そこで一端きり、セシルが続きを話そうとすると。


「いきなり魔王様のブラッドが聖将軍、セシルを投げ飛ばし、勇者のセイヤの首筋をがぶり。そして、貧血でセイヤは倒れました、お終い。まぁ、ブラッドは吸血族だと聞いたし。一週間以上血を飲んでいない。そして、昨日が満月だったのが悪かったな。吸血本能に駆られたと言うことだ。ちなみに俺が狙われなかったのはセイヤの血のほうがおいしいかららしいぞ」

「ちょっと、リオくん!? なに良いところかっさらちゃってんですか!!」

「別に誰が言おうと一緒でしょ」

「でも、言いたかったの!!」

「分かりました。以後気をつけます」

「ものすっごく棒読み……」


なんか、最後の方がグダグダになっていたが何が起きたのかは把握した。

だから、ブラッドは悪いと言ったのか。

ブラッドを横目でちらりと見ると気づいたのかこちらを向いた。


「そういうことだ、悪かったな……」

「いや、別に良いしさっき話からするとわざとじゃないっぽいしさ。でも、今度からは遠慮せず俺の血飲んで良いんだぜ。イキナリ噛み付かれるより助かるし」

「今度から気をつけよう……」


ブラッドの言葉に了解を示すように頷く。

一回セシル達の方を向くとまだ、わーわー言っているので聞けそうにないなともう一度ブラッドを見る。


「なぁ、ヘルメイアに行くってどうやって行くんだ?」

「特に移動手段がある訳でもないから徒歩だな。途中でレメイルを少し上る事になる。すぐに降りるが」

「うわ、なんか大変そう……」

「別に行こうと思えば一日でいける」

「それって、お前限定じゃないか?」

「そうかもしれないな……少なくとも一般人には不可能だ」

「だろうな……」

安直なタイトルには触れないで……



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