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(フィーリア編)夜逃げする勇者一行2

「っ!? 下がっ――」


轟音と共に灼熱の炎が空間を飲み込む。

ワンテンポ遅れて暴力的な風に襲われ、体が宙に投げだされた。

やばいかも……宙に浮いている状況じゃまともに受身も取れない。

そんな好機を逃すはずもなく下方から女が襲い掛かってくる。

このままじゃ間違いなく八つ裂きにされてしまうだろう。

あんまり、得意じゃないのだが攻撃魔法の詠唱破棄でも使うしかなさそうだ。

風の爆発(エアロブラスト)思い描いた魔法が発動して、再び激しい風に自分の体が吹き飛ばされる。

これで、軌道がわって女の攻撃を避ける。そんでもってこの魔法で女も吹き飛ばされてしまえという計画なのだが、そうも上手くはいかないようだ。

風などまるで無いかのように女は上昇を続ける。

まぁ、それでも宙で方向転換なんて普通は出来ないだろうしと高をくくる。すると、女が笑ったように見えた。

くるりと方向転換をして、こちらに襲い掛かってくる。

空中で方向転換って普通に反則技だと思うんですけどと心の中で絶叫して再び魔法を発動させるために構える。

急に女の体がぐらりと揺れて地面へと急降下した。

まるで、風にでも打たれたかのように。

なにが起こったかはよく分からないがとり合えずこれを気に反撃としゃれ込む事しよう。


「我を守護せし護り手よ、傷ついたその身に活性の加護を」


これで、炎に焼かれたレイとウルは復活したはずだ。

自分も女が落ちた方向へ急降下するように魔法を扱い、足からドロップキックをする感覚で地面へと急降下する。

足が地に付いた瞬間、自分を中心に地割れが起きる。


「セシル!?」


セイヤくんが驚いたような声を上げているけれどとり合えず、後回し。

あの、女は……いた!

どうやら地面に思い切り叩きつけられたらしくゆっくりと身を起こしている。

男の方は魔王さんが相手しているみたい、大チャンスというところかな。

復活した、ウルとレイにまず、攻撃してもらう。

女はきちっと防いだもののやはり動きおぼつかない、これなら、きっと僕からの直接攻撃は避けられない。

相手を束縛する鎖を展開する、本当なら殺しちゃうのが一番良いのだけどセイヤくんがいるしね。


「……え?」


えっと、これはどういう事なのかな? 鎖が……千切れちゃった?

闇の塊によって食われたと言う表現のほうが正しいのだろうか?

魔王さんが相手をしていたはずの男がこちらに回ってきている。

おまけにレイとウルを弾き飛ばされてしまった。

女が後ろへと下がって消えていく。


「くそっ、レイとウル追いかけて!」


また、男によって吹き飛ばされた。

魔王さんが後ろから一撃強力なのをぶつけられて、地面にふれふした。

前方を確認すると既に女の姿は消えていた。

足から力が抜けて、地面に座り込んだ。

ふつふつと怒りがこみ上げてきて、腹に力を入れる。


「もぉ、暴れるだけ暴れて逃げるなんてずるい! 今すぐ戻ってこい――むぐっ」

「落ち着けってセシル、声が思いっきり響いてるだろ?」


セイヤくんに口を塞いで、耳元で小さくささやいた。

確かに、戦闘終わったんだし人払いの術も解けていて当然だよなと思って大人しく静かにした。

激しく納得がいかないけど。

むくれていると魔王さんが男をぐるぐる巻きにして引っ張ってきて壁に背を立てかけて座らせた。

よく見てみると結構普通な青年だった。身長は魔王さんぐらいかな? 僕より身長高いしセイヤくんよりも高そうだ。

顔は割りと整っているかな? そこで思った、顔が良かったら強いのかな?

だって。自分は当然だけどさっきの女も魔王さんもセイヤくんも顔は良いし、皆強いし。


「何か、聞くことでもあるのか?」


相手の男から話しかけてきた。

意識戻るの早いなぁと感心しつつじゃあ、彼女いると聞こうとするとセイヤくんにまた手で口をふさがれた。


「お前、意味のない事聞こうとしただろ……」


どうやらばれていたらしい、セイヤくんは読心出来たりするのだろうか?

魔王さんがちらりとこちらを見た。これって、魔王さんの癖なのかな?

視線をぐるぐる巻きの男に目を向けると質問をした。


「どこに命令された? 命令された内容は?」


男は特に迷う事も無くスラスラと答える。


「命令したのは、リナリア聖王国の元老院とリーンゼル帝国の王、リナリアからの命令は聖将軍、そこの金髪の碧眼の殲滅。リーンゼルからの命令は勇者を捕らえろと命令された」


男の答えに僕は不満を上げてみる。


「うわ、この王国って最低。自国の将軍殺せって酷いねぇ、まぁ、一応軍から外れた扱いになるのかな? ……元老院のやりそうな事だけどね」


僕の答えたあと魔王さんも男の言葉の感想をいう。


「リーンゼルまで情報がいっているか……」


僕たちの反応に男が困惑したような胡散臭そうなそんな視線を向ける。


「お前たち疑わないのか?」

「う~ん? なんか、自分にルールとか作ってなさそうだしね~」

「疑ったところで仕方が無い……」

「なるほどな……」


僕たちの答えに男はとり合えず納得したようだ。

立ち上がって、パッパッと自分の服を軽く払った。


「なぁ、お前の名前ってなんていうの?」

「名前?」


男に質問をしたセイヤくんをちらりと見て、セイヤくんらしいな~と思う。

まぁ、らしいなって言えるほど一緒にいたわけでもないけど、らしいなって思う。

でも、相手が答えてくれるかどうかは微妙だろう。

名を明かすのは相手を認めるという事だ。それだけじゃない、偽名であっても名を名乗ってしまえば追跡される材料にされる。


「……リオネルだ」

「お、そっかリオネルね、俺の名前はセイヤって言うんだ」


そう言ってセイヤくんがニコッと笑うとリオネルくんは怪訝そうな表情をする。

セイヤくんはおそらく名を明かす意味を知らないだろうがそれを知らないので驚くのも当然だろう。

リオネルくんはハッキリとセイヤくんを捕らえるって言う意思表示をしたのだから。

そこで、面白い事を思いついてリオネルくんに話しかける。


「僕、セシルって言うんだけどつか知ってるよね? で、これからどうするの?」

「別に……適当に行方でも眩ますかな。依頼主のところに戻ってもろくな事にならないだろうし」


その言葉を聞いて予想通りと笑顔を浮べる。

独自空間を開いて、中から大きな袋を取り出す。


「だったら、僕に雇われてみない? 報酬はこれだけ」


どすっとリオネルくんの前に袋を置いて、中身を見せる。


「凄い量の金貨……どこで集めたの?」

「どっからでもでてくるよ~、で、どう雇われてみない? リオネルくん……ちょっと言いにくいなぁ、じゃあ、リオくんで」

「どっちでも、良いけど……雇うって何?」

「あぁ、それ?」


袋の口を閉めてそれに腰をかける。

不適な笑みを浮べて口にする。


「僕たちと旅するっていうやつ」

「は?」


わけが分からないというようにリオくんがポカーンとしている。


「あっ、それ良いな!」

「でしょ?」


セイヤくんが賛同してくれたので一緒に盛り上がる。

一段落すると再び、リオくんの方を向く。


「で、良い?」


というか頷かなくても無理やりひこずって連れて行く。

そんな事を考えると、一瞬リオくんが顔をしかめた。

僕の邪念が見えたかな?

リオくんはしばらく考えるような素振りを見せると顔を上げた。


「別に良いいぞ、それ全部くれるんだろ?」

「もっちろん♪」


そこでセイヤくんとハイタッチする。


「やったな。やっぱり旅は道ずれだよなぁ」

「そうだよね~」


そこでまた盛り上がって騒ぐと、いつの間にか十歩ぐらい離れている魔王さんに声をかけた。


「魔王さ~ん、リオくんの縄ほどいてあげて~」


ちらりと魔王さんがこちらを向くと、だんと足を踏み鳴らした。

リオくんの縄がするりと解けた。

それを確認すると。


「じゃあ、これからフィーリアからの夜逃げ再開! 魔王さんはリオくんと一緒に壁よじ登って出てね~。僕達は飛んで出るから」


それだけ言うとフリィを呼び出し、セイヤくんを攫う。

少し後ろで何かを言っていたが、大丈夫だろう。

視界の端にリオくんと魔王さんが町をかけているのが見えた、フリィの飛ぶ速度とかわらないぐらい速い。

フリィにつかまっているとすぐに城壁を越えてしまった。

ばいばいフィーリアかな……今更だけど、あの仕立て屋さん。

妖精族だったのかな? 服を作るとき全く魔力の動きを感じなかった。それも妖精の自然を操る力を使ったのだとしたら納得できる。

妖精族か……。



『妖精王の血筋なのに力が弱いなんて……」



「っ!?」


ブンブン頭を振る。

はぁ、なんで昔の事おもいだすかな~自分……。


「どうかしたか?」

「ううん、なんでもないよ」


そうやってにこりと笑う。


「じゃっ、そこら辺にでも降りて二人を待ちますか」

「そうだな」


○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●


「思わず、手を出しちゃいました……」


先ほど、戦闘をしている人達がいて襲われているほうが仕立てに来てくださった方だったものだから、危ないと思うと思わず風を起こして叩きつけてしまった。

あんな、ことしなくてあの人達なら平気でしたよね。と今更だが思う。

さっき繰り広げられていた、戦闘はすぐに終わって、戦っていた人たちはフィーリアから出て行った。


「私はどうするべきでしょう……」


あの時、手を出してセシルさんの方はお気づきなられなかったようですけど、女の方ははっきりとこちらを見据えていた。

ここに居るのは危険だと自分の本能が語っている。

けれど。


「ここを離れたくはないです……」


ここには、店を建てる事が出来てまわりの職人の皆さんと過ごす時間はとても楽しかった。

出来れば、ここを離れたくは無いけど。

万が一にでも私の揉め事に巻き込まれたりしたら……

やはり出て行かなければいけないだろう。


「今日の内に準備をして、明日には出ましょうか」


屋根の上からすたっと飛び降りて、準備をするために店へと戻る。


「持っていくの物にこの前頂いた、素材は全て持って行きたいですね……」

これで、フィーリア編はお終いです。

今度はどういう風に物語を動かしましょう……

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